自己啓発心理学のちょっと心配なところ
最近では、心理学の用語が日常でよく使われるようになりました。
例えば、「自己肯定感」という言葉は、かなり人口に膾炙しましたよね。
自分という存在を肯定できるようになると、幸福感を感じやすくなるので、「自己肯定感を高めよう」なんてことが言われています。
自己啓発の世界だと、「セルフエフィカシー」という言葉をよく耳にします。
自分のことを「すごい人間だ」「能力のある人間だ」と思えるようになることで、目標を達成しやすくなるという理論があるんですね。
このような知識が広がっていくことは、個人の幸福度や生産性を高めるという意味では良いことですが、私にはちょっと不安に思えることもあります。
なぜなら、
自己肯定感にしろ、自己効力感にしろ、自己実現しろ、
セルフエフィカシーにしろ、セルフエスティームにしろ、セルフコントロールにしろ、
どれも、自分(セルフ)にばかり、注目させる言葉だからです。
社会とは、多くの他者と共に生きていく場所であり、自分のことばかりでなく、他者の立場に立って考えることも大切ですよね。
ニュースなどを見ていると、公共性のない大人の振る舞いをよく見かけます。
自分のことしか考えられず、周りが迷惑していることに気づけない人とか、
自分だけが正しいと思って、自分の正しさを周りに押しつけてしまう人とか。
そういう人たちが自分を全肯定したり、「自分はすごい」などと思っていたら、ちょっと何か言いたくなりますよね。
自己肯定感やセルフエフィカシーが高いだけの人よりも、健全な倫理観を持ち、他者への配慮ができる人と私は付き合いたいなと思ってしまいます。