
確かにここにあること 確かにここにいること
用事で
幼い時分に暮らしていた場所を
訪れた
用はすぐに済んで
時間潰しに
あまり何も考えず
そこここを歩いた
目に入るもの全てが
何かを語りかける
なんとも居心地の悪い気まずさ
早々に帰るべきだったと
後悔した
そういう性分なのだ
思い出したくもない人や出来事を
心の奥底に
いつも
きっかけがあれば
引き出せるように
無自覚に
忍ばせている
駅までの道のりを歩いていると
立派な大木に出会った
車が忙しなく行き交う
国道に近い一角に
樹齢は何年なのかと思いを馳せるほどの
大きな木だった
その場にあるには
窮屈な感じがしたが
堂々とした風格は
周囲に安心感を与えているようにも
思えた
その生を支え続けた
ゴツゴツとした樹皮に
触れた
大木は現実だった
確かにここにあること
確かにここにいること
そうなのだと
わかった
そして
駅までの道のりを
また、歩き始めた