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東京タワーのふもとから北海道白根・飛生へ 国松 希根太 展 at t gallery


ニューヨークやパリ、ロンドン、ベルギー・アントワープ、アブダビやドバイへも旅をしたことがあるのに、まだ訪れたことがない場所。北海道です。

雄大で過酷な自然環境。重ねてきた長い歴史。そこに生きた方々が生み出してきた作品たち。
日本各地で育まれた数多くの芸術や文化のなかで、わたしはなぜか、北海道にルーツがあるものにとても惹かれます。

食や自然、動物など、多彩な魅力に多くの人が魅了される土地ですが、特にわたしはアートの面で、共鳴するなにかを持ち合わせているようです。
(『水曜どうでしょう』シリーズなら、もう数え切れないくらい観ていますが、それはまた別の機会にw)

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作品との出会いは今年3月。2年ぶりのアートフェア東京で、でした。
東京・三田にある t galleryさんのブースの前をたまたま通りがかり、吸い寄せられたのです。

どこかにあるような どこにもないような 大自然の風景。ゆったりとした時の流れ。
見つめていると、すうっと心が落ち着き 会場の雑踏が遠のくような感覚がしました。
いつまででも眺めていたくなる、不思議な心地よさを覚えたのです。

木材に アクリル絵具を塗り込め 削って描かれていること、鉄のフレームも作家自ら作っていること、北海道で活動する作家であること。
ギャラリストの方が、いろいろとお話してくれました。

それが、国松 希根太さんの作品でした。

国松 希根太  /  KINETA  KUNIMATSU
1977年、札幌市生まれ。
多摩美術大学美術学部彫刻科を卒業後、2002年より飛生アートコミュニティー(北海道、白老町)を拠点に制作活動を行なう。
近年は、地平線や水平線、山脈などの風景の中に存在する輪郭(境界)を題材に彫刻や絵画、インスタレーションなどの作品を制作している。
( 公式サイトから引用 )


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そして先日。
t galleryさんから個展のお知らせをいただき、一人そっとお邪魔しました。

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初めてお伺いした、t galleryさん。
室内は、木の大きなテーブルと、図録や写真集が並ぶ棚。リビングダイニングのようなインテリアです。

作品を自分のお部屋に飾ったときのイメージがしやすく、落ち着いてゆったり間近で作品を鑑賞できるなぁ、という第一印象を持ちました。
とても良い意味で、”ちょうどよい”空間だなぁ、と。

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アートフェアのブースでも展示されていた<HORIZON>シリーズの作品や、木材の立体造形<GLACIER>・<WORMHOLE>シリーズなどが並んでいます。展示された21点、全て新作だそう。

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立体造形のうち、日本画で用いられる白色の顔料・胡粉(ごふん) で着色された作品は、雪山のような氷山や氷河のような、しんと静かな印象。

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対照的に真っ黒に炭化した作品は、その色に吸い込まれそうになります。

しかも、表面をしばらく見つめていると、ベルベットのような ふさふさした質感に思えてきたのです。ツヤときらめきがあることにも気づいて、とてもとても驚きました。
単純に比較できませんが、茶道のお稽古のときに見る木炭とはあまりに別物すぎて、面食らいました。

いずれにしても、わたしが撮影したこの画像では、実物の10分の1も伝わらないと思うのですが、”白” も "黒" も、どちらも魅力的です。

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先日のアートフェアで希根太さんの作品に一目惚れして、この個展を楽しみにしていました。ギャラリストの方にそうお伝えすると、今回の展示のこと、希根太さんのお人柄、これまでの制作活動について、とても詳しくお話しくださいました。

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⾶⽣アートコミュニティーと飛生芸術祭

希根太さんが制作拠点にしているアトリエは、千歳空港から車で1時間ほど、北海道中南部に位置する、白老町(しらおいちょう)にあります。

白老町というと、アイヌ文化の発信拠点として、2020年7月にウポポイ(民族共生象徴空間)がオープンした場所。

ちなみにウポポイは、国立アイヌ民族博物館国立民族共生公園アイヌの方々の慰霊施設などから構成されています。わたしも、とてもとても行きたい場所です。

開館直前のものですが、詳しくはこちらからぜひ。

ちなみに、TEAM NACSのスペシャルコンテンツもカッコいいのでぜひぜひ!



1986年、閉校になってしまった⾶⽣小学校は「⾶⽣アートコミュニティー」という共同アトリエとして生まれ変わります。

設立に関わったのが、彫刻家・国松 明日香さん。希根太さんのお父様です。ちなみに画家の国松 登さんは、おじいさま。3世代にわたって芸術活動をされてらっしゃるんですね。

希根太さんは、2002年からこのアトリエで制作活動を始め、2009年には、アトリエで共に活動している若手アーティストたちで「⾶⽣芸術祭」をスタート。
そのオープニングイベントとしてはじまった「TOBIU CAMP」は、今では多くの人々が集う、お祭りのような大規模イベントになっているそうです。(いつか絶対参加したい!)

また、2011年には「飛生の森づくりプロジェクト」も始めます。
アトリエに隣接する荒れ果てた森を、かつて学校林として子どもたちが集っていた頃のような姿にしたい!との想いからでした。

このプロジェクトに関わり、飛生芸術祭ではディレクターも務める、木野哲也さんのインタビューが、北海道の暮らしを紹介するWebメディア「くらしごと」さんの中にありました。
ぜひお読みください。いますぐ飛生の森に行きたくなりますよ。

FireShot Capture 1576 - 【白老町】廃校の小学校と森を拠点に生まれる、文化芸術と人とのつながり - 北海道の人、暮らし、仕事。 くらしごと_ - kurashigoto.hokkaido.jp


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飛生アートコミュニティから広がっていった、30年分のさまざまな活動と出来事、携わった方々のインタビューがまとめられた冊子『TOBIU ART COMMUNITY 1986-2016』と、北海道のことを伝える季刊誌『カイ』のバックナンバーが置かれていました。

ギャラリスト・御手洗さんのお話を伺ったあと、ページをめくったら止まらなくて、どちらもあっという間に最後まで読み進めてしまいました。

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こんな活動が、
こんな世界が、北海道では繰り広げられていたんだー!!!
初めて知ることばかりでしたが、とてもとても心動かされました。

自然とともに暮らし、生きることは、想像するよりもずっと過酷でしょう。
でも、自然のなかで”生かされている”ことを心底実感できる生活って、子どもの頃にしょっちゅうキャンプへ出かけ、富士山や田畑に囲まれて育ったわたしには、東京暮らしよりもずっと身近というか、心地よくて自然だな、と感じました。(実家に帰りたい、本当に)

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そして、2016年に500部だけ作られたという、希根太さんの作品集『HORIZONTAL DEPTH』(左)、2018年から発行されている『アヨロ通信』の一号も、手に取ることができました。

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作品集『HORIZONTAL DEPTH』の文章を読むと、なんと!!!
在籍中の大学で学んでいる、学芸員課程の教科書を手掛けた今村信隆先生が執筆されているではないですか。

先生のプロフィールを読むと、北海道出身で、希根太さんと同じ1977年生まれ。
もともとお知り合いだったのかな。なんだか勝手に嬉しくなってしまいました。

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アヨロラボラトリーと『アヨロ通信』

『アヨロ通信』は、アートフェア東京のブースにも何冊か置かれていて、とても気になっていたもの。
改めて手にとって読み進めると、やはり1号目から丁寧に編集されていたことが伝わってくる内容でした。

この冊子はそもそも、希根太さんと、アイヌ民族博物館の立石信一さんの活動から生まれたもの。
お二人は、アヨロラボラトリーという名前で、2015年から白老や登別を中心にフィールドワークを続けてらっしゃいます。

『アヨロ通信』一号の表周りの写真は、写真家の石川直樹さん。
文章を寄せているのは、石川直樹さん、道内で活動するライターの柴田美幸さん、美術家の奈良美智さん、そして希根太さんと立石さんの5人。
また、アヨロラボラトリーによる2016・17年の展示についても、展覧会録で知ることができました。

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読みながら、写真や映像でしか知らない、彼の地の風景をたくさん想像しました。
本当に、行きたい。直に体感してみたい。切に思いました。


そういえば、2019年にオペラシティで行われた石川直樹さんの展覧会で、北海道のことも見かけたなぁ・・・と思ったら!
こちらですね。アヨロラボラトリーのことにもふれられていました。

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アヨロラボラトリーの公式Youtubeチャンネルもありますよ。わたしは観ながら思わず深呼吸していました。ぜひどうぞ。


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t galleryさんの展示は、5月30日(日)まで開催

希根太さんの作品は、空港やホテルなどの空間に展示されてらっしゃるそう。きっと多くの方の心をとらえているんだろうなぁと想像します。


t galleryさんでも2014・2017・2019年と展示を重ねられ、今回は1年半ぶりの開催。すでに多くのファンがついてらっしゃるのも納得でした。

なかなか難しい時勢が続いていますが、ぜひ、t galleryさんへお出かけください。

国松 希根太展
会 期:2021年5月18日(火) - 5月30日(日)
時 間:12:00-18:00 
※予約制です。
会 場:t.gallery(東京都港区芝3-16-2 1F)

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人生が不思議に満ちあふれているように、ほんのささいなタイミングと行動が、思いがけず一瞬で心うごかされてしまう作家さんや作品との出会いを連れてきてくれます。

あの日、アートフェア東京に行かなかったら。t galleryさんのブースの前をたまたま横切らなかったら。
わたしはきっとまだ、希根太さんの作品とも、白老町や飛生とも、出会えてなかったと思います。なんだか胸がいっぱいになりました。


作品集『HORIZONTAL DEPTH』を購入し、ご好意で貴重な『アヨロ通信』も譲っていただきました。(御手洗さん、本当にありがとうございました✨)
この先、繰り返しじっくり読むたび、今日のことも思い出すでしょう。

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最後に

2021年初めに公開された、希根太さんのインタビューと制作風景の映像を。
このYouTubeチャンネル「Visions」を手掛けている畑中さんのnoteと合わせて、ぜひどうぞ。

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Naomi┃アートライター・編集
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