「海のはじまり」は、母親としての原点を思い出させてくれたドラマだった
毎回、ものすごく気合を入れて観ていた夏ドラマが、先日、最終回を迎えた。「海のはじまり」だ。
初回を観て、これは生半可な気持ちでは観れないなと思った。テレビの前で正座するくらいの覚悟で観ていた(実際にはしてないけど)。
主演の目黒蓮さんが、ご自身のInstagramにも投稿されていたけれど、受け止め方や感じ方が本当に分かれるドラマだったと思う。
私自身は、完全に、子を持つ親の目線で観ていた。特に印象に残っているのは、弥生(有村架純)が恋人と妊娠について話す喫茶店のシーンだ。
新しい命を授かったことを一緒に喜び合いたかったのに、恋人は一方的に中絶する前提で話をしてきて、すぐさま席を立ってしまう。一人残った弥生は、店員にコーヒーのおかわりを頼む。
「ノンカフェインコーヒーでよろしいですか?」
店員に聞かれた弥生は、「いえ、ブレンドで」と答える。
この短いやりとりに、弥生が母親になることを諦めた虚しさと悲しさが詰まっていて、胸が張り裂けそうだった。
私は妊娠初期のことを思い出していた。
自分の中に新しい命が宿ったことを知った瞬間から、これは食べていいのか、飲んでいいのかと神経質すぎるくらい気になった。自分の口から入れたものすべてが、お腹の子どもに影響する。そう思うと気にせずにはいられなかったのだ。
お茶もコーヒもノンカフェイン、お酒なんて言語道断!ナマモノもダメだから大好きなお寿司も我慢。お肉の生焼けは危険だから焼肉もやめとこう。ちょっとでも危なそうなものは、排除した。
逆に、身体にいい、胎児にいいと聞けば、食べるようにした。でも途中からつわりがひどくて、かなり偏った食事になってしまったけど。
こうやって大事に大事に育んできた命なのだ。
ドラマの中の弥生も、妊娠がわかってから、口にするものに気をつけていたのだと思う。ノンカフェインコーヒーを頼んでいる時点で、もう母親になっていたのだ。それなのに、新しい命を祝福してもらえず、どれだけ寂しかっただろう。
幸いなことに、私の中に宿った命は、家族や友人たちに祝福され、元気に産まれてきてくれた。これって奇跡なのだ。
しかし、慌ただしい日々の中で、妊娠当時のことなどすっかり忘れていた。ついガミガミ文句を言ったり、ろくに話も聞かずに適当に相手をしてしまったりしてごめんよ。
「海のはじまり」は、私が母親になる原点を思い出させてくれたドラマだった。
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