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自分を通して社会を見る

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自分は社会をどう思うか、何が問題なのかを、日米両法の社会で生きてきた経験をもとに探っていく。
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大統領選を通して思うこと(その四)スターメンタリティ

テクノロジーが進む現代社会で、イメージは大変強力な力を持っています。イメージでマインドが左右され、イメージで人が動き、事が起こるの世の中。会社や学校、個人企業なども、各々のイメージ作りに重きを置くところが増えています。大統領のイメージ作りも、例外ではなく、いかに国を代表する人物のイメージを作り上げていくかに、多くのエネルギーが注がれています。 イメージ作りには、その人が今までに成し遂げてきたこと、これから国を率いていくのに行うであろう政策だけでなく、髪型や服装などのファッシ

大統領選を通して思うこと(その三)そのドラマ的性質

今年のアメリカの大統領選も、なかなか面白くなってきましたね。バイデン前大統領が撤退してから、ハリス氏が民主党の大統領候補になり、無所属候補のロバート・ケネディ・ジュニア氏が撤退して、トランプ大統領のサポートにつくなど、短期間の間に次々と大きな動きが出てきています。 4年前の大統領選挙の盛り上がりようは、大変なものでした。私の住むブルーステイトでは、選挙結果が出た当日は、お祭り騒ぎで、パンデミック中のストレスも合まってか、ソーシャルディスタンスはどこへやら、マスクを外してシャ

大統領選を通して思うこと(その二)ケン・ウイルバー、思想の二層構造

二十一世紀のアメリカを代表とする思想家、ケン・ウイルバー氏によると、アメリカの思想は、下の渦巻きのようなイメージに見られるように、下から上へと推移してきています。一つ一つの色には違った思想が代表されます。 Ken Wilber: The Intellectual Dark Web, an Integral Conversation? の中で、彼が強調するのは、特にAmber(琥珀)ー> Orange(橙) ー> Green(緑)への推移、そしてTeal(ティール)への移行で

子供の教育〜言葉と株と性

しばらく日本にいない間に、日本語が変わって、知らない言葉が増えたのに驚いている。「忖度」って、何度聞いても使い方や意味を調べないと忘れてしまうし、「メンヘラ」とか「アタオカ」とか「ツンデレ」も、日本人特有の4文字縮語で、やっぱりわからなかった。でも、最近言葉で一番驚いたのは、私の英語の生徒で中学2年の子が、「それって承認欲求ですよね。」と言った時。そんな言葉、子供が使うん?って思った私は、カルチャー面でも浦島花子なのだろう。 言葉から少しズレるが、今の小学校、中学校で習って

学校は人間を育てるところか?(最終回)~ 人間を育てる学校

今まで、人間の成長を育てない学校の仕組みについて書いてきましたが、それでは、「人間の成長」を中心に据えた学校では、何を教えたら良いのでしょうか?  この最終回では、自分が、こんな学問を学べたら良いなあと思うものを書いてみることにします。全ての科目は心身を通して理論を学び、実践を伴い、演繹法で進めるものとします。すでにある知識を学ぶだけでなく、それを使って実践し、発見し、新しく創造していく方向性です。 『自分学』~  自分について徹底的に学ぶ。セルフイメージ、自分軸、ブロッ

学校は人間を育てるところか?(その六)~ 自分の価値が評価されていない恐怖

大学に勤め初めて、8年ぐらいたった時、なんかおかしいなと思い始めました。皆忙しそうに、充実しているかのように働いているけど、そして、車や家を買ったり、子供を育てたりしているけど、充実しているように見えるけど。。。皆、大変疲れています。幸せそうじゃないんです。思い起こせば、自分が大学院生だった時の先生達も、目の下にクマつくって、いつも疲れ切っていました。無理もありません。常に恐怖に晒されているんです。 クライシス・マネージメント。なぜこんなに色々と事件が怒るのかと思うほど、ク

学校は人間を育てるところか?(その五)~ 生産性を上げる?

前回は「競争意識」と「結果思考」についてお話しました。今回はその源を探ってみます。 長年学校教育に携わってきて、学校という機関の一番の目的は、生産性をあげることであるのに気づきました。先生達は、常に学校から「結果をだすように」「教育水準の高さを証明するように」言われています。卒業した生徒が有名になれば、学校の株が上がる。その生徒を育てた先生の株が上がる。先生はそういう可能性のある生徒に、より時間と労力を注ぎ込もうとすることになりますね。私のいた演劇科だと、例えば、有名になり

学校は人間を育てるところか? (その四)~ 競争意識と結果思考

さて、「知識を身につけて人としての成長を測る」のがリベラル・アーツ・カレッジの本質ですが、その本質を脅かすものが二つあります。 一つは、「競争意識」大概の学校には、成績というものがあり、ABC評価で、Fは落第です。つけた成績は、上の教育委員会に提出しなければならず、あまりAが多いと、成績をつける基準がしっかりしていないのではないかと思われ、基準を細かく正確にするように言われます。私の知っている先生は、一つのクイズは5ポイント、その基準はこれ、プレゼンは10ポイント、その基準

学校は人間を育てるところか? (その三)~ 自由民として学ぶ

夢と希望を抱えて1989年に渡米。その後、7年間大学院で勉強し、修士号を獲得、そして17年間、大学で教鞭をとりました。アメリカで言われるところの、リベラル・アーツ・カレッジです。 リベラルアーツ・カレッジ。 日本の一般教養とは違い、もともと古代ギリシャで提唱された概念です。自由民と非自由民に分けられていた時代背景での、自由民として学ぶ技術のことです。プラトンは、よき哲学者、よき統治者、社会をよくするリーダーとなるための必須の学問として文法、修辞学、論理学、算数、幾何、天文

学校は人間を育てるところか?(その2)~ 私は誰?

大学に入った私は、悶々としていました。生きる目的を失っていたのです。希望を持って入った、楽しいはずの大学生活は、私にとって、陰鬱なものでした。とりあえず皆がやるように、クラブ活動や英会話やバイトをして、なんとなく過ごしてはいたものの、私の心はいつも沈んでいました。 「何のために生きているの?」「自分がやりたいこと」って一体何?「私は誰?」 そんな疑問がグルグル頭の中の同じ場所をまわりますが、行き着くところがないい。何をしていても生きている実感がなく、充実感がない幽霊のよ

学校は人間を育てるところか

日本とアメリカと両方の国で、長年教育を受けてきて、ずっと疑問に思ってきたことがあります。 学校とは、人間を育てるところなのだろうか? まず、日本の学校。27年間も通った割には、私は学校が苦手だったようで、小学校一年生の時には、授業中、横にあった本棚から本を取り出して読み始め、親が先生に呼び出されたり、高校では規制の制服を来ていかないでブラックリストに載ったり、とにかく、学校が楽しいとか、行くのが楽しみなんて、ほとんど思ったこともない。上から来るルールが、とても堅苦しかった

言葉の壁は心の壁(1)

こんにちは。今日も元気でお過ごしでしょうか? 今日は言葉についてです。 長年異国に住んでいて、英語もそれなりには使えるようになったのですが、上手になればなるほど、ネイティブではない私が決して越えられない壁があるのを痛感します。それは言葉の壁というよりは、自分の心の中にある壁です。どんなに発音がネイティブに近く、英語のロジックで喋れても、心は日本人で、とても情緒的なのです。言葉、体、心、空間は密接に繋がっていて、幼い頃から記憶に刻み込まれたセルフイメージと、異言語を話すこと

マトリックスへの一考

こんにちは。今日も元気でお過ごしでしょうか? 1999年にリリースされた『マトリックス』という映画を、覚えていらっしゃるでしょうか?このSF映画のテーマは、「コンピュータによって作られた仮想現実(マトリックス)を生きる主人公が、仮想空間と現実を行き来しながら、人類をコンピュータの支配から解放する戦い」でした。当時私は、キアヌ・リーブス扮する主人公ネオが、「目覚めるかこのまま生きるか」の選択を迫られる姿に、自分自身のジレンマを重ねたのを覚えています。 今私たちが生きている現

言葉の壁は心の壁(2)

こんにちは。今日もお元気でお過ごしでしょうか? 言葉には人が現われるといいます。 私は今、帰国子女に英語のライティングを教えていますが、彼らの言葉の選択や使い方を見てきて、言葉は心、体、環境と深い繋がりがあると感じます。俗に「帰国子女」と呼ばれる子どもたちは、何か親御さんの仕事の事情で外国に何年か住み、いずれは日本に帰国することが前提の環境で学んで、生活しています。帰国子女というと、あまり努力もすることなく、英語がペラペラ話せていいなあと思われるかもしれませんが、実情はな