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【全文無料公開】 『会社を使い倒せ!』 〜転職でも起業でもない攻める働き方〜 #0

はじめまして。
そして、あけましておめでとうございます。
博報堂monom代表の小野です。

「monom」(モノム)というのは、博報堂の中でモノづくりを行うチームで、今から5年前に「博報堂でモノづくりがしたい」と役員に直談判して立ち上げました。博報堂は広告会社なので、自らモノづくりをするなんてことは前代未聞でした。

(monomについてはこちらをご覧ください)

立ち上げから1年後には、ぬいぐるみをおしゃべりにするボタン型スピーカー「Pechat」(ペチャット)を開発・発表し、その後、博報堂初のデジタル製品の製造販売事業として実際に販売を開始しました。

おかげさまで販売台数10万台を超えるヒット商品となり、さらに、グッドデザイン賞のベスト100をはじめ様々な賞をいただいたり、テレビや新聞でもたくさん取り上げていただいています。

(Pechatについてはこちらをご覧ください)

「広告会社でモノづくり」なんてことが、なぜできたのか?
自分のやりたいことを、どうやって会社の中で実現したのか?

そのことを書いてほしいと言われ、昨年12月20日に初めての著書『会社を使い倒せ!』を刊行しました。

やりたいことを実現するために、会社をうまく使おう。やりきれば会社も応援してくれるし、会社にとってもプラスになる。という内容です。転職や起業が当たり前の時代に、あえて「会社を辞めない」という選択肢を提案する本です。

そして、この発売してまもない本を、版元である小学館集英社プロダクションさんの許可を得て、noteで全文公開することにいたしました。

「今いる会社で、自分のやりたいことができない」
「自分のやりたいことが、まだ見つかっていない」

そんなモヤモヤを抱えている人にぜひ読んでいただきたいと思っています。そして、新年からの働き方のヒントになれば幸いです。

心に留まる文章があったら、どうぞ自由にコピペして引用して、議論のきっかけにしてください。

そして、もしnoteを読んで興味を持っていただけたら、ぜひ紙の本も買っていただけるとうれしいです。
(電子書籍についても準備中ですので、電子書籍派の方はもうしばらくお待ちください)

今回は「はじめに」から「目次」までを公開します。以降は1章ずつ、毎日正午にアップする予定です。

それでは、どうぞ。


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はじめに
使い倒すと、会社はもっと楽しくなる。


 自分でも思いきったことをしたなぁと思います。
 今から4年前、入社7年目のときのことです。どうしても会社でやりたいことがあり、僕は役員に直談判に行きました。
 そのプレゼンテーションのスライドの1枚目に、たった一言、こう書いたのです。

 「辞表」

 さらに次のページには、こう書きました。

 「もう広告はやりません」

 僕が勤めているのは、創業120年以上の歴史を持つ総合広告会社・博報堂です。
 広告会社の事業は、商品やサービスを広く生活者に知ってもらうマーケティング活動をすること。
 そんな会社で、「もう広告はやりません」なのですから、役員も驚いたと思います。
おまけに最初のページには「辞表」の2文字です。
 ただ、これは正直な気持ちでした。できないなら会社を辞めようと思っていました。
 もっと言うと、そのくらいじゃないと、会社に自分の覚悟が伝わらないと考えていたのです。
 僕が会社に働きかけたのは、「博報堂でモノづくりをする」ということでした。
 博報堂は広告会社なので、自らモノづくりをするというのは、前代未聞のことです。
 でも、僕はどうしてもやりたかった。博報堂だからできるモノづくりがあると思ったからです。

 こうして生まれたのが、僕が代表を務めるプロダクト・イノベーション・チーム「monom」(モノム)です。
 今、僕は広告会社・博報堂でモノづくりを仕事にしています。
 すでに、お気に入りのぬいぐるみをおしゃべりにするボタン型スピーカー「Pechat」(ペチャット)を「発売元:(株)博報堂」として販売し、新聞やテレビでも大きく取り上げられました。
 世の中の人にとっては、メーカーがつくろうが、博報堂がつくろうが、あまり関係ないのかもしれませんが、一部の人たちには大きな驚きを持って受け止められました。
 
 現在、12名のメンバーがいるmonomがめざすのは、人と時代に寄り添った「半歩先の、未来の風景をつくること」です。そこに、広告会社がモノづくりをするという新しい取り組みの可能性があると考えています。
 広告会社とモノづくりは、異質なものの掛け合わせです。
 僕は、こうしたふたつの異質なものの掛け合わせが新しい価値を生み出すと考えています。実は僕自身のキャリアも同じでした。
 例えば、「今いる会社では自分のやりたいことができない」と感じている人も多いのではないでしょうか。
 でも、それこそが、異質なものを掛け合わせるチャンスなのです。
 自分が本当にやりたいことと、会社を掛け算する。そうすることで、自分にとっても、会社にとっても、新しい可能性が生まれるのです。
 もちろん、自分がやりたいことができる会社に転職する、という選択肢もあるでしょう。また、自分で起業する、という選択肢もある。
 しかし一方で、会社にいながらにして自分のやりたいことを実現する、という選択肢があることを、ぜひ多くの人に知ってほしい、と思います。
 会社の中には、人、資金、ネットワークなど、多くの利用価値のあるものが溢れています。それらすべてを、全力で、前向きに利用して、自分のやりたいことを実現させるのです。「会社を使い倒す」と言ってもいいかもしれません。
 実際、僕が取り組んだのは、そういうことでした。そして、「広告会社でモノづくり」という前代未聞を実現できたのです。

 今やどの業界も、激しい変化にさらされ、先の見えない過渡期を迎えています。
 これからどうやって未来に向かうべきか、多くの会社が模索し、さまざまな取り組みをはじめています。
 自分がやりたいことと会社という新しい掛け合わせは、そのひとつのヒントになるかもしれません。結果的に、自分のやりたいことができる社員にも、新しいことを模索している会社にも、双方にとってメリットがあるからです。

 ただ、もしかすると、まだ自分でもやりたいことがはっきりしていない、という人もいるかもしれません。
 僕自身も、はじめから博報堂のなかでモノづくりをしたいというイメージがあったわけではありません。たくさんの紆余曲折を経て、次第に自分のやりたいことが明確になっていったのでした。
 広告会社でモノづくり、などということがどうしてできたのか。
 やりたいことがなぜ実現できたのか。
 そのことを書いてほしいと言われ、生まれたのが本書になります。そして、本書をまとめるにあたって、大きく2部で構成したいと考えました。
 「STAGE1」は、僕がどうやって、本当にやりたいことを見つけたのか、という話です。
 やりたいことが見つからない、やりたかったことと違う仕事に就いてしまった、やりたいことは今いる会社にないんじゃないか……。そんなふうに思っている人に読んでいただければと思います。自分が本当にやりたいことを見つけるヒントになるかもしれません。
 「STAGE2」は、見つかったやりたいことを、いかに会社で実現していったか、という話です。
 もちろん、すんなりといったわけではありません。さまざまな試行錯誤をしながら、僕がどのように動いていったのかを紹介できればと思います。
 もうすでにやりたいことがある、という人は、STAGE2から読んでいただいてもいいかもしれません。
 うまく使えば、会社は本当に楽しい場所になります。そしてやりたいことを貫けば、むしろ会社から求められるようになります。そのことを多くの人に知っていただけたらと思います。


目次

はじめに
使い倒すと、会社はもっと楽しくなる。

■STAGE1■
本気でやりたいことを見つける。

第1章 生い立ち、そして広告会社に入るまで。
 〇 物事をなめてはいけない、を知る。
 〇 回り道すると、視野が広がる。
 〇 この道じゃない、と思ったら逃げる。
 〇 自分で決めたら、本気になれる。

第2章 自分が求めるクリエイティブとは?
 〇 想定外の配属でも、必ず学びはある。
 〇 違和感を大事にする。
 〇 モヤモヤしたら、まず動く。
 〇 やると決めてから、実現方法を考える。
 〇 非常識を恐れない。
 〇 人生を懸けて、それをやりたいか。

第3章 答えは会社のなかにあるとは限らない。
 〇 会社の外で自分を試す。
 〇 3年で結果を出す。
 〇 お金をかけると、覚悟が決まる。
 〇 どんなに忙しくても、時間はつくれる。
 〇 会社を辞めない、という選択。
 〇 掛け合わせて、新しいものを生み出す。

■STAGE2■
会社を使って、やりたいことを実現する。

第4章 なぜ広告会社がモノづくりをするのか。
 〇 半歩先の、未来の風景をつくる。
 〇 新しい視点を見つける。
 〇 人と話すことで、思考は深まる。
 〇 会社に徹底的に向き合う。
 〇 会社の武器を活かす。
 〇 前例がないから、可能性がある。

第5章 会社の内と外に向けて旗を立てる。
 〇 決定権のある人を味方につける。
 〇 リスクをとる覚悟を決める。
 〇 全員兼務というチームをつくる。
 〇 いかに会社に収益をもたらすか。
 〇 リーダーが誰よりもコミットする。
 〇 みんなが「自分ごと化」する体制をつくる。

第6章 会社の試みをいかに実現するか。
 〇 失敗は必ず次に活かす。
 〇 これだ!と思ったら前しか見ない。
 〇 失敗したときのことを綿密に考える。
 〇 世の中を味方につける。
 〇 会社でやれば、チャレンジし続けられる。
 〇 「自分×会社」で生まれる新しい可能性。

おわりに


第1章につづく

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★本書『会社を使い倒せ!』にご興味を持ってくださった方は、書籍もぜひお買い求めください!


noteをお読みいただき、ありがとうございます。 Twitterもやっているので、よければフォローしてください。小野直紀@ononaoki