一年に一度ワインを届けさせてください(3/3)
より少なく、より豊かに
はじまりは2017年、
周防大島油良の寿源寺のすぐ隣に、突如ぶどう畑が現れました。
北海道、中伊豆で約20年間栽培と醸造の最前線で多様な経験を積んだ栽培醸造家である松本英也さんが周防大島町に移住し、ワインを造るためのぶどうの栽培をはじめたのがこの物語のはじまりです。「大島でワインを作りたいんですよ」と笑顔で話をされていたのが印象に残っています。
そして2020年現在、同じく周防大島油良に小さな醸造所ができて、松本さんがぶどう栽培から醸造とワインをつくる全ての工程と管理を、西村が経営とクリエーティブを主に担当させていただいています。
おそらく当醸造所は、現在日本で一番小さなワイナリーだと思います。ワイナリーというよりはむしろワイン農家という言葉の方がしっくりきます。自社農園で自らぶどうを栽培し、自社醸造所でそのぶどうを自ら仕込む「ワイン農家 ドメーヌ ピノ・リーブル」です。
私たちのワインづくりですが、とてもシンプルです。
1. 栽培と醸造を分けない
2. 決まったレシピを持たない
3. 大量に仕込まない
4. そして、最大限の愛情を持って育て届ける
1. 栽培と醸造を分けないとは、私たちの[ワイン造りはぶどう造りである]という原点に基づくものです。栽培のプロフェッショナルからぶどうを仕入れるのではなく、醸造のプロフェッショナルにワイン造りをお願いするのでもなく、自社農園でぶどうを栽培し、そのぶどうのみを使いワインを仕込む、ドメーヌdomaineであることにこだわりたいと思い、栽培醸造者2名がすべての工程を行なっています。
2. 決まったレシピを持たないとは、私たちの[ワインをもっと自由に]という発想に基づいています。同じ日同じ瞬間がないのと同様に、一年に一度だけ実るぶどうは、それぞれの年ごとに違った良さがあります。気象条件も異なれば、樹齢も違い、若い樹もやがて老いた樹になりますが、そのぶどうの個性に出会えるのは一度きりですから、特徴をありのまま最大限に引き出したワインとなるように、ぶどうに合わせてつくり方を選びます。決まったレシピを持たないことで、レシピは無限大になり、醸造の瞬間まで考え抜いて、最後は感性にしたがって最も良いと考える仕込みを行います。生産性や流行を求めた過剰な醸造技術を使うことはせず、昔からある伝統的な技術を基に、栽培醸造者が自らの経験で得た知識と感性を駆使しています。
3. 大量に仕込まないとは、私たちの[妥協しない]というワガママを通すためです。ワインはいわば農作物であり、一年の大半をぶどう栽培に費やし、コツコツと畑に足を運んでぶどうと向き合うことが最も重要な仕事になります。その年々でベストだというワインづくりを行うために必要なのは、全てのぶどうの状態を確認できるほどの大きさの畑と、そこから収穫したぶどうの状態に合わせて、極めて繊細な調整ができる手に馴染む手動の醸造機器でした。可能な限り少なく、かつ必要十分な量を、衛生管理に注意を払いつつ、丁寧に心は躍り楽しみながらワインを醸造しています。
4. ぶどう栽培は子育てとよく似ています。大切に、でも甘やかさずに、全てのぶどう達が元気で素直に育つように、そして最良の状態で収穫ができるようにと沢山の愛情を注いでいます。仕事の日という概念はなく、日々の生活の中にぶどう作りがあり、そしてワインを醸造する。つまり、私たちの形態は、ワイナリーと言うより、ワイン農家という言葉がぴったりだと思っています。優しさも厳しさも、毎年手塩にかけて育て上げた我が子をボトルに乗せて、最後にいってらっしゃいの想いを込めて、袋がけして皆様の元へ送り出します袋がけに記した詩は、私たちのワインづくりの哲学です。
そして最後に、
私たちは、この全ての実現のために、メンバーシップ制のクローズドワイナリーという新しい選択を行いました。会員制の小規模ワイナリーです。
私たちの理想とする[物語がいっぱい詰まったワイン]は、作り手の私たちと共に一緒に歩んでくださる飲み手の皆様がいてはじめて実現します。生産者と購入者という切り離された従来の枠にハマることなく、[作り手]と[見守る飲み手]という新しいカタチ、ある意味共同体のようなカタチが必要だと考えました。
もし、想いに共感してくださる皆様と共に毎年の物語を共有できればこれほど嬉しいことはありません。
【メンバーシップの仕組み】
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ワイン農家 ドメーヌ ピノ・リーブル(周防大島ワイナリー株式会社)
瀬戸内に浮かぶ周防大島に2018にOPEN。すべて自社農園のぶどうのみを使い、ぶどうの栽培からワインの醸造まですべての工程を栽培醸造者2名で行う、メンバーシップの小さなワイナリー。
山口県周防大島町油良232-1
https://www.domaine-pinot-livre.com/
CSO 西村尚倫
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