責任は増えるが、裁量が減るという 現代日本の組織問題
最近、責任は増えるが、裁量は増えず、給料も上がらないという悲哀を聞くこと、ありませんか?普通、責任が増えると裁量も増えて、給料も増えるますよね?これが健康的な組織だと思います。最近の日本の組織や企業は、責任は増えども、裁量は増えない、いや、それよりも減っていく構造になっていませんか?
責任と裁量の不均衡
この“責任と裁量の不均衡“こそが、現代日本の組織問題の一つではないかと思い、この問題を構造化して理解し、問題解決の糸口を見出したいと思います。
成長ステージが進むと始まる不均衡
まず、組織の成長ステージを参入期→成長期→成熟期→衰退期の4区分に分けて考えていきたいと思います。そのそれぞれのステージごとに、組織や企業は、市場を勝ち抜くため、組織を発展させるために、個別具体な目標が設定されます。そして、成長ステージごとに組織人は目標を達成させるために、個々の責任と裁量を駆使していきます。今回の論点は、その成長ステージが後半に入るにつれて起こる個々人の責任と裁量が反比例していく現象に焦点を当てていきたいと思います。
責任と裁量の関係
では、図を見ながら、成長ステージごとの責任と裁量の関係を見ていきたいと思います。まず最初に、参入期。このステージは、参画人数が限られるうえに、不確定要素が多い環境なので、組織を発展させるためは、責任も裁量も個々人に大きく付与されます。その後、一定成長期に入ると、参入期の成功モデルを活用して、多くの人が活用できる規則を作り、成功の再生産や失敗の最小化を図ります。成熟期になると、組織の成長は鈍化するが、既存の成功モデルや失敗経験を研究して役割や組織を分化し、大きな成功はできないが、失敗の少ない組織による成長軌道を目指します。そして、組織自体が衰退期に入ると、組織分化した組織は裁量が小さくなる一方、衰退原因につながる失敗を嫌い、失敗自体に目線が向き、失敗できない環境(責任)だけが拡大していきます。
2020年代の多くの日本の組織や業界は、人口縮小とともに小さくなった市場はそのままに、昭和から組み上げられた仕組みから分化した組織を使って戦いを続けているところが多い。この場合、衰退期で戦うその組織の人々は、前述のように責任と裁量の反比例な状態で戦いを強いられます。戦いが長く続くことで、責任増大による緊張状態は拡大し、裁量が小さいがために閉塞感や無気力感も増していきます。一方、組織や企業も、いよいよ限界点に達し始めると、やおら変化や改革へと舵を切り始める。しかし、数十年こういった環境で培った“筋肉”は、突然、責任を持たされたとしても、失敗経験が乏しい中、失敗してもいいから飛び込めという行動には、すぐに移ることはできない。
今できること
では、そんな環境下で何ができるのか、裁量と責任の不均衡を断ち切る処方箋を2つほど考えてみました。
一つは、分化していった組織の分解と再編。
細分化されていった組織体を統合再編する。ただし、分化したものを巻き戻して統合するのではなく、従来の組織ピラミッドの外同士を再編統合する。例えば、営業推進部と人事を統合し、テクニカルな営業推進策でなく、人財育成や採用による営業推進活動をテーマにしていくことで、視点を変えて組織課題を発見し、その課題に取り組むことができる。
もう一つは、スモールカンパニーの新設。
参入期のように、市場や顧客ニーズに迅速に対応すべく、個々人に二役三役も役割を負わせ、ワンストップで顧客と相対できるようにする。それにより、過去のルールにとらわれず、今の市場に即したサービスを構築することができ、新しい規則作りや組織構築のヒントが得られる。
衰退期にいる日本の組織や企業では、責任と裁量の不均衡により、企業同様に個々人も追い込まれています。そして、この問題は、個々人の頑張りで打破することは難しく、構造課題の理解と構造自体の改善を組織単位で取り組む必要があると考えます。組織運営を判断する人も組織人の一人であるのは間違いありませんが、その特定の人間が今判断をしないと、衰退期にいる組織や企業はそのまま衰退曲線から脱することはできません。そんな、判断ができる人財でありたいと、自戒を込めて。
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