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リビングの家具、ぜんぶ捨てました


「あ、そういえばテーブルないんだった」

朝ごはんを作っていて、食器を運ぼうとした時、がらんとしたリビングが目に入って思わず笑った。

きのう、朝起きて「ソファ捨てよう」と思った。

うちにある二人がけソファは前のマンションから持ってきたもので、ファブリックの生地は使い始めてみると汚れやすく、だいたいソファで飲みながら映画を見ることが多かったわたしはお酒や食べ物をこぼして掃除ばかりしていた。買って一年くらいしか経っていないのに、ファブリック、めっちゃ汚れる。

そんなにしょっちゅういろんなものをこぼしている自分が悪いのだが、金曜日の夜も盛大にソファにスープをこぼして、ああまたやってしまったと思い、最低限の後片付けをして寝た。

朝になってちゃんと掃除をしようとしたとき、「うん。捨てよう」と思った。

だいたい今リビングはもこの居場所になっているのでソファに座って映画を見ることもないし、寝室とリビングをつなぐ仕切りのドアを、ソファがふさいでしまっているので動線も微妙だ。汚ればかりを吸い込みやすい布の生地は、快適に使える寿命も短い。よどんだ生成り色のソファは、物件を決めるときに一目惚れした明るいオレンジの壁に映えなくて、なんかそこだけ浮いている気がした。無くなったらどんなにかスッキリするだろう。

もこは白内障で目が見えないので、リビングの半分を占領しているL字テーブルにもよくぶつかっているのが気になっていた。仕事用と食事用に使い分けるためのL字の形は、案外場所を取るのでなんでこんな形のテーブルを買ってしまったんだろうなあと、もこが来た7月からずっと後悔していた。

3日に1回、閉めても閉めてもゆるんでしまうイスの留め具のネジ。これも前のマンションから持ってきたのだが、ずっと「快適じゃないなあ」と思いながら、毎日そこに座ってごはんを食べていた。



全部捨てよう。


ソファ、テーブル、イス。


つまりリビングにある全部の家具を、土曜日の朝起き抜けに2秒くらいながめて、「うん、いらない」と思った。思い立ってすぐ不用品回収業者数社に見積もりを取り、きのうのうちに全部廃棄してしまった。


1LDKのリビングは、がらんとしたなにもない空間に、もこのベッドだけがぽつんと置かれている。敷き詰められた犬用の滑り止めマットと、ベッドが一つ。

もうスッキリしたとかしないとか、ミニマリストとかそういう次元ではない。

何もないからだ。笑

朝ごはんを食べようとして、食器を置く場所がないことを思い出して一人で笑ってしまったあとで、クローゼットから仕事用の折りたたみデスクを引っ張り出し、枕迷子のせいで高さが合わないまま捨てずに置いてあった枕を2つ寝室から持ってきて、座布団がわりに床に並べた。

床での生活って、案外天井が高くなって部屋が広く感じるので良いかもしれない。

もこは広々としたなにもない空間をさっそく好きなだけ歩き回って、好きな場所で寝ている。せっかく置いたベッドで寝るよりも、毎日自分で寝やすい場所を探して寝ているみたいで、ベッドは申し訳程度に置いてあるだけだ。

わたしはといえば、適当なリクライニングローチェアを買う予定で、置き場所を変えたり寝っ転がったりしながら仕事をしようと思うので、家具が何もなくても困らない。

ああ案外こんなに困らないもんなんだ、と、即席の折りたたみテーブルと枕を敷いて朝ごはんを食べながら思った。

こんなになにもなくても幸福の度合いは変わらないのに、持たないと必要だと思わされているものはどれだけ多いんだろうな。

自由人同士の共同生活は、お互いの住みやすい形にどんどん作り変えられてますます快適さを増している。

しかしもし来客を呼ぶとしたら、空っぽのリビングをみてびっくりすることまちがいなしだ。



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