飲食店のチャレンジ
レストランで出す、お皿や箸や、小さなグラスが失くなっていることに気がついた。
これまでにも、あれ?と思うことはあったけれど、さして気にしなかった。
割れたんだろう、と思っていた。
それが、パンデミックの後、ダイニングを再開してから、新しい食器やカップを揃えてスタートしたものだから、顕著に感じるようになったのだろうか?
買い足しが多いのを不思議に思ってアンテナを張っていたら、どうやらお客様が持って帰るのだということが、発覚した。
一番なくなるのは、小さなお醤油皿。
そしておちょこ。
ある日など、15人ほどのバースデイパーティのお客様が帰ったあと、全員分のおちょこが消えていた。
お客様は、食べて、飲んで、いい気分になって、そしてついでに、テーブルにあった、そこらへんの店では手に入らない、(持って帰るには)手ごろなサイズの、日本テイストの小皿やおちょこに目がいって、ひょいとカバンに入れるのだろう。
悪気もなく!
けれど人々は、友人の家に夕食に招待されて、デザートと一緒に出された小さなフォークを気に入って、こっそり持ち帰ったりするだろうか?
しかも、悪気なく?
それがなぜ、レストランという場所では、いとも簡単にそんな行為に及んでしまえるのだろう。
常々スタッフには、お客様を、「自分の家に招待した大切な友人のように思ってね」、と言っている私には、ちょっとした裏切られた感があった。
日々、お客様の満足された笑顔に触れているだけに、そのうらはらに起こる現状が、何を示しているのか分からなかった。
それでチャッピー(Chat GPT)に、
「レストランで食事をしたお客様が、出されたお皿やグラスなどの食器を無断で持ち帰る心理とは?」
とたずねてみた。
2つ目の要因にある、記念品。
スタッフの一人も言っていた。
「お土産感覚なのよ、
この店に来た、っていうね。」
お土産かあ。
「どうせなら、店頭で売ったら?」
他のスタッフが言う。
「でも、タダで手に入るものをわざわざ買うかしら?」
そんな声も同時にあがる。
確かに来店されたお客様が、お皿や、湯飲みを、売って欲しい、という声は時々あるようだ。
また、
「どうせ持って帰られてしまうなら、お店のロゴを入れたお皿に代えちゃえば? 宣伝にもなるし、WinWin になるじゃない?」
という前向きな意見もあった。
というわけで、今のところ、うちの店からはどんどん日本テイストなお皿や、備品が姿を消している。シンプルな白い小皿などが主流になっている。おちょこも、安いものに変えた。(それでもおちょこは評判いいけどね)。
また、環境保護や、リサイクルに敏感なたくさんのお客様からの要望で、洗って使う普通のお箸を使っていたけれど、それも割り箸にした。
ま、仕方ないね。
それよりも、大皿やワイングラスなどは、より魅力的なもの、良いものを使って、バランスをとっていこうと思う。
環境保護、リサイクルについても、他にやれることはいくらでもある。
そのうち、お店のフロントにお土産コーナーができるかもしれない。
ロゴ付き小皿が登場するかもしれない。
そう、扉はいくらでもある。
チャレンジは、思ってもみないギフトを連れてきてくれることもあるのだから、そっちの方を楽しみにしていこう。
ところで先日、地元でラーメン屋を始めたオーナーが、来店した。
彼は、以前日本で暮らしていたことがあって、ぜひあの頃に食べたラーメンを再現したいという情熱をもって、店を開いた。
彼のお店は小さいけれど、お洒落で機能的。
カリフォルニアらしく、ビーガンの豚骨(?)ラーメンを提供していて、それがとってもコクがあって美味しかった。(私は肉を食べないので、本当に嬉しい!)
一緒に行った、夫や娘も、ふつうの豚骨ラーメンを堪能して、まさに彼の情熱が伝わってくるお店だった。
私が気づいたのは、そこで出されていた、魅力的なおちょこや、小皿や、スープを飲むための陶器のレンゲだった。私も、店を始めた頃はこだわって、こういったもので料理を提供していたな~なんて思い出した。
だから、ラーメン屋のオーナーに、「お皿、失くなったりしないの?」と聞いた。
何かいいアイデアや、体験談が聞けるかと思ったのだ。
すると、彼は何かを思いめぐらせるようなそぶりをした後に、「はっ」とした顔をした。
そして、何を言い出すかと思えば、
「そういえば、うちのおばあちゃん、レストランに行くときはいっつも大きい バックを持って行ってたわ、レストランのお皿を持って帰るために!」
とげらげら笑い出した。
やれやれ。
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