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青が呼んでる
夕べから、今朝は1週間もお休みしていたジムに行こうと考えていたのに、
コーヒーを入れて、ふと庭を眺めれば、鮮やかな青が広がっていた。
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真っ白な画用紙に、水彩絵の具の青で塗り潰したような。
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鬱蒼と立ち並ぶ、ヒョロリとしたユーカリの、色褪せた緑の隙間からも青がこぼれている。
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数年まえに、ワインを飲みながら水彩画を描くというクラスがあって、しばらく通っていた。
ワイン・バーがクラスのために解放されていたので、色んなタイプのワインを試すことができた。
飲んでいい気分になっていくうちに、私の水彩画も気負いがはずれ、いい加減で色が画用紙に馴染んでいくようだったっけ。
その時の先生が、
「水彩画に描いてみるまでは、本当にそれを ”見た”とは言えないのよ」、
と言っていたことを思い出した。
けれど、今、
この青の前に、飲み込まれるかのようにたたずめば、
「見る」というなんというダイナミックな活動なんだろうと思う。
意図したわけでもないのに、
突然、目に入ってきた「青」。
それを捉えたこの目だけが、本当のことを知っていた。
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青で塗り潰されたキャンバスの上に、
ユーカリの葉がなびく。
この風を 今感じるそのままに、表現できる言葉なんてどこにもない。
絵の中に閉じ込めてみることもできない。
この「見る」こと、肌で「感じて」みること以上には。
ヒョロリとした木々のこずえが、重そうに揺れる。
リスが曲芸のごとく、こんな細い枝をどこまでものぼり、そして降りて行った。
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鷹が舞い、鳥がお喋りを始めた。あちらとこちらで呼応するみたいに。
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風のざわめき、
蜂の羽音、
今度は、「耳」が捉えるものに、目を閉じて埋没していく。
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気づくとずいぶん長い間、庭の寝椅子にねっころがっていた。
そんな感じのこの頃。
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7月が終わる。