夙川のパン屋さん/あのときの空気を買った 今日の買物#17
自分史上最高のパン屋さんとの出会い
2011年から2019年まで、8年関西で暮らしていました。住んでいたのは兵庫県西宮市の夙川(しゅくがわ)の近くです。いわゆる阪神間といわれるエリアです。家族とともにいたのですが、ケーキ屋さんとパン屋さんの多い街だなぁという印象を最初に持ちました。街の中にケーキ屋さんとパン屋さんがあちこち点在しています。その中で自分史上最高のパン屋さんに出会いました。阪急夙川駅近くのコンセントマーケットというお店です。ハード系のパン各種が、おいしく、ボリュームたっぷり、しかも安い。自分のおすすめは木の実マロン、木の実クロワッサンです。家族にもそれぞれにおすすめがあり、妻はパンミヤッコ、子供はプレッツェル、あおさとしらすのバゲットです。週に一度は買いに行く贔屓店でした。
2019年に関西から離れたのですが、そのあともインスタでずっとフォローしていました。出張するときは、わざわざ夙川まで買いに行っていたくらいです。家族におみやげに買って帰るとみんな大喜びでした。そのパン屋さんが、オンライン販売を始めたのです。これは買うしかない!とさっそく注文しました。
箱詰めされた「あのパン」が届いた
箱に入ったパンが届きました。中には挨拶状が入っていて、お店のコンセプトが書いてあります。コンセプトは、「コミュニケーションするパン」「このパンが、なにか対話や思いのきっかけになりたい」と書いてあります。こんなコンセプトだとは、このときまで知りませんでした。でも、なるほど、このパンを真ん中において家族で会話が弾んでいたなと思いだしました。気持ちがこもっていて丁寧であたたかい感じが、そのまま箱に入って我が家にやってきたようです。家族全員でパンを食べながら、関西で過ごした思い出話を楽しくしました。
「あのときの空気」を買った
さて、自分は何を買ったのだろう。大好きだったパン屋さんの「パンというモノ」を買ったのは事実です。でもモノ以外にも何かを手に入れたと感じました。「あのときの空気」を買ったのかもしれない。家族との思い出話が自然に発生するようなきっかけを買ったのかもしれない。そんな感じがします。関西を離れて、5~6年経ちます。家族それぞれに今の生活があり新たな仲間もあり環境も変化してしかも毎日忙しい。家族の会話の中にも「あのときの空気」は滅多に感じられなくなっていました。箱詰めされたパンは、一気に家族全員を「あのときの空気」で包んでくれたようです。
オンラインで買物することはふつうのことになりました。ネットで注文して翌日には配達されるという便利さを今の社会は当たり前のように享受しています。箱詰めされたモノは日々全国を流通しています。箱詰めされたモノは、モノであることに変わりはありません。ただ流通の途上でそのモノにまつわる「空気」も一緒に運んでいることもあります。オンラインの買物でモノが届くときに、あんな空気、こんな空気をもっと感じさせてくれれば、買物はもっと楽しくなると思いました。