モフモフ先生、あらわる
今週と来週は、中学生の娘の秋休み。なんと、我が家にもう一人、家族が増えることになった。3ヶ月の仔猫だ。決断に迷いもあったが、一度決断すると話は早かった。初日の引き渡しまであっという間。
ふわふわと小さく、生命力にあふれている。私たちにすべてを委ね、まったく無防備な存在。この責任を考えると、なかなか決断できなかった。
3週間くらい前、最後の迷いをセラピストのビアンカに相談したら、なんと彼女は猫を2匹飼っている愛猫家だったことがわかった。日頃、自分のことはあまり話さない彼女なので、全く知らなかった。さすがプロ。
そして、私にこう言う。「実は、あなたに動物を飼うことを勧めたかったののよ。でも、セラピー目的で飼うのはどうかなと思い、言わなかった。きちんと責任を持って飼うことが大切ですから。」、なんだか意味深だった・・・。
さらに、「あなたは警戒心が強く、真面目すぎるがゆえにストレスを抱えがち。猫のような小動物たちは、人間をまったく威圧することなく、私たちのガチガチの防御をするりとかわしてくれますよ。きっと、あなたにいろいろ教えてくれるはずです。」と続けた。
なるほど、そうか。ならば、このモフモフを師匠として仰ぎ、学んでみるのも悪くない。私は真剣にそう思った。
しかし、そんな大げさなことを考えていたのは私くらいだった。娘は大喜びで遊び相手が来るのを楽しみにしていた。メス猫をもらうことになったので、娘が「ミミ」と名付けた。
さて、このモフモフ先生「ミミ」がやってきた日。穏やかな気性の仔猫を選んで、あまり鳴かないおっとりした子をもらってきたはずだった。ところが、現実は全く違った。
キャリアーから出した途端、用意していた猫ベッドなど見向きもせず、ベッドの下に隠れてしまった。小さな体でシャーシャーと威嚇する姿に、家族全員、びっくり。猫の飼育経験が浅かった私たちは、どうしたらいいのか分からず、戸惑った。ベッドの下に隠れたまま出てこないので、埃が心配でたまらなかった。
そして、夜中のこと。ミミが大きな声で「みゃあ、みゃあああああああ」と鳴き始めた。その声は朝まで続き、家族全員寝不足に。なんとか抱っこしてなだめようと思ったが、ベッドの下に隠れていて、どうすることもできなかった。
次の日、猫に詳しい姉に相談した。姉は「夜鳴きだね。まだ小さいからすぐ慣れるよ」と、いろいろアドバイスしてくれた。仔猫は狭い場所を好み、新しい環境に慣れるまで時間がかかるらしい。
しかも、愛猫家の姉は「仔猫のシャーシャー、可愛い!ぜ〜んぜん怖くない姿で、頑張って威嚇してるし!(笑)」。
実は、私はとても怖かったのだが、それは言えなかった・・・。
まず、キャリアーからすぐ出したのがいけなかったと判明。仔猫は、狭くて安心できるスペースがお好きらしい。それから、まだ新しい家に慣れていないので、ゲージやキャリアーに夜は入れたままにしてあげて、毛布を上にかけてあげると安心して猫は静まり返る、と姉はいう。
次の晩はミミをキャリアーに戻して、毛布をかけてあげた。中からは、相変わらず、シャーシャーが聞こえて来る。だが、姉が言った通り、キャリアーの中で静かになってくれた。
そしてその翌日、布でできた仔猫用のプレイペンのようなものまで購入。さらに、猫を安心させるぬいぐるみまで衝動買いしてしまった。このぬいぐるみの中に、電池で動く心臓音を設置できる。旦那と娘に、「なにそれ」と笑われてしまったが。私は真剣だった。なんたって、仔猫がひとり、いや一匹でその中で眠ることになるからだ。
「ちゃんと、仔猫でも初めからルーチン設定しなくちゃいけないらしいわよ!」と大真面目に旦那と娘に言った。二人ともなんだかニヤニヤしていて気にくわない。
ミミを、ふかふかのベッドと、心臓音のするぬいぐるみ、おもちゃと小さなトイレ、水ボウルを入れたプレイペンの中に入れる。
でも、今晩はなんだか、「みゃあああ、みゃあああ」と反抗する。それをなんとか振り切って、上から毛布をかけた。
でも、まだ鳴き止まない。うむ。ちょっと私の方がパニくってくる。これはトイレでちょっと頭を冷やそう、と少しばかり「タイムアウト」することにした。
ミミがみゃあみゃあ鳴く声、これを聞くのが辛いので、しばらくトイレで5分くらい深呼吸をしてみることに。
そして戻る。お、今度は、みゃあみゃあがおさまっている。なんだか、シーンとなっているようだ。
「ミミ、静かになって安心してるみたい、心臓音のぬいぐるみが効いたかな?」と言いつつ居間に戻る。
と、なんと、旦那と娘が居間のソファーの上でミミと遊んでいる。どうやら、私がトイレに行った際にミミをプレイパンから出して遊ばせることにしたようだ。
いや、これは前もって計画されていたに違いない。やつらのニヤニヤを思い出した。で、「なにこれ!」とついキレそうになる。で、皆、爆笑。
「ちゃんとルーチン設定しようと思ったのに!」とぶつくさいったが、やはり、モフモフの可愛さに圧倒されてしまった。
結局、娘が喜んでいるから、「まあいいか」となった。
しかしながら、15分くらい遊んだら、ミミがアクビをし始めた。やはり、疲れているのだろう。真新しい環境だし、ということで、プレイパンに戻すことに、皆、やっと同意。
すると、今度は、文句なしで、即シーンとなった。おそるべし。「パーソナリティ」か、これは?と思ってしまった。
もしかすると「お寝んねする前に、ちょっと遊んでくれにゃん」といっていたのかもしれない。偶然にも、それを察した家族のやつらが遊んでくれたので気がすんだといったところか。
ちなみに、私は今まで一度もモフモフのペットを飼ったことがない。飼ったことがあるのは、なんだか私を嫌ってそうな無愛想なセキセイインコと、子供の頃に一度飼ったことのあるハムスターくらい。こやつは夜行性、かつ、いつも糞尿臭かった。その上、コミュニケーションも全く不可能・・・。可愛いのは外見だけ、といった感じ。
というわけで、今まで、どちらかというと、動物は苦手な方だった。旦那は動物好きで、子供のころには犬を8回も飼ったことがある。また、娘は生まれた時から大の動物好きで、そのせいか動物によく好かれるようだ。
うむ、というわけで、家族の連中の方が、私よりずっとミミをよく察していた。
旦那曰く、猫は人間と共存し始めてから1万年以上、犬は1万4千年くらいだという。これも、知らなかった。つまり、西暦以前からの人間の伴侶たち。お釈迦様や、西暦が始まったイエス・キリストが生まれるもっと前から、ということらしい。
いや、待った。・・・ということは、彼らは人間と共存しつつ進化してきたということでもある。
こっちのデータでは、日本やドイツを含んだ先進国では出生率は低下する一方だが、ペットや犬猫の数は増えまくっているそう。ふむ。これは、もしかしたら、じつは、人間が地球を制覇しているのではなくて、犬猫が間接的に世界を制覇しているのでは?とも思ってしまう。
犬猫たちは、人間共存の長い歴史を経て「モフモフ攻撃」を進化させていったに違いない。そして、その攻撃の強烈さで、すっかり腑抜けになった人間を利用してどんどん増えている賢い連中。じつは、イルミナティーどころか犬猫のモフモフ世界制覇陰謀説・・・。
・・・と、たわいもないことを考えている暇はなく、獣医さんのアポも、きちんととって健康チェックをお願いしなくては。あ、それからペット保険。やるべきことがたくさんあった。
私は仕事が忙しかったので、旦那と娘が獣医さんに連れていってくれた。
戻ってくるなり、「もう、大変!」なニュースがあったと娘が大声で言う。また、なんだかややこしい感じ。いや、これは、また私をからかうつもりか。と、つい防御体制にはいる。
「なにが大変なの? やめてよ。じつは、やばい体質だったとか?」と低い声できく。
「そうじゃなくて!」と二人が声を揃える。
「ミミじゃなくて、ミミーオだったよ」
「は?」
「女の子じゃなかったの!」と娘。
「タマつきだった」と旦那。
「え???」
モフモフすぎて、どうやらブリーダーさんが間違えてしまったらしい。
なにはともあれ。・・・真面目に、本格派モフモフ。何もかもが隠れていた。皆、騙されてしまったのだった。
うちのご近所の獣医女医さんは、ミミ、いやミミオを人間扱いしてくれたようで、健康診断が終わると「名前を考え直してまた来てください、書類を訂正してちゃんと登録し直しますから。」といってくれたらしい。
「う〜ん、でも、『ミミオ』。なにそれ・・・(懐疑)」と皆で考え込んでしまった。
そこで、結局、スタジオジブリの「魔女の宅急便」に出てくる魔女っ子キキの猫、ジジにすることにした。
そこから発展して、娘の弟になるので、「弟ジジ」、「ジジ・ブラザー」から短く「ジジブロ」と呼ぶことに。
また、仔猫にメロメロになっている娘(と自分)のために、偶然にもおもしろい新聞記事を見つけた。
それは、サンスクリット語で「カマムタ」(काममूत)と呼ばれる、いまだ十分に研究されていない感情についての記事だった。道端で迷子になった不憫な子猫を見かけ、思わず抱き上げて助けてしまったり、このような時に感じる温かい気持ちや、感動した時に胸が締め付けられるような感覚やこみ上げる涙こそが、その「カマムタ」なのだそうだ。
その記事の英語版、をここに張っておく(英国ガーディアン紙発信)。
また、学術的な記事にも関わらず、モフモフ仔猫の写真が大々的に掲載されている(爆笑、下)。また、この仔猫のなんだか惨めっぽい表情とモフぼさ毛並みが不憫にも見えてくる。
その可愛さ、不憫さにカマムタ衝撃を受けてしまった。それが掲載写真の狙いなのだろう。
どうやら、この「カマムタ」は、家族や友人との絆を深め、人間関係をより豊かにするために進化した感情らしい。
しかし、その実態は未だ不明であり、ノルウェーのオスロ大学には「カマムタ研究所」なるものがあるという(リンク)。その研究所の大きな見出しにはこうある。
『カマムタとは、あらゆるものに対して、一体感、愛、帰属意識、または一体化を突然に感じる感情のこと。それは、ある特定の人、家族、チーム、国家、自然、さらには大いなる神や宇宙、はたまた、小さな仔猫に至るまで、もうなんでもアリなのである』。(意訳・・・)。
では、また。
また、ジジブロについてのネタを書こうとおもう。とりあえずは、心理セラピストのビアンカに加えてもうひとり先生のような人物、いや、「猫物」が現れたので、話題ネタがつきそうにない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?