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『意思決定のための「分析の技術」』

本書籍は以下のような方たちにお薦めです↓
問題解決の思考法をを学びたい人
分析のテクニックを知りたい人
発想力を身につけたい人




1, 書籍情報

今回は書籍『本物のデータ分析力が身に付く本』の要約と私の見解を記述している。

・金額
 > 紙  :2,200円
 > Kindle:1,782円
・ページ数:367ページ
・刊行年月:1998年12月




2, 著者情報

著者は後 正武ウシロ マサタケ)氏で、Amazonの著者略歴によると以下のとおり。

後 正武(ウシロ マサタケ / 1942年生まれ) は東京大学法学部卒業、ハーバード大学経営学修士 。新日本製鉄、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベイン・アンド・カンパニー取締役副社長、日本支社長を経て、東京マネジメントコンサルタンツを設立。




3, 要約と見解

本書籍は文字通り“分析の技術”に関して言及されている。分析と言ってもデータを使ってどうこうする、というよりは「問題に直面した際、その状況を打破するための思考法」について言及されている。

レベルとしては、"自分の分析方法(思考法)に自信がない"というような初心者から"多少なりともやり方はつかめてきたので、もう少しステップアップしたい"といったような中級者向けの書籍であるかと思われる。

ざっくりではあるが目次は以下の通り。

序章 分析とは何か
第1章 「大きさ」を考える
第2章 「分けて考える」※1
第3章 「比較して」考える
第4章 「変化 / 時系列」を考える
第5章 「バラツキ」を考える
第6章 「過程 / プロセス」を考える
第7章 「ツリー」で考える
第8章 「不確定 / あやふやなもの」を考える
第9章 「人の行動 / ソフトの要素」を考える
終章   コンサルタント能力の全体像と分析の位置づけ

※1,,,各章の“「」“と“考える”は切り離されているが、なぜか第2章だけ一緒になっていた


各章の要約と、"読んだ上で自分はどのように感じたのか"という自身の見解について記載していく。



■ 序章 分析とは何か

この章では文字通り“分析の定義と目的”について言及されている。

分析とは「物事の実態・本質を正しく理解するための作業の総称」である。

では何のために分析するのか?その目的は?
それは「正しい認識・判断により正しい対応をするため」である。


そのための心構え、テクニックが各章で述べられている。



■ 第1章 「大きさ」を考える

この章では「事象を大きさで捉え、思考する」ということついて言及されている。

分析に取り組む際、全体としての意味合いをとらえるには何よりも大きさに対する正しい認識が不可欠である。

例えば問題(課題)があり、それを解決するために分析(思考)する。その際に全体を正しく把握、認識し、その後で細かい箇所を見ていく、もしくは優先順位(濃淡)をつける作業をしていく。

当たり前のように思えるが、何かしらの問題に直面した際に"いきなり思考フレームワーク等を使って分析する"といった経験をした人も多いだろう。そうではなく、まずは全体を正しく認識しなければ「正しい認識・判断により正しい対応をするため」という分析の目的をなし得ないのである。

大きさに対して著者は以下のように述べている。

大きさを論ずるうえで鍵となる考え方に「大きさの程度」(オーダー・オブ・マグニチュード)という言葉がある。何事によらず、内部論理の緻密さや形式的な整合性を論ずる前に、全体としての大きさの程度、施策の利きの程度をおおまかに把握して、まず重要度の判定をし、そのうえで重要度の順に応じて、あるいは大きなところのみ手をつける、という考え方である。

後,1998,p.31

このオーダー・オブ・マグニチュードという考え方、検索してもこれといった説明ページがヒットしない。が、分析界隈では当たり前の思考法らしいので覚えておいて損はない。

大きさを理解するための分析手法として、以下4つの方法が紹介させている。

これらを適切に使うことで、「正しい認識・判断により正しい対応をするため」という分析の目的を成し得るスタートに立つことができるのである。



■ 第2章 「分けて考える」

この章では「事象を分解して思考する」ということついて言及されている。

第1章では大きさ(全体)を捉えることに関して言及されていた。しかし、物事を正しく理解するには総体として捉えるだけでは不十分である。

そうではなく、分けて、個々の要素を珍味することによって初めて本質を正しく捉えることができる。

ではどのように分けるのか?
本書籍では以下の3つのやり方が取り上げられている。



■ 第3章 「比較して」考える

この章では「事象を比較して思考する」ということついて言及されている。

第2章では事象を分けて分析した。しかし、いくら分けて検討しても思っていたように判別できない場合もある。

そんな時に“比較”という手法が用いられる。

分けてもなかなか上手く検討が進まない事象がある、と仮定する。その場合、2つ以上の事象を比較することでそこに含まれる法則性、相互作用、重要度が判別できるようになる。

では、比較という分析手法を用いるうえでどのような視点を持つべきなのか?
それは以下の3つである。

これら3つを組み合わせることで“比較を主とした思考法”の準備が整う。


準備ができたところで、どのように比較の分析をしていくのか?
テクニックとして、以下の4つが挙げられる。


個人的に、どのように比較の分析を進めていくのかという手法も大事ではあるが、準備段階における「アップル・ツー・アップルを考える」を特に意識すべきかと思う。

アップル・ツー・アップルを考える上で大切なことは以下の3つ。

できるだけ同じものを比較する
異なるものを比較する際は意味があり、かつ比較的dる指標を探す
似た者同士を比較する場合でも同じ要素を正しく見分け、異なる部分の影響を勘案し合理的な比較をする

これらをおさえたうえで好みの手法を使えば"分ける"分析は本筋から大きくそれることはないかと思う。



■ 第4章 「変化 / 時系列」を考える

この章では「事象の過去との関連性」について言及されている。

現状を正しく理解するためには、なぜ現在の状況がそこにあるのかを過去との関連において見極めることが必要となる。

ここで大切なことは以下の2つ。

  • 繰り返し現れる変化のパターンを読む

  • 変曲点に着目し、兆候を読み取る


時系列の分析は、他の分析手法「分けて考える」や「比較して考える」と併用して、総合的に検討することによって、深い意味を持つ。



■ 第5章 「バラツキ」を考える

この章では「バラツキを含む事象を正しく把握し、あるべき方向へと導くための思考」について言及されている。

本章は普遍的な場面で扱える、というよりも経営における思考法についての言及が多い。

したがって、不要と感じた場合は軽く読むくらいで結構かと思われる。


念のため記述しておくと、経営の世界では、数学的な正しさや学問的な興味よりも、現実世界の「意味合い」が重要である。
経営におけるバラツキの分析は3つある。

  • 現状をより正しく理解して意味を読み取る

  • そのバラツキをいかに活かすか、どう利用できるかを考える

  • マネジメントとして、バラツキに対してどのようなディシプリン(規律・秩序)を持ち込むべきかを考える

部分にこだわらずバラツキ全体を広くしっかりと眺めて、大事なポイントを見過ごさないような鋭い「経営者の目」が要求される。

細かい手法で言うと、以下の6つ。

  • 二限のバラツキ

  • 法則性を発見

  • マネジメント・インプリケーション

  • ベスト・デモンストレイテッド・プラクティス(BDP)

  • ウィル・ツー・マネージ

  • 分散管理



■ 第6章 「過程 / プロセス」を考える

この章では「分析における思考の過程」について言及されている。

以下4つを意識する必要がある。

  • プロセスを追って因果律を考える

  • モノや作業の流れを捉える

  • 漏れの過程を考える

  • ビジネスシステムを考える


特に最初の「プロセスを追って因果律を考える」が重要であると考える。

そもそも“因果律”とは何か?
それは、「森羅万象は何かしらの原因があって生じた結果であり、原因がなくては何も生まれない」という法則のことである。

われわれは、"プロセスを追って因果律を検討する"ことにより、問題がどこにあるのか?そしてそれはどう解決できるのか?を明確に呈示することができる。
人が考え得る思考の範囲は、"プロセスを追って考える"にまで及ばないことが多々ある。その過程にこそ問題解決の重要なヒントが隠されている。だからこそ、日頃から意識的に"プロセスを追って考える習慣"が必要となるのである。

これは"ロジカル・シンキング"に類似した話である。私はその能力が弱い。まずは日常生活においてこの「プロセスを追って因果律を考える」ことに取り組み、この分析が使えるようにしたい。



■ 第7章 「ツリー」で考える

この章では「事象を分解し、更にそれを複数の要素に分岐させていく思考法」について言及されている。

ここでは巷でよく耳にする「〇〇・ツリー」が取り上げられている。
今回は以下の4つ。

※本著作では"イッシュー・ツリー"と表現されていた

それぞれで用途と目的の違うツリー型分析ツールになるため把握しておく必要がある。

そして、「業務ツリー / テーマ・ツリー」だけリンクがないが、検索してもヒットしなかったため、文献をそのまま引用させていただく。

イッシュー・ツリーが思考のフレームワークから出発し、事実の把握・分析に基づいて発展・変遷するものであるのに対して、作業ツリーやテーマ・ツリーは「現在の事実」の把握から出発し、それを整序する過程で、抜け・漏れ・重複・交錯などの課題を明らかにして、新たなあるべきテーマ・ツリーの作成に向かうという逆のプロセスをたどる。「ツリー」の考え方が、事実の整理と全貌の把握、さらに作業の整序・再検討に役立つのである。

後,1998,p.266


何かしら問題が発生した際に、「拡がり→深さ→重み付け」の順で事象について考えを巡らせるわけだが、その際にツリーを用いればその作業が容易になる。あとは、なんでもかんでもロジックツリーを使うのではなく、適切なツリーを使えば問題解決にグッと近づけるのではないだろうか。



■ 第8章 「不確定 / あやふやなもの」を考える

この章では「変数に対する思考法」ということついて言及されている。

不確定、かつ広範な世界で正しい判断をするための最適な方法は、以下2つを効果的に組み合わせることが重要となる。

狭いが線型で正確な判定が可能な要素
広く非線型でバラツキの大きい要素

「①狭いが線型で正確な判定が可能な要素」は数理面などのハード面で、「②広く非線型でバラツキの大きい要素」は感情面などのソフト面である、くらいに考えていただきたい。

上記2つを効果的に組み合わせる具体的な方法論として、以下4つの方法がある。

  • 信頼性のレベルにより情報を分類する 

  • ロジックとフレームワークを活用する 

  • プロセスを活用する 

  • 多数の意見の集約を図る



■ 第9章 「人の行動 / ソフトの要素」を考える

この章では「"人"に起因した変数に対する思考法」について言及されている。

第8章の冒頭で"変数に対する思考法"と発言したが、本章では変数のなかでも"人"にフォーカスしたものが取り上げられている。

人のもつ問題はいろいろな要素を含み、かつそれらは多岐にわたる。したがって、これまでに説明した分析の手法を駆使しなければならないが、そのことに加えて"人の課題を取り扱う際に遭遇する特有の手法や留意点"に気をつける必要がある。

大きく整理をすると、 以下の4つに注意する。

  • 枠組みの工夫 

  • 事実を把握するための工夫 

  • ソフトな情報を動員する工夫 

  • データや情報を効果的に用いる工夫

"人にフォーカスした思考法"は、対象となる事象の大半が"感情"の部分であると考える。その際、上述した4つに意識を向けたい。



■ 終章   コンサルタント能力の全体像と分析の位置づけ

この章では「戦コンに対する著者の解釈」について言及されている。

正直、ここは読み飛ばして良い。が、興味あられる方向けに簡単に記載すると、コンサルタントに必要な資質・能力・知識・技術などをカテゴリーに分けると以下5つになる。

  • コンサルタントとしての基本姿勢・態度 

  • 問題解決作業を進めるためのプログラム・知識・概念など 

  • 2を実施するためのチーム運営の能力・技術 

  • 23の作業を遂行するための事実の把握・分析の手法・技術(本書の主題)

  • 変革推進のための考え方・手法

コンサルタント、ここでは戦コンを指しているわけだが、これら5つはさらに細分化される。既に戦コンで努められている方、これから目指される方に限らず、ビジネスパーソンであれば可能な限りその細分化された諸要素を網羅していきたいものだ。


4, Appendix

齋藤さんが書かれた『問題〇〇プロフェッショナル』シリーズに続き、元コンサルの方が書かれた思考法に関する書籍を読了。そういった類の書籍は読みごたえがあって本当に面白い。齋藤さんの書籍しかり、本書籍もしばらくしたらまた読み返したいと思う。


次回は『ビジョナリーカンパニー ZERO』について投稿したい。

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