花火の音散文
終わりだ。朝は終わりの始まり。
何処へ行っても人間関係がある。
わたしにはそれを持続する能力がない。
死ぬことに必要なお金は足りない。
遠い親族が連絡をしてくる。母がわたしを探しているという。
また国外へ逃げる?でも何処へ?お金は?ビザは?その手続きに必要な精神力は?
ああ死ぬしかない。それ以外思いつかない。
でも死んだあとは?遺書は用意してあるけど、結局母にバレる?日本国籍の人間は法律上、親と絶縁ができない。
少しずつ歳を取る。
あの頃見上げていた人たちの年齢に、気づいたら自分もなっている。
ひとり。
「精神疾患と生きる」「希死念慮は終わる」
ぜんぶ嘘だ。結婚しているお前らに言われたってなんの説得力もない。親が普通の君たちとは一生分かり合えない。だけど、わかってほしいわけじゃない。このまま時間が流れていくなんて、わたしにはとても耐えられない。
恋愛を持続する能力も、誰かと支え合って暮らす能力も、仕事で手を抜くことも、同じ場所に留まる能力も、逃げるのを我慢することもできない。死んだあとのことを、どうにかするお金さえあれば。ぜんぶなかったことにできたらどんなに幸せだろう。
タイプする手はリチウムで震えている。普通になる努力は報われない。これは統計学だ。わたしはずっと普通になる努力をしてきた。
人の顔を見て演技しているといつか逃げることになる。これも統計学だ。
障害年金の申請には過去1年半保険料を払っていなきゃいけないらしい。わたしは海外から半失踪状態で帰国したばっかりだからこの条件に当てはまらない。これでも通信制の大学生なので生活保護は通らない。休めって?お金は?服用?してますよ?働くしかないじゃん。
生理はないし体重は減る。それでも太っている気がする。睡眠薬で寝て、シェアメイトが何か食べているのを見て、なんとなく何か口にする。性欲なんてないからこれから先も異性と暮らすのは無理だろう。
それでも起きてリビングに行くとニコニコする。なんにもなくなったら買い物にも行く。そのたびに貯金は減る。仕事を始めればやっぱりニコニコするだろう。顔が少しばかり整っているからって化粧をして仕事を始めればちやほやされる。わたしはそのポジションを保つために精一杯の演技をすることになる。完璧な敬語を使うし、ビジネスメールの定型用語は完璧に頭に入っている。ニコニコする。そしてまた、突然逃げる。
「結婚しないの?」
一体どうやって死ねば良いのだろう。
花火の音で起きる、絶望の朝。
爆撃で死ねる時代に生まれていたら、どんなに幸せだっただろう。
こんなんばっか聞いて現実からまた目を背ける。
わたしのところにも来ないかなー、死神。
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