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ルミエール


2024.10.5



皿洗いから始めよう。
そうやって決めた日は、上手くいかない日だってことを知っている。
こんがらがっているのだ。それはわかっている。水場に立ちたくない。スプーンからの被害にあいたくない。
でた。家を出てしまった。なにもしていないのに、それから逃げるように怠惰なかっこうをして、ペダルを漕いでいる。ネギがはみ出たスーパーの買い物袋に憧れがあるため、そこまで漕ぐ。坂を下りながら風を全身に浴びる。この街がすき。だから意地でも実家へ戻らない。ネギ、買った。他に何を買えば良いんだっけ。大根と卵と、オレオとシャウエッセンも入れておいた。ひとり暮らしっぽい。そのまま就職してみようかと思う。が、そんな理由で起用するほど、みなバカではなかった。
かるく「会社やめます。」と同僚が言ったため、わたしは会社をやめたのだけど。この人のこと、好きではなかったんだけど愚痴を話してくれていて、きっとわたしのことが好きだと思うから、嫌いにはなれなかった。そんで、きっと他の人はわたしのことが嫌いだったから、やめてやった。ということは、無職である。
無職期間で、金麦のCMに出てる黒木華のようになりたいと思う。ただ歩いて、そんな帰りに風鈴なんて買っちゃったりして。
水道の前に立っている。やった。済ませたことをいいことに、ビールのプルタブをあげる。午後5時。



2020.8.3


昨夜はとても長かった気がする。

時間なんて、ただ流れるものなのに
日によって長さが異なることがふしぎ。

早く眠って。
まだ寝顔を見せられないから、あなたが眠らないと
私は横にもなれない。

私はすごい悪いやつなのに、いい人から良い人と呼ばれている。
自分が言わせているような気がして、自分を恨む。才能もなければ、努力も知らないから、他人の気持ちを汲み取れない。それは伝え損ねた。そうして自分を殻に閉じ込める。"良い人"であるために



「洗濯物、やっておいたよ。」

そうやって伝えるとありがとうと無邪気に笑ってくれた。
そんな顔どこで覚えたの、いつするの。
知らないことばかり、知ってるね。

昨日、桃をむいてくれたとき、どんな顔をして受け取ったのだろう。
嬉しそうにできていたでしょうか。
それとも少し心配されるようでしたか。
それは忘れてください。あなたもずるい人です。


きっと、あなたは知らないだろうけど。
私は、⬛︎⬛︎な人だから、

そう思いながら、足早にいってしまう背中を見ながら、
まだ自分のことを愛したいともがいている。



2024.7.21

「椅子」


途中から入ってきたおじさん4人集は、知り合いではないけど徒然とカウンターの椅子へ座っていった。

自分の前の席は空いている。イヤホンを長押しして、外音取り込みへと切り替えた。距離があって聞こえない。マスターがワタシには見せない顔をしている。嫉妬か、これは何でもない。事実の羅列に過ぎない。
窓から見えるマンション。その前に座っている女の子。
ボブのかたちがちゅるんとなっている。トゥルンであるかも。
オレンジジュースに入っているみかんが沈んでいく。

新宿まで戻った。
目線のうちにいる人がスマホを片手に謝っている。頷いて、頭を下げて、最後に首を折った。つらい。つらいのかな。一体どうして分かろうとする。


「付き合ってください。」
「ごめんなさい。」

「愛してます。結婚してください。」
「はい。」


同じ日に聞くものではなかった。
結婚。ワタシは恋人をとばして、配偶者がほしい。ただただ安全な場所の確保をしたいから。結婚はおめでたいのかとか、そもそも何のためだとか、拗らせている。愛し愛され生きるのさ。小沢健二、あんたは何を言いたかった。




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