「ゴジラ-1.0」の感想(ネタバレあり)
日本製作だとシン・ゴジラ以来の実写ゴジラ映画。
舞台が戦後間もない日本という事でゴジラ第1作を改めて意識した作品になっていて、現在も作品が作られ続けているハリウッド版の「モンスターヴァース」の方のゴジラみたいな守護神的な存在じゃなく、人々の暮らしを踏み躙る厄災そのものという描かれ方になっている。
シンゴジラとも通じる感じだけど、あちらが現代が舞台だったのに対し、今回は戦後復興直後なので、物資も足りてないし日本がめちゃくちゃ弱っている時期なのがゴジラを相手にするにはあまりに心許無い。
しかも今回のゴジラは再生能力もあるし、放射能攻撃も核爆弾並みに強いし、「こりゃ勝てない、、、」という絶望感が強くて、それ故に後半にどうやって逆転していくのか?にワクワクしてくる感じだった。
監督の山崎貴作品はそんなに観れてないが、作品の出来不出来は置いといても子供から大人まで楽しめる様な分かりやすく楽しい作品が多い印象だったけど、今作は割とバイオレンスにめちゃくちゃ人が死ぬし、これまでの作品群の中でもかなりダークな部類になるんじゃないかと思う。
冒頭の小さめゴジラに襲われる整備兵の人達の無惨な殺され方とか、確かに主人公がトラウマになるのも分かる怖さで、噛んで殺す感じとか「ジュラシックパーク」シリーズのティラノサウルスを観た時の様な恐竜的な怖さがあった。
浜辺美波と神木隆之介とのラブストーリーは個人的には圧倒的に心を通わせていく描写が足りない感じがするし、かと思えば何年か経ったのに「妻じゃねえし!」と神木君がキレる描写があったりして、恋愛ドラマとしてウブすぎて観ているのがしんどくなった。
この2人主演でこの前までやってた朝ドラの「らんまん」を僕は好きで見ていたので、この2人のベストカップル感に今作でも違和感なく入り込めたとも言えるけど、「らんまん」を見てたからこそ同じ役者2人使ってこんな薄っぺらいドラマしか描けない演出や脚本の力量不足も感じてしまった。
ただそんなドラマ描写を置いといても、ゴジラや戦艦や戦闘機のアクションや破壊描写は素晴らしいし、日本映画としてはトップクラスのVFXもハイクオリティで、この辺はさすがは山崎貴監督という感じがする。
特に戦艦のカッコ良さが光る、ゴジラとの海上戦の所が素晴らしい。
最初のなすすべもなくやられる破壊描写も迫力があったし、クライマックスの2台の戦艦でゴジラを挟む作戦シーンも熱い。
この最終決戦は街中での電車や働く車でゴジラを追い詰めていた「シン・ゴジラ」との差別化がはっきり出来ていてフレッシュな見せ場だった。
戦後間もない東京の街並み描写とかはCGもしっかりしていたし、だからこそ今そこでゴジラが破壊しているという緊迫感もとても生々しく感じる。放射能を吐いて、キノコ雲をバックに立っているゴジラの画もとても神々しくてめちゃくちゃカッコよかった。
ゴジラの造形も「シン・ゴジラ」の不気味さを押し出した雰囲気と違って、結構ストレートにカッコ良いゴジラという感じでこちらもこちらで好きなゴジラデザインだった。
放射能を吐く直前のロボみたいな背鰭の可動の仕方とかも男の子が好きそうなケレン味があり、子供が見たら間違いなくおもちゃが欲しくなるカッコ良さだと思う。
不満点を言うとそのカッコ良いゴジラの見せ方が正直あまり良くなかったと思う。
ためが無くサラッとゴジラが登場する印象で、個人的にはギャレス・エドワーズ監督版のゴジラみたいに海からの波とか、シルエットとかで焦らしに焦らした後にドーンとゴジラが現れる登場シーンが好みだったので、今回のゴジラはその辺の登場までのお膳立てが弱い気がして、せっかくゴジラの造形とかはカッコいいだけに勿体無い印象。
冒頭の島でのファーストコンタクトのシーンも「あれは地元の人が言ってたゴジラだ!」みたいなあまりにも簡単な説明セリフで当たり前に出てきて熊に遭遇するみたいな軽くて、初登場シーンとしてかなり弱い。
あと先にも書いたけど、人間ドラマのどうでも良さもかなりしんどくて、主人公の神木君の情動の動きとかも終始よく分からない。
ラストは今の映画の倫理観的に特攻で敵を倒してハッピーエンドなんてありえないと思っていたので、脱出するのに意外性とか全然無いし、だったらどういう気持ちで神妙な顔してたのかとかも、あんまりピンとこない。
そもそも吉岡秀隆の作戦全然信用してなかったんだろうな。
最終決戦は海での見せ場にしてシン・ゴジラと差別化してて良いとは書いたけど、沈めて浮かせて水圧で倒すという作戦がかなり絵面的に地味で、効いてるのか分かりづらかったし、それまでのゴジラの無敵っぷりから始まる前から絶対失敗するだろなぁと予想出来る感じであんまり緊張感が無いのが何とも勿体無い。
そんな感じで映画としてのクオリティは「シン・ゴジラ」の方が高いとは思うけど、何度もカッコいいと思うカットがあるし、日本最高峰のVFXを駆使したゴジラを観れるというだけで、もちろん映画館で観る価値はあり大満足だった。