「ハウス・オブ・スポイルズ 魔女の厨房」の感想(ネタバレあり)
Amazonプライム・ビデオ配信映画作品。
ブラムハウス製作ホラー作品という事で結構期待して観たけど、コミカルさと物語の驚きのバランスが流石でやっぱり面白かった。
冒頭のお婆さんが怪しげな本のレシピを広げ、素手でぐちゃぐちゃに潰したよく分からない肉を混ぜて、「大地の糧となる」等と呟きながら、具合の悪そうな女性に何かを無理矢理食べさせようとするシーンで始まり、狂った魔女の儀式を思わせタイトルの通り、いかにもよくある魔女ホラー映画を予感させるのだけど観終わってみると、ここのミスリードがなかなか上手い。
心機一転初めての土地で新たな生活をスタートしたら、住み始めた訳ありの家で少しずつ超常現象に苦しめられるという、とてもよくありそうなホラー映画的に物語が始まっていくのだけど、そういう定番のホラー映画に見慣れている人程、終盤の展開は読めなくて結構楽しめると思う。
後半よくある主人公の精神的な崩壊がバッドエンドを予想させていくのだけど、まさかの悲しくも優しい真相を知り、主人公が通過儀礼的に土の中から再び生き返る様な爽やかなラストは全然読めなくてビックリしたし、とてもこの映画独自の魅力になっていた。
序盤は定番のホラー映画的な展開が続きながらも、ブラックコメディ要素の入れ方も絶妙で、主人公にとっては気の毒な事ばかり起こるのだけど、全然心が折れない前向きさが逆に若干の狂気も感じるレベルで、彼女が困難を前に適応していく様子が結構笑えるバランスでもある。
最初の何としても失敗出来ない接待ディナーのシーンで、前日に仕込んだ料理が当日全部腐ってしまうのだけど、その辺のスーパーで買ってきた適当な材料で何とか乗り越えてしまう所とかは、彼女自身のなりふり構わなさと、全然味が分かっていない客の間抜けさが、めちゃくちゃ笑えた。
あとよくホラー映画で気持ち悪さ表現で出てくる食べ物に虫が沸く描写で、最初は彼女自身嫌悪感を抱いていたけど、中盤から普通にオーブンで焼いて料理の食材にしだす所は予想外で驚いたし、これがまた笑えた。(しかも美味いのかよ)
その他にも見た目がヤバそうな果物や、変な薬草等、見た目的には料理に向かなそうな、家の周りに実っているものを、どんどん自分のレストランのメニューに投入していくのだけど、その過程で彼女自身がかつてこの家に住んでいた魔女と言われる女性と重なっていく様で、笑いながらも観ているこちらはだんだん不安になっていく。
そんな展開から彼女自身も一旦冷静になって、魔女メニューを捨てて、自分以外を信用しないで、料理に没頭していくのだけど、更にどんどん状況が悪化ていくのがなかなか辛い。
終盤閉じ込められて、地下室の穴の中に入っていくシーンがあるのだけど、閉所恐怖描写としてなかなか怖かったし、彼女の現状の前にも後ろにも進めない状況を分かりやすく象徴している。
そして目の前に現れるモノの「ここ通るの?マジ?」と、観ているこちらも最悪な気持ちになる状況の作り方も上手い。
その地獄の状況に向き合い、乗り越え、復活していく流れはしっかりカタルシスがあった。
主演のアリアナ・デボーズは、こないだのディズニー映画の「ウィッシュ」の主人公や、「ウエスト・サイド・ストーリー」とかに出ていたらしくて、ミュージカル映画とかで活躍している俳優さんなのだけど、今作ではそのイメージをガラッと変える様な作品だったと思う。
これが新しい場所で新しい事に挑戦する主人公とリンクしてるみたいでなかなか味わい深かった。
神経質な表情が気の毒さとコミカルさを同時に体現しているみたいで、主人公としての華があったと思う。
あとタフに生きてきた主人公と、真逆の女性シェフであるルチアも良かった。
第一印象ではお互いの印象が良くなかったが、中盤からは信頼し合ったり、それが更に反転したり、関係性の変化が目まぐるしい。
お互いが無いものを持っているからこそ、ぶつかってしまう感じなのだけど、逆に協力すればとても強い関係性とも言える。
だからこそ色々あって最後に協力する流れはグッと来てしまう。