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「ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り」の感想(ネタバレあり)

ファーストデイに観に来たからなのか珍しく満席に近い状態で観たのだけど、子供が多くて結構ビックリした。
実写の洋画だとマーベル映画でもここまで子供の割合が多くなかったと思うしかなり意外だった。
吹き替え推しの予告とかが効いてるのかも知れない。

ファンタジー映画としての本気度

魔法世界観の作り込みはかなりよく出来ていて、そこに息づく人達の実在感を感じた。
冒頭の刑務所に運ばれてくる重犯罪人のシーンから引き込まれる。馬車から運ばれてからの弓矢で囲まれた中で大男が出てくる緊張感、監獄のデザインや床のレールと首の鎖が連動して牢獄まで移動する所のディティールとかだけで、ファンタジー映画としての本気度が伝わってきた。

「ロード・オブ・ザ・リング」でもやってたけど街から街への移動の度に広大な荒地や草原等が映されるので、そこにある世界の広さを信じる事が出来たし、撮影も本当素晴らしい。

途中に出てくるデブドラゴンのデザインとかも、これまで映画で見た事がない愛らしさと、それでいてしっかり怪物としての恐ろしさも感じるバランスで素晴らしい。最初のお腹で滑って追っかけてくる所とか可愛くて好き。
そこからドラゴンの体重で足場全体がシーソーの様になってグラングラン揺れる中逃げていくシークエンスも画として迫力があって映画館で観れる幸福感が強かった。
こういうアクションも実はかなり複雑なことをやっていると思うのだけど、ちゃんと分かりやすく見せてくれるカメラワーク等もかなりレベルが高い。

負け犬達の物語

ダンジョン&ドラゴンというテーブルクロスRPGを原作にして、見事に映画的なエンターテイメント作品に落とし込んだことも凄いけど、僕がこの映画で一番惹かれたのは、登場人物達の負け犬から再生していく普遍的な物語の魅力だった。
それぞれに心の傷があって、それを乗り越える為に「誇れる事をしたい」という想いで闘っていく展開に胸が熱くなる。

ラストに娘も取り返し、宿敵にギャフンと言わせ、お宝も手に入れてもう逃げられる状態なのに、大勢の人々の命の危機に対して「しょうがねぇなぁ」と船を引き返すクリス・パインの表情が泣かせる。
最早闘う理由とかも深く考えずにヒーローになっていくのが最高に燃える。

登場人物

エドガン

冒頭の自分語りの所でコミカルに手っ取り早くこれまでの経緯を説明してくれるのだけど、唯一彼が隠していた部分が明らかになり後半部での告白シーンで、ずっと飄々としていた彼の負い目と人間臭さが見えてきてグッときた。
力が強い訳でもなく、軽口と仲間への信頼のみを武器に敵を欺いて倒す感じが痛快で楽しい。

クリス・パインは年齢を重ねてこういうちょっと汚れたヒーロー役が本当似合う様になってきたなぁとしみじみ感じる。

ホルガ

戦士として説得力があり過ぎる見た目のミシェル・ロドリゲスが最高。

彼女のかつての旦那との別れた経緯が、ファンタジー映画にありそうなドラマチックなものではなく生活感のズレという小さなすれ違いによる理由だったのが凄くリアルさがあって好き。

それをエドガンが恋人じゃなくあくまで友人として励ます感じが男女バディ映画として気持ちの良いバランス。
まだ未練のあるかつての旦那との切ないやりとりの後、歌を歌って前を向いて進んでいくシーンがグッとくる。
それがまたラストの死に際に繰り返される所はまあ泣いてしまう。

サイモン

彼とエドガンとホルガの再会するシーンで披露した重力反転の魔法の所とか面白い見せ場だし、ここ・そこの杖での移動アクションのくだりとか、彼の魔法描写は全部楽しい。

偉大な魔法使いの家系でありながら自分を信じる事が出来ない彼の一皮剥ける為の通過儀礼が一番偉大な血筋の相手を引っ叩くという行為だったのがコミカルだけど、血筋のコンプレックスを乗り越える描写として見た事ない感じで良かった。

ドリック

彼女の城への潜入シークエンスがめちゃくちゃ見応えがあって素晴らしい。
見つかってから逃げるまでの間、色んな動物に変化しながら城の中から塀の外までをワンカット風に撮っているのが緊張感があり、かなりハラハラしてしまった。

演じたソフィア・リリスは「IT」以来映画館で観てなかったので「こんなに立派になって、、、」と、親戚のおっさんみたいにしみじみ思ってしまった。

フォージ

同じくヒュー・グラントがやった役で言うと「パディントン2」のフェニックス・ブキャナンと結構近いものがある気がするし、最後刑務所でのシーンになっているのとかめちゃくちゃ似てる。

ただ自分の欲望のままに成り上がっていくだけの記号的なキャラに見えそうなのだけど、その中にあるギリギリの人間味表現がヒュー・グラントはめちゃくちゃ上手い。
エドガンの娘に対しての執着の仕方とか彼なりに真っ当な父親になろうとしている様にも見えて、何とも憎めないキャラクターになっていたと思う。


あと馬鹿真面目なレゲ=ジャン・ペイジもとても良かった。
一見カッコ良いのだけど、同時に漂う胡散臭さが最高で「グレイマン」の時みたいな、いけ好かない悪役も出来るかなり唯一無二な存在感な役者さんだなぁと改めて思った。

という感じで全体的には予想を遥かに上回る大満足な映画だった。

もちろん今やファンタジー作品は映画だけじゃなく漫画でもアニメでも山の様にあるので、「ロード・オブ・ザ・リング」を初めて観た時の衝撃とかはないのだけど、それでもちゃんとファンタジー的なディテールにこだわり、現代の僕らでも普遍的に燃える負け犬物語としての魅力、役者陣の華やかさ等でしっかり面白い映画になっているのがとても感動した。

是非是非続編も観たい。

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