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「デッドプール&ウルヴァリン」の感想(ネタバレあり)

平日の水曜に日本が最速上映という事でなかなか社会人は初日に観にくい夏休みスケジュールという感じだと思うけど、ちょうど転職をして今週から有給消化で1ヶ月程休める事になったので過去最高に気持ちが楽な状態で映画館で上映初日に観る事が出来た。

MCU世界への合流

デッドプールの三作目にして、MCUへの合流作品。
映画が始まった直後のデッドプール自ら話すナレーションが、色んな要素が多くて期待と不安で半々のこっちの気持ちをイジってくる様で笑えた。
その後のオープニングタイトルが出るまでのアクションシーンの不謹慎さはさすがデッドプールという感じ。
馬鹿馬鹿しいけど、しっかりアクションとしてカッコ良くもあるバランスで、今回の監督であるショーン・レヴィのセンスの良さとデッドプールシリーズの良さを理解しているのがここで伝わってきて、しっかりワクワクするオープニングアクションシーンだった。
そしてお尻と股間にウルヴァリンの爪を刺されて苦しんでいる人のシーンが絶妙に長く「早く殺してあげて」と思いながら観てしまう、まごうことなきR指定アクションシークエンスでもあった。

そこからデッドプールがアベンジャーズに加入したくてハッピーによる面接シーンが入ってくるのだけど、ここの掛け合いがくだらなくて結構面白かった。
MCUシリーズ第一作の「アイアンマン」の監督であるジョン・ファブローが自ら移籍してきたデッドプールの面接をしているのが、ここもメタ的。
ここでの会話の80%くらいがジョークなので本心が分かりにくくなっているけど、今作で彼が求め続ける「人の役に立ちたい」という想いが、恋人だったヴァネッサとの関係の悪化が根底にあるのが分かってくる。
彼女との関係が彼にとってどれだけ大切かこれまでのシリーズを観てきたら知っているだけに切実に思えた。

そしてヒーローの夢は捨てて、車のセールスマンになっているのだけど(何故?)、TVAのパラドックスからスカウトされる展開になっていく。
しかしこのパラドックスによって自分の時間軸が消される事を知り、その対抗策として映画「ローガン」で死んだウルヴァリンの復活が必要になってくる。

正直この辺のくだりは物語的に盛り上がる為に必要な展開だとは分かるけど、「こういう事にならない為にロキはシーズン2であんな一生懸命頑張ってたんじゃないのか・・・」とは思った。
結局こういうパラドックスみたいな考えのヤツがまだまだTVA内に居そうだし、あと「それぞれの時間軸にはアンカーなる人物が必要」というよく分からない設定がまた増えて、今後のマルチバース展開も荒れそうだなぁ。
しかし20世紀フォックスのマーベルヒーローの時間軸を担当していたのが、いい加減なコイツのおかげでケーブルのタイムマシンでめちゃくちゃしててもデッドプールが剪定されなかった理由になっている気がする。

20世紀フォックス版マーベルヒーローの墓場

しかし結局パラドックスによって剪定されたデッドプールとウルヴァリンが虚無空間に飛ばされて愉快な不死身バイオレンスバトルの後、これまでのフォックスのマーベルヒーロー達がサプライズ登場してくる。

自分の世界からただ1人だけ救われTVAへと勧誘されるというストーリーが、人気があったから20世紀フォックス作品からMCUでの続編が許された「デッドプールシリーズ」の現状とそのまま重なる様でここもめちゃくちゃメタ的で面白い。

MCUドラマシリーズ「ロキ」では神聖時間軸からはみ出したせいで、TVAに剪定された者たちが向かう廃棄場所として使われていた虚無空間を、20世紀フォックスがディズニーに買収された事によるゴタゴタで白紙になった企画や、最早みんなの記憶から消えつつあるアメコミキャラクター達の墓場として機能させているのがとても上手いし、そんなキャラクター達が大暴れする後半の展開はめちゃくちゃ熱かった。

デッドプールというかライアン・レイノルズからの20世紀フォックス作品のダメだった所への愛のある「イジリ」と、共に映画を作ってきた「敬意」が作品全体に溢れていて、笑いながらもちょっと泣けるバランスでメタ的に描かれていた。

個人的には何と言ってもチャニング・テイタムのガンビットの登場が本当に熱い。
チャニング・テイタム本人も企画が頓挫してトラウマになっていたガンビットを、同じく苦労の末にデッドプールを成功させたライアン・レイノルズが決して何も無かった事にさせない様に見せ場を作る姿勢に感動してしまった。
最後の殴り込みでのガンビットのアクションシーンは実現出来なかった夢を見ている様で個人的には今作で1番の号泣シーンだったと思う。

他にもジェニファー・ガーナーのエレクトラ(元夫のデアデビルへの冷たい態度の味わい深さ)やウェズリー・スナイプスのブレイド(「これまでもこれからもブレイドは俺1人」というセリフを聞いた後のデッドプールの顔・・・)、そしてダフネ・キーンが演じるローラ。
特にローラは「ローガン」の公開から比較的記憶にも新しいので、あの後虚無空間へと彼女が送られている理由とかよく分からないけど、成長した彼女とウルヴァリンとのやりとりはグッと来てしまう。ちゃんと「ローガン」のテーマ曲がうっすら流れるのも切ない。
ラストのホームパーティーのシーンは「ローガン」では見れなかったハッピーエンドを見てるみたいで、やっぱり泣いた。

もちろんクリス・エヴァンスの登場もかなりサプライズでビックリしたし、「マルチバースとはいえこんな映画の為に(失礼)キャップ役で復帰して良いのか?」と、思ってたらそっち!で案の定爆笑。(エンドロールで必要以上にクリエヴァのシーンが入っているの知らない人の為への説明として優しい)
なかなか無残に殺されたけど、キャップとしてあんだけ活躍してたし、他の虚無空間にいる俳優達に比べたら冷遇されるのも仕方ないと納得。

デッドプール

MCUに移ってきた訳だけど、物語的に前作からの続きになっているのは安心した。
彼を取り巻く環境がこれまでとは大きく違うのでどうなるのか少し心配だったけど、あまりに不幸過ぎる生い立ちが今作でもしっかり根底にあるから茶化し俯瞰した目線でしか物事を見れない哀しさが、笑いの中に少し感じるバランスになっている。
ヒーロー的にキャップに対してはリスペクトがあるっぽいのも自分を犠牲にして命を捨てられる所に憧れがあるからなのかもしれない。

ロキのドラマの設定だと時間の流れを乱す、はみ出し者が剪定される訳だけど、虚無空間に来がちなキャラクターと、あまり来ないキャラクターが居るのが面白い。
ノヴァの話だとウルヴァリンが虚無空間に来るのは貴重っぽいのに対し、デッドプールはめちゃくちゃ大量にいるのが笑える。
虚無空間はロキしかり、デッドプールしかり、本心や行動が読めないキャラクターの溜まり場になりがちっぽい。
あとレディ・プールを演じたのがライアン・レイノルズの奥さんのブレイク・ライヴリーだったのだけど、マスク取らなくてもプロポーションだけで分かるのが凄い。

MCUに何故彼が必要なのか?何故ソーが泣いてたのか?(ただギャグの可能性もあるけど)等、おそらくこれでデッドプールの出番は終わりという事は無さそうなので、今後の出演作品も楽しみ。

ウルヴァリン

「ローガン」でウルヴァリンの物語はある意味完璧なフィナーレを迎えた訳だけど、最近のMCUはマルチバース設定が当たり前なので、当然今回のウルヴァリンは別世界の彼という事になる。
しかもウルヴァリンの中でも一番惨めな存在であるというのが面白い。
X-MENに入らなかった事で他のX-MENを死なせてしまった世界のウルヴァリン。
それ以外はこれまでの映画シリーズのウルヴァリンと同様であると考えて良いっぽいのが、良くも悪くも都合が良い。

このウルヴァリンもデッドプールと同じく「ヒーローになれなかった人」で、その罰として自らを苦しめ続ける為に、着ることが無かったヒーローコスチュームを常に着ている。
そんな彼が終盤で今度こそ世界を救うヒーローになる為にマスクを被って闘う所はめちゃくちゃ熱い。

ただその闘う相手がデッドプール軍団というのが気持ちが上がりきらない気もしていて、ワンカット風の撮り方とかめちゃくちゃ面白いけど、結局殺しきれないし、英雄ピーターの登場で平和に解決してしまうし、見せ場としてのサンドバッグにしかなってないのがちょっと微妙な気持ちになった。

あと映画「ローガン」自体も正式なX-MENの世界観の続編じゃない作品という設定だった気がするのだけどその辺はどうなんだろか。(監督のジェームズマン・ゴールドがインタビューで話してた。)
この映画の解釈だとウルヴァリンの物語の正史はローガンという事になっているっぽいし、デッドプールと同一世界線というのも結構ビックリした。

ウルヴァリンといえば、ヒュー・ジャックマンが上半身裸になるシーンが定番だけど、今作は「なかなか脱がないなぁ、やっぱりヒュー・ジャックマンも年だしもう脱ぐ仕事はしないのかなぁ」と思っていたら、最後の最期にしっかり脱いで世界を救う展開になって安心した。

カサンドラ

一応今回のヴィランという事になるカサンドラを奥深くエマ・コリンズが演じていたが、とても魅力的だっただけに食い足りなさも感じた。
チャールズとの関係性の悪化等が示唆されていたと思うのだけど、正直なんであそこまで悪の女王みたいな立ち位置になってしまったのか、あんまり納得出来なかった。
ウルヴァリンの説得によって改心し二人を助けてあげたかと思いきや、結局パラドックスを利用して虚無空間以外の世界を全て破壊するという悪行に手を染めだし、最後は木っ端微塵になってしまったのはどういう気持ちで受け止めたら良いのか微妙な気持ちになった。
というか、虚無空間の物資って何かのはずみで他の世界から送られてくるから成り立っている訳だし、他の世界を消したら虚無空間での生活成り立たないのでは?何がしたいんだろか?と思いながら観てしまい、良いラストシーンなのに色々とノイズになってしまった。

それと今回は吹き替えも観たけどそちらも素晴らしかった。
英語が分からないのでチャニング・テイタムの訛り具合よく分かってなかったけど、吹き替えでのあまりの酷さに笑ってしまった。
あとクリス・エヴァンスの吹き替えがキャップの中村悠一ではなく、当時ヒューマントーチを吹き替えしていた神奈延年にしているのとか細かいけど好感を持った。

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