「SISU シス 不死身の男」の感想(ネタバレあり)
なめてた相手が殺人マシン映画なのだけど、製作がフィンランドという事で最新のアメリカ映画とかとは違うテンポ感でそれが独特の味わいになっていて面白かった。
こういう映画では珍しく主人公の過去がほとんど語られないのも面白いバランスで、伝説のソルジャーであり家族を殺されたエピソードとかは、敵からの情報やさらわれた女性のセリフで説明はされるのだけど、本人はほとんど自分の過去については語らず実際は何を考えて殺人マシン化したのかは全く分からない。
ただ金を掘り出しそれをお金に変えたいという目的のみが描かれる。
ただ本人の体に刻まれた傷や、戦闘になった時の顔、痛みに耐え我慢に我慢を重ねる忍耐強さ、等彼のアクションや表情によって人となりを伝えてくるような映画的な語り口が凄く良かった。
冒頭から家族を失った彼が何故1人金を掘っているのか?とか最後まで観てもよく分からなかったのだけど、孤独に黙々と忍耐強く金を掘り、犬(可愛い)や馬と仲良く過ごしている時が彼にとって特別な時間として描いている感じがして、だからこそその孤独の中で得たモノを奪おうとし、犬(可愛い)に銃を向けるナチス兵達の無神経さに遂に堪忍袋の緒が切れて、頭の横からズッポリナイフを突き刺さす瞬間のカタルシスが最高だった。
その後機関銃や戦車などどんどん敵の暴力性がエスカレートして行くのだけどそれに自分の身一つで対応し、怒りと根性で敵を殺しまくりながら映画としてどんどん熱を帯びてくるのが観ていて楽しい。
あと主人公が戦闘の度に結構な怪我をしているのだけど、その治療描写がどれも本当に痛そうで思わず声が出そうになった。
こういう描写で彼が超人ではなく血が流れるし痛みを抱えちゃんと死ぬ人間である事を示している。それなのに殺せなくて、敵からすると何度も殺せそうで殺せなくてどんどん怯えていく感じが面白い。
悪役のナチスの人達も台詞などで説明不要な位、見た目で高圧的だし小汚ないしザ・悪役という雰囲気。しかもほぼ全員が絶妙に頭が悪くて、こんな馬鹿共に好き勝手に支配されている感じが凄く嫌なだけに、どんどん無慈悲にそれでいて不謹慎にどんどん殺されていくのが、こういう映画ならではの爽快感がある。
個人的には前半の地雷投げられて汚い花火みたいに人が死ぬシーンがお気に入り。
敵の隊長が何とも味のある顔で何となく日本でいうと頭のおかしい役の時の宇野祥平みたいな雰囲気があって絶妙な不穏感。
色々頑張っていたけど最後の死に様のテンションの高さに笑った。
連れ去られてきた女性達のキャラクターも良かった。性的に搾取されたであろう描写や地雷原の中前を犬の様に歩かされるシーン等がかなり胸糞悪いだけに最後にマシンガンでトラックの中のナチスを皆殺しする所や、副隊長的なキャラを戦車に括り付け走ってくる所はすごくスカッとした。
あと飼い犬がひたすら可愛い。
どこからともなく主人公の前に現れる度に思わず笑みが溢れる。
ナチス側の犬達も主人公があえて殺さない配慮をしているのが良いディテールだった。