「FLY!/フライ!」の感想（ネタバレあり）

久しぶりの映画館での鑑賞だったのでテンション上がって観たけど、短い上映時間でもしっかりクオリティの高さを観せる「イルミネーション」は流石。

冒頭の絵本っぽいビジュアルから悪趣味な結末になるお話しが、何ともイルミネーション作品らしくて笑う。
そしてここで他の生き物がいかに怖いのか？という脅しがあるから後のサギのエピソードの不穏さがより際立つのが上手い。

飛び立つ際の映像的なカタルシスはさすがイルミネーションのアニメとしてのクオリティの高さを感じた。
そのままUSJのアトラクションになりそうな臨場感のある映像表現は映画館の大スクリーンで観る価値はあったと思う。

旅立ってすぐに嵐にあい立ち往生している所に現れるサギ夫妻は、悪魔のいけにえみたいなホラー映画的な演出がめちゃくちゃよく出来ていて笑ってしまう。
大きな目でギョロギョロ覗き込んでくるのがマジで怖いし、長い足の動かし方も不穏。
多分悪人に見せかけて良い人、というオチは予想出来るのだけど不穏過ぎてギリギリまで本当は罠なのかな？と感じさせる演出も巧みだった。

あと一見ユートピアに見える中盤の豪華過ぎる養鶏場のシーンとかも、天国過ぎるのが逆に不安になる感じで、ちょっとミッドサマーとかを思い出す不穏さが良い。
ここがあるから本当の楽園であるジャマイカの森がより際立つ感じがした。

あと中盤主人公夫婦が絆を深めるダンスシーンとか馬鹿馬鹿しくて笑ってしまったのだけど、ラストに再度繰り返されるのは熱くて良い。
こういう最初の方でのしょうもないギャグとかが中盤で重要な展開で役立っていくのとか、ここもイルミネーションのアニメ作品らしさが出ている。

あと熱いシーンで言うと、そこまで出しゃばることを怒られていた息子が、自分で考え、旅で出会った色んな羽を付けて両親を助けにくる所は名場面だったと思う。
見た目的に鮮やかだし、彼が大人になった事を示すカタルシスがしっかりあったし、ファミリー映画としての子供よ成長描写としてバッチリだった。

ただ正直気になった所も多かった。

主人公の背景の描き込みが圧倒的に少ない。
なぜ彼はそこまで保守的な考えに至ったのか？という部分は描かないといけないと思う。
そこが弱いので、旅する事を諦めたひとりぼっちのおじさんが寂しそうなのを見て考えを180度変えるのが、何とも薄っぺらい。
その後はもう旅をする事に抵抗が無くて、急に前向きになっていく流れが急足過ぎて、正直情動の動きがついていけなかった。

あと悪役になるシェフのキャラクターも濃くて面白いっちゃあ面白いけど、人間としてあまりにリアリティが無くちょっとやり過ぎだと思う。
あんな特定のカモを捕まえるためにヘリコプターまで出してあそこまで必死になるのはかなりやばい。

そんな感じで全体的にキャラクターはみんなあまり深みは無く、凄く記号的。
キャラクターの掛け合いは表面的で楽しいけど、あくまで子供向けで個人的には物足りない印象。

あと日本語吹き替えで観たのだけど、結構良かったと思う。
特におじさん役の羽佐間道夫はかなりロッキー感のある話し方なのに、内容がめちゃくちゃ根暗というギャップにめちゃくちゃ笑った。