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「BLUE GIANT」の感想(ネタバレあり)

原作は未読だったけどめちゃくちゃ面白かった。物語がちょうど今回の約2時間の中に収まっている感じがして、映画としてエピソードの切り取り方が見事。

それぞれが自分の人生を全てを乗せる様な圧巻のラストの演奏シーンはとても感動した。
アニメーションとしてのクオリティも凄くて、3DCGや音楽に合わせて熱によって溶けていく様な抽象表現等も凄まじくエモーションがあったし、原作漫画では表現しきれないけどアニメ映画にする際に何より重要になってくる音楽も本当に素晴らしい。
上原ひろみが手がけたオリジナルの楽曲の数々で音楽映画としても最良の形で見事に成立させていた。

音楽映画としての力

本当に馬鹿みたいな感想ではあるのだけど単純に映画音楽として本当に素晴らしいと思った。
楽曲だけだと実際にどれ程の事をしているかは僕を含めジャズに詳しくない人には分からないと思うのだけど、登場人物の心情や熱量にシンクロしている様に観える映画音楽としての手腕がめちゃくちゃ凄い。音楽担当の上原ひろみと、その楽曲の活かし方を考え抜いたアニメーションのクリエイターや監督がとても良い仕事をしていた。

途中に入る3DCG描写とかはちょっとちゃっちく見える所もあるのだけど、そういう粗さを楽曲の素晴らしさと熱量で押し切り感動させる感じが劇中の主人公達がやろうとしている事とリンクしてくるみたいで逆に味わいに感じる位好きになってしまった。

僕も含め、これを観てからJAZZの良さを知らなかった人が興味を持つきっかけになると思うし、そういう意味でも意義深いと思う。

いかにも主人公という感じの主人公で、精神的に全くブレない人物なのでだんだん彼の周りの人達のドラマへと移っていく感じ。
「世界一のJAZZプレイヤーになる!」という目的が大雑把でありながら明確で、それほど葛藤も感じてない描き方だし、下手するとサクセスストーリーの主人公という記号にも見えそうなのだけど、彼がステップアップしていく物語のテンポが気持ち良くてとても見応えがある。この辺は原作の語り口が上手いんだろうなあという感じがする。
それに加えて今回の映画版では彼の音楽の熱量の表現が素晴らしいので、それがまたそこで生きている人間としての厚みをより増している様に思えた。
そしてそんなブレない男だからこそラストのライブシーンで思わず感情的に涙を見せる所にかなりグッときた。

演じた山田裕貴は声優としても素晴らしかったし、本人の真っ直ぐな雰囲気が大というキャラクターにとてもハマっていたと思う。

沢辺

自分にも人にも厳しく技術優先で他人を見下しがちなのだけど、それ故に後半で彼が一番苦しい立場になっていく。
でもそんな傲慢さが全面に出ている前半部でも初めて大の演奏を聴いた彼が涙を流すシーンはグッとくる。ここは観客も大の演奏がどれ程なのか分からないのだけど、技術優先の彼が感動しているからこそ大の演奏の凄さを信じる事が出来る様になっていて作劇的にも上手いと思う。

「Jazzはずっと同じ人間で組む音楽じゃない」というセリフをお互いを利用して自分が成り上がる為に必要だから発していたのだけど、ラストのライブで、ここでの時間は終わるけどその短くてかけがえのない経験がお互いを人生を高め合う事が出来る事の喜びへと意味が変わってくる感じが本当に素晴らしくて、涙なしで観れない。
というか、短くても同じ時間を共有して道を分かれてお互いの行き先の無事を祈るというのが人生での人との出会いそのものだし、誰にでも深く刺さる普遍的な感動がある。

玉田

最初は東京に初めてきて見るもの全てが新鮮な大の目線で始まっていくのだけど、途中から初めてドラムに挑むことになる彼に観客の目線が自然と移っていくのが良かった。

大がどんどん超人的なメンタルになっていくのでどこまでも地に足が着いた彼の物語はとても重要で、スキルがない分ある意味で彼の「一生懸命さ」を受け入れて物語が進んでいくのがとても感動的だった。
ラストのソロの見せ場の所は、彼の集大成的な演奏シーンになっていて、まあ観ながら泣いてしまう。

3人の中で彼だけが未来のインタビュー映像に登場するのだけど、今は音楽を演奏する様な仕事をしていなくてもその時の熱い経験が彼の人生を支えている様で、映画が見終わって思い返すとより感動が増してくる。

そんな感じであまり期待せず観たのだけど、めちゃくちゃ熱くて面白いアニメ映画になっていた。
観終わってすぐにサントラをマイリストに入れた。

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