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「破墓/パミョ」の感想(ネタバレあり)

作品比較のためにナ・ホンジン監督の「哭声/コクソン」や、同じくナ・ホンジン製作、バンジョン・ピサンタナクーン監督の「女神の継承」のネタバレを多少しているので、ご注意お願い致します。


「墓を掘って改葬しようとしたらヤバイもんが出てきてエラいことになる」みたいな予告を観た時点でめちゃくちゃ面白そうで、楽しみにしていた。

こういう悪魔や呪い的なモノに対して祈祷等で対抗する映画で言うと僕の大好きなナ・ホンジン監督作品の「哭声/コクソン」や、同じくナ・ホンジンプロデュースの「女神の継承」とかを思い出すけど、そちらはお祓い的な不明確なモノの効果が映画を観終わってもハッキリせず、人間側のルールが全く通用しなくて怖くて、結局実は最初から詰んでた様な、ものすごく嫌な後味こそを楽しむタイプの作品だったと思う。

それに対して今作は割とルール設定がしっかりしてるし、ラストの方の化け物退治的なお話の飛躍の仕方とかがめちゃくちゃ面白いし、結構スカッとする終わり方なので、かなりエンタメ度が高めの作品になっていた。

文字通り掘れば掘るほど面白い展開になっていくストーリーに引き込まれた。
わらわら集まってくる狐(めちゃくちゃCGっぽい)、気持ち悪すぎる蛇、そして立てて埋まってる棺等、どんどん不吉なアイテムが出る度に、ビジュアルだけでこの先の物語のヤバそうな展開を予感させていく。

最初の金持ち家族の依頼の時点でイヤーな雰囲気を醸し出している演出の数々とかがいちいち不穏だし、何かそれぞれが企みのありそうな金持ち家族のドロドロしたミステリーホラー物語が既にめちゃくちゃ面白くて、やっと解決したと思ったのに、朝鮮半島全土の災いと繋がるもっとヤバイ悪意の固まりの呪いが出てきて、どんどん事態がエラい事になり最終的に鬼とのバトル映画化していくジャンルの変わり方に目が離せなくなって最後までハラハラ楽しんで観れた。

あと何と言っても主人公チームの只者じゃない佇まいもバッチリで、この4人のチーム感こそが一番の魅力の映画だったと思う。

巫堂のファリム。
日本語が出来る事を示す冒頭のシーンから絶妙に嫌な雰囲気が出てて、後に明らかになる展開を示唆している。
本人達のナレーションで自己紹介していく所などちょっと説明的だけど、漫画的なワクワク展開になっていく今作には合っている気がした。

コンバースの靴紐を結んでもらいながら始まるお祓いシーンとかも、俗っぽさとカッコ良さが合わさってる感じで、この辺の設定のキャッチーさがまた良い味になっている。
ドンドコ太鼓に合わせて踊る姿がとても美しくて華があった。

その弟子のボンギルがまたビジュアル的にケレンの固まりという感じで、まあカッコいい。
演じているイ・ドヒョンの美しい佇まい、腕の入れ墨、ヘッドホン等、こちらも少年漫画的な要素の入れ方が観ているだけで楽しい。
内臓抜かれて絶対死んだと思ったけど、回復して良かった。

風水師のサンドク。
観終わるとめちゃくちゃぶっ飛んだゴーストバスター映画だったと思うのだけど、しっかり映画的な重みを出しているのが、今作のほぼ主役であるチェ・ミンシクの名演だと思う。

最初からこの4人の中では圧倒的に円熟味があってリーダー的な風格を体現して、とても頼りになりそうだからこそ、「この墓の場所はめちゃくちゃヤバイ」というのを、セリフ無しで表情をどんどん曇らせる演技だけで表現していき、観てるこちらの気持ちをどんどん不安にさせていく感じが凄い。土食ってペッのシーンが最高に好き。

ラストのこれまでの風水の知識で敵の弱点に気付き勝機を見出す展開はめちゃくちゃ強引だけど、血に濡らした木の棒で敵をぶった斬る流れとか、少年マンガみたいに熱くて最終バトルの盛り上げ方が最高だった。

葬儀師のヨングン。
コメディ映画とかではお馴染みのユ・ヘジンが演じているのだけど、彼がいるおかげで映画がそこまで暗くならず、今作が万人受けしている大事な要素だと思う。
ずっと軽口を言ってる感じなのだけど、チェ・ミンシクとのおじさんコンビが意外な組み合わせだけど良いバディ感が出ていたと思う。

最初はビジネスで協力しあっていたこの4人がお金ではなく、後半では使命感で絆が出来てチーム化していく流れが熱い。
事件が解決して、ラストで血の繋がりじゃない絆で、彼らが家族になった事を示す様な終わり方も綺麗だったと思う。

気になった所も多少あって、日本からの悪意によって朝鮮半島を脅かしていた的な日本描写部分とかは特に気にならないのだけど、日本語のシーンが全体的に大分いい加減なのが、ちょっと戸惑った。
特にラスボスである鬼武者の変な日本語が下手くそで、かなり話が飲み込みづらくなった印象がする。

あと「鮎用意しろ」って言ってたの、唐突過ぎて何かの比喩かと思っていたらマジでその後、撒かれた鮎を拾ってボリボリ食べてるのが直球過ぎて笑っちゃった。

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