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おひとりさま族の感想(ネタバレあり)
Amazonプライムビデオで鑑賞。
何も知らないで観たけど不思議な味わいの作品でとても面白かった。
主人公であるジナが他人と出来るだけ関わらない様に生活している様子をじっくり撮っていくのだけど、彼女が自分の殻に閉じこもっているのを示す描写が見ていて面白い。
移動中は常にイヤホンをしてスマホで動画を見て、仕事のお昼休憩では職場からかなり離れた場所にあるおじさんとかしかいないそば屋?で、そこでもまた動画を見ながら黙々と食べているだけなのに、彼女のおひとり様ライフに引き込まれる。
このジナ役のコン・スンヨンがとても印象的で、恋愛展開とか皆無だし、常にダボっとした服装で性的な雰囲気を一切出さないドライな役なのだけど、めちゃくちゃ美しい顔で表情一つ一つに華があった。
無愛想だけど魅力的な何とも不思議なバランスの主人公になっていたと思う。
そんな静かに暮らしたい彼女に対して、周りの状況が少しずつ変わっていく事で、段々と心理状態が変化していくのを、さりげないけど丁寧な描写で映画的に見せていく作品になっていた。
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隣の孤独死した男性のエピソードだけリアリティラインがちょっと違う感じで、それがまた味わい深いし、ジナは意識的じゃないかも知れないけど彼の死をきっかけに今の自分の回りへの意識が変わっていっていく。
どういう人間なのかよく知らないけど、彼女にとってはこのままの孤独の行く末を彼に見ている感じで、だからこそ彼女にだけ幽霊的な存在になった彼が見えるし、新しく引っ越して来た隣人の死んだ彼に対する反応とかで彼女自身よくわからない苛立ちを抱えていく様なシーンが、ある意味自分への世間からの視線の様に感じている気がした。
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その他、彼女を掻き乱す要因として一番大きいのが家族を置いて浮気で出て行って戻ってきた父親の存在で、今はほとんど会ってはいないけど、病気だった母親の様子を見るために設置したカメラをそのまま母親が亡くなった後の父親の行動を監視する為に、ずっとスマホで覗き続けるのとか、本人は意識的なのか分からないけど、かなり病的で歪んだ関係性だと思う。
とても愛憎入り混じる歪んだ家族との向き合い方で、普通に見えてめちゃくちゃ複雑なのだけど、最終的にその歪みも受け入れた家族関係を肯定する様なラストが不思議な爽やかさがあって好き。
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そしてもう1人ジナの心を乱してくる存在として、仕事で指導する事になった誰かと一緒に居ないと不安になってしまう後輩なのだけど、この娘とのやりとりがとてもコミカルで面白かった。
ジナからすればこの上なく面倒くさい存在だしある意味無神経なのだけど、彼女側にも挫折があって、自分の事でいっぱいだったジナの考え方が変わっていく。
彼女に寄り添う事は出来ないけど、自分の気持ちと、彼女に対してちゃんと「さよなら」を言うラストはジナ自身の成長をしっかり感じれて、とても感動的だった。
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ジナがずっとスマホで見ている動画や、TVをかけ続けないといけないというのが、後半実は彼女が告白する孤独が平気じゃないからこそというのが明らかになる展開とかも、観ているこちらもハッと気づく感じで、彼女の弱さの部分がより胸に来た。
そんな感じで静かだけど、だからこそ映画的にグッとくる場面があったし、全然知らない作品だったけど観れて良かった。