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「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」の感想(ネタバレあり)

土曜のお昼の回に鑑賞。めちゃくちゃ混んでた。
おそらく2018年から日曜の朝9時にやっていたアニメの「ゲゲゲの鬼太郎」を観ていたと思われる子供連れで観にきてる親子も多かったけど、今回の話は明らかに大人向けのミステリーホラー的な要素が大きいし、流石に直接的なシーンは無いけど近親相姦とかドロドロな要素もあったりで子供に見せて良いのか、、、と勝手にハラハラしてしまった。

「ゲゲゲの鬼太郎」は、子供の頃、昔のテレビシリーズを再放送で何話か見たのと、今回の話につながりのある「墓場の鬼太郎」の原作の1巻分くらいまでを以前読んだ位であんまり詳しくなかったのだけど、今回の映画の予告を何回か観ておどろおどろしい雰囲気が結構面白そうだったので鑑賞してみた。

戦後間もない日本が舞台で死にそびれた戦争帰り主人公がどう生きていくのか?と悩んでいる感じとか、こないだの「ゴジラ-1.0」とかに近い気もする。
ただこちらの方が深みを感じるのは、主人公水木に原作者である「水木しげる」の戦争体験が投影されてる所だと思う。さすがにそこまで残酷なシーンは無かったけど夜な夜な主人公が見る悪夢が水木しげる本人が漫画に描いた地獄と重なる。

そんな壮絶な戦争体験の末に自分本意に生きようとしていた主人公がゲゲゲの親父と共に「人間を搾取する側」の存在を倒し、次の世代へ希望を繋げる様なラストが凄く良かった。

その後の現代パートでしっかり戦争が終わっても相変わらず日本が良い国になっていないと明言しているのも真摯で良かった。
同じ事の繰り返しかもしれないけどそれでも尚、過去の惨劇の記録を残していく事の重要性を提示しているのもグッとくる。ラストのゲゲゲの親父と時弥との実際はお互い変わり果てた姿なのだけど、あの日の姿に戻って「日本の現在」を憂うシーンはとても切なくて素晴らしかった。

あと何と言っても今作の魅力は主人公水木と若きゲゲゲの親父が最初お互いに警戒しながらも段々と信頼して相棒へと変わっていくバディ映画の要素だと思う。
成り上がりを目的として生きてきた水木がゲゲゲの親父を助けに戻るシーンが熱いし、最終決戦の場へ2人で走り出すシーンは完全にバディ化が完成した感じでめちゃくちゃ感動してしまった。
この2人を演じた木内秀信と関俊彦の声の色気も素晴らしかった。

アニメーションとしてアクションシーン等の見せ場もかなり力が入っていて、ゲゲゲの親父が普通に身体能力が高く肉弾戦がめちゃくちゃ強いのとか、脱力気味な普段の佇まいからメリハリがあってカッコいい。
あと昭和の街並みや列車の客席の雰囲気とか、その当時を再現した背景とかもめちゃくちゃ素晴らしく表現されていた。

その他、タバコや酒を使った演出力も高くて映画的。克典から貰った高級な葉巻を貰って吸わせてもらう煙に咳き込んで吐き出してしまい、それでも捨てられないシーンは彼の身の丈に合わない野望との折り合いのつかなさを示せていたし、それに対してゲゲゲの親父に最初心を開かないで渡さなかったタバコを酒を酌み交わしたタイミングで渡し彼が心を許してるのが自然に伝わってくる描写になったりしていて、説明セリフに頼らない映画としての演出力の高さを感じた。
一家の悪行を知った時のそれまでそこで食べさせてもらったものを全て吐くのも、心の底からの嫌悪感を表現されていて良いシーンだった。

エンドロール「墓場の鬼太郎」の第一話っぽいシーン繋がっていくラストは原作リスペクトで感動もあるのだけど、同時に「いや、だったらこの後の惨劇考えると全然ハッピーエンドじゃ無いだろ、、、」という気持ちにもなった。

どちらかというと今回のアニメシリーズである鬼太郎の第六期の第一話の前日譚という感じで(そちらで鬼太郎が人助けをしている理由が世話になった水木という人間の影響と軽く説明されてたし)、この後水木が地獄に落とされて水木の母親が発狂するシーンとかは無さそう。
なのでこれは「墓場の鬼太郎」とは別の世界線に繋がる前日譚として脳内で変換が必要だと思う。

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