「イコライザー THE FINAL」の感想(ネタバレあり)
イコライザーシリーズ最新作。
ザ・ファイナルって言うから、最終回みたいな展開になるのかと思って心配してたけど、全然続けられそうな終わり方で安心した。
Twitterでよく「寅さん」に例えられてるけど、本当にそれくらいの感じで長く続けて欲しい。
2で敵の強さ的にはいくところまでいった感じがしていたのでどうするのかと思ってたが、今回の敵も確かにやっている事は救い様のない極悪非道っぷりだし万死に値する奴らなのだけど、敵としての張り合いは感じなくて、1、2を観ていたら大体の人が「こんなヤツらじゃ絶対マッコールさんに勝てる訳ないだろ、、、」と予想出来る感じで、実際「闘い」というよりは一方的な「殺戮」に近い。
もちろん世界中の全ての悪を根絶する程の力はマッコールさんには無いのだけど、「自分が愛する人達」という範囲内での悪事に関しては赤子の手をひねる様に解決していくのが見ていてスカッとする。
今回の敵に言う「お前らはタイミングが悪かった」のセリフが彼のヒーローとしてのスタンスを示していて、自分のいる時間に鉢合わせた事で街のダニ共を掃除していく。
今更だけど、とにかくこのシリーズはマッコールさんの暴力描写の異常さが見所だと思う。
そこまでゴア描写があるとかではなく、マッコールさんが強すぎ敵との戦力差があり過ぎて殺す事に余裕がある為、ただ「殺す」のではなく「苦しめて殺す」というのが本当に執拗で、観た誰もが思うだろうけど最早ホラージャンルになっている。
冒頭のワイナリーでの殺戮シーンから完全に悪役目線のホラー描写になっていて、親玉が自分のアジトでの子分たちの死体が転がる惨状に絶望に感情移入する様な感じ。
メインの舞台になる町では気の良い魚屋さんがみかじめ料を払えない所から放火され、その火事を報告をしたせいでマッコールさんを助けてくれた警官が脅され、遂に動き出す事になるのだけど、レストランで悪事を働くチンピラ弟を見るマッコールさんの視線が怖すぎて思わず笑ってしまった。
そこからマジで「赤子の手を捻る」とはこの事みたいな場面で追い払った後、敵が一旦落ち着き「あの野郎、殺してやる!」と計画した瞬間に無惨に殺される場面はスカッとすると同時に「怖っ」とも思う独特なバイオレンスバランス。
チンピラ弟を殺す瞬間にめっちゃ顔近づけてジーっと見ながら息絶えるのを確認してるのが狂気を感じる。
大ボスである兄を殺す直前に冒頭の車椅子のおじいちゃんを殺して見せしめにしてたのが、そのまま返される様に恐怖におののく死体が寝床にぶら下がる場面は本当に気持ち良い「ざまあ!」というシーン思わず拍手したくなった。
しかしその後優雅に犬の散歩でもする様に、苦しみながら息絶えるまで後ろから付いてくるラストシーンは本当に怖い。
ここで敵の親玉からの「お前は誰だ・・・?」という繰り返しの問いかけに対して、自分の喋りたい事だけ話しかけてくるのが、この後死んでもモヤモヤさせてる感じでマッコールさんから「お前みたいな奴は死んでも成仏させないから」みたいな強い意志を感じる。
今回の敵を殺す場面、全部通じるのだけど「俺はいつでも受けて立つ」みたいな「待ち」の姿勢を見せておいて、その直後に敵の準備の前に奇襲をかけるのが、普通のヒーロー映画とは違うマジの「殺しのプロ」っていう雰囲気がして最高。
そんな圧倒的な強さも見せてはいるのだけど、人を殺す以外は本当に人の良さを見せていて、警官の娘さんにクッキーもらったり、魚をまけてもらったり、若いと女性と屋台に行った時の紳士さや、街の人との交流との場面はヒューマンドラマとして見応えがあり「良い場面だなぁ」と思える瞬間が何度もあった。
この「人の良い暖かさ」と「暗殺者の冷酷さ」みたいな両方ともに説得力あり、これがマッコールさんなのだ!と異様なバランス感で厚みを持たせるデンゼル・ワシントンの演技力の高さが本当にハンパがない。
冒頭のアクションシークエンスが実はマッコールさん目線で考えても何気に不穏で、悪人を皆殺しにした後、子供からの銃弾で致命傷を負うし、その傷によって自害しようとしたりして、ここで彼が無敵の殺人マシンという訳ではなく、弱点もあるあくまで人間というのも示していたりするので、やっぱり死ぬ時は死ぬんだよなと、頭の奥に常にかすめるし、なのでセガール映画とかとは違って主人公の生死の緊張感は、ある程度感じるバランス。
役者さん的にはデンゼル・ワシントンに敵対するクズ悪役の役者さんもかなり良くて、悪事をする時の調子こき顔が素晴らしい分、「この後酷い目に遭うぞ、、、」という、気の毒さ込みの期待値が高まっていく。
今回のメインの悪役であるクズ兄弟の絆を示す場面とかは結構丁寧に描いているのが人間味も感じて絶妙なバランス。
マッコールさんが「殺人鬼だけどめちゃくちゃ良い人」という歪んだバランスの人間なのと同じく「どうしようもないゴミ野郎だけど兄弟愛は本物」というバランスになっているのが面白くて、それぞれのキャラクターを人間臭く描くのが監督であるアントワーン・フークアの味が出ている気がした。