「サイコ・ゴアマン」の感想(ネタバレあり)
今劇場公開中の「ルックバック」の原作者の藤本タツキ先生が公開当時「今年観た映画で一番面白い!」とコメントしていて、ずっと気になっていたのだけど、Amazonプライムビデオで配信されていたので、この機会に鑑賞。
「ルックバック」で感動した人は、是非観るべきだと思う。(知らんけど)
この映画独特の倫理観が笑えた。
取り返しつかない肉体の破壊、欠損、変化を子供だろうが容赦無く描くのだけど、それを大した事ないように、というかむしろ笑えるバランスにしているのが凄い。
しかもゴミの様に身体を変化され生殺し状態の人の「殺して・・・」みたいな声とかも無視して、しょうもない事ばかりしてる主人公達のブラックさも最高に酷い。
冒頭のルールがよく分からないボール遊びから(その名も「クレイジーボール」)今作が客観的な目線で構成されている映画じゃないのを示しているし、それでいてまさか最後の宇宙の命運をそのゲームによって決める展開になるとは、、、本当におバカで好き。
お話し的には主人公ミミが宇宙一最強の悪魔を甦らせてしまうのだけど、ミミがパワーの源である石を持っている為、無理矢理名付けられた「サイコ・ゴアマン」として、言う事を聞くしか無いという状況がまあしょうもなくも面白い。
どのキャラクターも絶妙に性格が悪くて誰の事も愛せない感じ。
その中でも主人公のミミがぶっちぎりで狂っていて、誰かれ構わず無茶ぶりをし続けるのだけど、目の前で人が殺されていくのを見ても、普通にサイコゴアマンに命令していく異常性が、観ていて気持ちがいいのだから凄い。
サイコゴアマンが反抗的に「今石の力で言う事きいてるけど、この後めちゃくちゃ残酷な方法でお前を殺すからな!」と終始彼女に脅すのだけど、無視して学校の人気者になる為にサイコゴアマンに芸を覚えさせようとするハートの強さが凄まじいというか、狂気。
中盤での冗談みたいな肉体変容をかまされる片想いしている男の子と、サイコゴアマンと、兄と一緒にバンドを組んで「私は最高!他のやつはクソ喰らえ!」みたいな歌を歌いながら、それに合わせてサイコゴアマンをオモチャの様に使い遊んでいるシーンが入るのだけど、意味が分からないのも含めて、この映画の雰囲気を象徴してるみたいで素晴らしい場面だったと思う。
その歌がラストに繰り返し、「愛の力」とか言って無理くり感動的にしているのとかも馬鹿だけどとても好き。
低予算ながら日本の作品からも影響を受けたという特殊メイクでの特撮描写も、結構グロテスクで味があって良かった。
クリーチャーや怪人達の面白い&毒っ気のあるデザインも観ていて微笑ましいし、必要以上にグロテスクなバイオレンスアクションも結構カッコ良い。
最高に性格の悪いミミもサイコ・ゴアマンもほんの少しだけ譲歩して、(多分)成長の様なモノを描いて映画が終わっていくのが爽やかさもありつつ、登場人物が持つ毒はやっぱりそのままで世界は終わりそうでもある、という普通の映画では考えられない倫理観で映画が終わっていくのがめちゃくちゃ笑えて最高だった。
観てるこちらの倫理観を押しつけるのではなく、あくまで登場人物に寄り添った倫理観で「例え世界が終わる事になっても、俺らの幸せは俺らで決めるぜ!」と宣言してるみたいで、とても力強い。
そんな感じで全体的には、色々とヘンテコで珍品な印象ではあるけど、笑える所でしっかり笑えるし、特撮描写も楽しかったので満足な一本だった。