「シャザム!〜神々の怒り〜」の感想(ネタバレあり)
DCエクステンデッド・ユニバース最新作でシャザムの続編第2作目。
デヴィッド・F・サンドバーグ監督
前作から変わらずコメディシーンが沢山あるし、結構ギョッとする暴力描写もあったり、アンテアの分解して再構築して移動するシーン等ビジュアル面でフレッシュな見せ場があったり、それでいて人間ドラマ描写は厚みがあってしっかり泣かせる所が用意されていて、もうエンターテイメント映画として、ほぼ言う事なしの面白さだったと思う。
改めてデヴィッド・F・サンドバーグ監督はやっぱり信用できる男だった。
そういえばメジャーデビュー作品の「ライト・オフ」からめちゃくちゃ面白かったし、次に撮った「アナベル 死霊人形の誕生」も死霊館シリーズで一番怖いんじゃないかと思う位素晴らしかった。
そして今シリーズの一作目「シャザム」は、それまで撮っていたホラー映画のイメージから180度変わりコミカルでありながら、ヒーロー映画として熱い傑作になっていた。
改めて振り返ると何撮ってもクオリティが高いし、職人監督としての腕が半端ないと思う。
個人的には「ライト・オフ」での「どういう事をすれば襲われて、何をすれば助かるのか」というしっかりルール付けがされている部分が凄く好感があったのだけど、どの映画の構成にもそれは言えて作品世界内のルール設定がとてもしっかりしているので、観ていて混乱しないし最初と最後が繋がって映画が終わっていく様な印象がする。
コミカル描写
このシャザムが他のDCEU作品と比べて圧倒的な売りになっているのは、コミカルさだと思うのだけど前作からそこもパワーアップしている印象。
ジェームズ・ガンのスースクとかもコミカルだけど、シャザムシリーズはブラックコメディ的な面白さはそこまでなくてあくまで老若男女問わず楽しめるコミカルさになっているのが凄く良い。
こないだの「アントマン&ワスプ:クアントマニア」がシリーズ特有のギャグシーン足りなかったのと、対照的だと思う。
めっちゃ融通が利かない魔法のペンが書く手紙、それを読まされるヘレン・ミレンの怪訝な表情、顔だけジャイモン・フンスーのワンダーウーマン、膝の音がする魔術師とフレディの杖奪還シークエンス、謎の燃え続けるバイオリンの使い所、お菓子に釣られた串刺しユニコーン等、思い返すだに笑顔になってしまうシーンが数えきれない程いっぱいあった。
ただそういう本当にどうでも良いギャグだけじゃなく、ドラゴンに追われて里親の両親にいきなり説明するシーンでゲイである事をカミングアウトする所の「大丈夫、みんな知ってたよ」と言って安堵する所とか凄く良くて、そんな事話してる場合じゃないというコミカルさの中に凄く良い人情味を感じる場面になっていて、ギャグの中に血が通ってる様で凄く好感を持てる。
ビリー
前回は完全に子供だったけど今回はもう18才になるというのに相変わらずおバカ感で変わってない事に安心した。
前作で実の母親への執着をやめ今の家族を大切に生きる事を決めたが、逆に今の生活からの変化を恐れて他の家族を束縛してしまっている訳だけど、この辺がそれぞれ意見の違う家族が結局争い合う事になる敵の姉妹と重なる様になっているのが何気に上手くて、彼が家族の絆を再度確かめた後、最期に闘う相手が家族を捨てた次女カリプソというのが「俺はあんたみたいにならない」としっかり線引きしているみたいで敵として向き合う必然性があったと思う。
ラストのドームでの戦いの所で家族とのやりとりの後、自己犠牲を決めて暗闇からシルエットと胸の稲妻マークが浮き出てくるカットはさりげないんだけど、「ヒーローが来る」という絵面としてめちゃくちゃキマっていて、僕はここで完全に彼の心がヒーローになった気がしてめちゃくちゃ泣いてしまった。こういう分かり易いしベタだけどセリフじゃなく画だけでしっかり胸が熱くなる映画的な盛り上げがデヴィッド・F・サンドバーグは本当上手い。
その自己犠牲で一度完全に死ぬ所まで行くのも彼のやった事の偉大さみたいな部分はしっかりうやむやにされていない気がして良かったと思う。
まあ、「私神なんでこれくらい余裕です!」っていい所全部持っていくワンダーウーマンの登場シーンはビックリしたし、観てる間「こんな感じでいいのかな?」とは思いつつ、墓から這い出た後家族みんなで抱き合う所はやっぱり泣いてしまったので負けた感じ。
家族
今回はみんなスーパーヒーローという事でビリーの主人公感が薄まりそうなのが心配だったけど、それぞれバランスよく魅力を描けていたと思う。
最初の事故で橋が崩れる中(このシチュエーションが昔懐かしい感じで良い)みんなで協力して人命救助を行うシーンがかなり好き。
こういう照れなくスーパーヒーローが市井の人々の命を救うシーンをアメコミ映画はもっとやって欲しい。
ここのシークエンスでもちろん人の命は救ってみんな偉いのだけど、橋は結局落ちてしまっていたりもう少し上手く出来た感じがするのが、子供ヒーロー故でシャザムシリーズ独自の面白さだと思う。
なんといっても今回主役級に活躍するフレディが凄く良かった。
最初のボコボコにされると分かっていながらDQNな同級生からアンテアを助けるシーンが、ラストの能力を失った彼女へと不自由な足を引き摺りなが歩み寄っていくシーンへとつながっていく構成とか、とても感動的だった。
あと今回は両親二人もすごく良かった。ついにヒーローである事がバレてしまうのだけど、そんなにショック受けずにカラッとしているの逆に良かった。
混乱するビリーと母親とのやりとりとか前作では実の母親に本当は言って欲しかった愛情を示してるみたいで凄くグッとくるシーンになっていた。
神三姉妹
MCUで言うとマイティー・ソー的な位置の人達だけど、本人達的には能力奪われたりして結構気の毒な感じもする。
ヘレン・ミレン、ルーシー・リュー、レイチェル・ゼグラーの三人を姉妹ですよ!と言い切ってくる強気な感じとかは確かに人間界では思いつきそうにない価値感覚で逆に神だからという変な説得力があった。でもこの人種バラバラの姉妹達というのが、色んな人種の子がいるビリーの家族と重なる様になっている感じ。
中盤の何千年も生きた長女ヘレン・ミレンが悪ガキに説教をかまして、結構な肉弾戦になっていく流れは爆笑してしまった。
見た目年寄りの相手に容赦なく何回も床に叩きつける攻撃をやり合う所とか絵面のインパクトが凄い。
ヘレン・ミレン自体がワイルドスピードに出たり、こういうアクション映画とかに出るの好きな感じなので本当楽しそうなのが伝わってきた。
ルーシー・リューもこんな大作で大暴れしているのを久しぶりに観れて嬉しかった。
記号的にただ乱暴な思想の悪役にならずしっかり悪の女王的な貫禄があった。
あのミニスカルック(?)も特撮感あって良い。
僕はこないだのウエストサイドストーリー等を観てなかったので今回初めて観たのだけど、三女のレイチェル・ゼグラーも凄く良かった。
何故アメリカの女子高生文化に簡単に溶け込めるのかは謎だけど、フレディとの甘酸っぱいやりとりとか観ていて楽しい。
6000年生きてて簡単に高校生男子と恋に落ちるのとかおかしい気もするけど、フレディの心の優しさに惹かれていく描き方が上手いので違和感なく観れたのは流石。
あとDCEUではお馴染みになりつつあるが、あんまり好きじゃなかったジャイモン・フンスー演じる魔術師も今回はフレディとバディ化していく展開が楽しかった。
今回も言ってる事が適当だなぁとは思いつつ、割とコミカル要員化して最後は垢抜けた格好で終わっていく流れで笑っちゃったなぁ。