夢と情熱にしがみつき続ける勇気 映画『グランメゾン・パリ』
概要
本作の概要は以下。
パリを舞台に、映画となって帰ってきた「グランメゾン東京」シリーズ。
今作も、夢と情熱に全てを賭けた大人たちの、熱い物語であった。
だが、それだけに留まらなかった本作の魅力を紐解く。
とにかく熱い!信念を曲げないことの強さを教えてくれる
グランメゾン東京は、尾花夏樹(木村拓哉)は、彼のチームはこうでなければ!
観たかったあのグランメゾン東京が、スクリーンの中にある。
尾花は、相変わらず利己的で、日本語でもフランス語でも韓国語でも、どの言語で話しても言葉尻が強くて感じが悪い。
周りに、特に職場にはいてほしくないタイプの人間だ。
それでも、彼の目はいつだって本気だ。真っ直ぐだ。
私が尾花を嫌いになれない理由はそこにあって、彼の下で働くチームが彼を見捨てないのもまた、同じ理由であろう。
尾花の内なる部分には、「この人に付いて行きたい、賭けてみたい」と思わせる真っ直ぐな情熱が確かにある。どんなに勝手な奴でも、独裁的な暴君でも、不思議なことに、裏切ることができないのだ。
本シリーズは、尾花を第三者目線で映す視点=尾花の部下視点で観ることもできる。故に、彼の部下たちが彼を見捨てない理由が、私たちにも自然と解るのだ。
とはいえやはり作られた物語なだけあり、「そんな上手くいく!?」と首を傾げるシーンがないわけではない。それでも、大人の信念や情熱は、こんな奇跡さえも起こせるのかもしれないと、そう思わされる。
大人が夢見ること、一つのことに情熱を傾け続けることのカッコよさを、改めて思い出させてくれた。
現実も正面から捉えた挑戦的な作品
これまでのグランメゾンシリーズは、パリで夢破れた尾花が、日本に戻ってミシュランの星を目指すというものだった。
それが今回、再び舞台をパリに移すのだ。
そんな時に付いて回るのが、異国の地で挑戦することの難しさだ。
本作では、異国の地での挑戦の際に必ず直面することになる現実をメインに据え、逃げずに正面から映した。
残念なことに、我々アジア人はその壁にぶつかりやすい。
本作でも、尾花に限らず同チームのアジア人が、それぞれ差別や偏見、超えられない壁の存在に苦しむ。
アジア人には、フランス料理は理解できない。
アジア人だから、認められない。
それが、料理の初手である食材の買い付けの場面から如実に現れる。
胸が苦しくなる描写が続く。
これまでのグランメゾンシリーズにはなかった視点での登場人物たちの挑戦を描いた本作は、ただ熱くてカッコいいだけではない”現実”がしっかりと映っており、より彼らの言葉ひとつ一つに重みが増していたように感じられた。
食材、食事の映し方が完璧
作中、多くの料理が登場する。
そのどれもが美味しそうで、食欲を掻き立てるとともに、尾花をはじめとしたグランメゾンチームの才能を素人にも分かりやすく感じさせるわけだが、料理の監修者を知って、納得した。
2020年に実際にフランスで三つ星を獲得した、小林圭シェフが本作の料理監修を務めているのだ。
食材ひとつ一つが鮮やかで、料理として一つの皿に乗ったそれも、美しい。
華やかな料理がスクリーンに映し出されるその瞬間も、本作に欠かすことのできない、映画の大事な見どころの一つとなっている。
物語が完結しても、終わらない人生と夢
本場パリで三つ星を獲得し、見事に夢を叶えた尾花とその仲間たち。
作品としてもそこで幕が閉じるわけだが、それでも、彼らの夢がこれで終わったわけではないのだと、そう感じさせてくれる。
彼らの次なる夢は、その星を守り続けながら、進化をしていくことなのだろう。
目標を失うことなく走り続ける姿を見せてくれた彼らだからこそ、我々はそう思うことができるのだ。
そしてその姿は、私たちに大きな活力を与えてくれる。
目標を達成しても、夢を叶えても、それで終わりではない。
むしろそれが始まりなのだと。
1997年生まれ、丑年。
幼少期から、様々な本や映像作品に浸りながら生活する。
愛読歴は小学生の時に図書館で出会った『シートン動物記』から始まる。
映画・ドラマ愛は、いつ始まったかも定かでないほど、Babyの時から親しむ。
昔から、バラエティ番組からCMに至るまで、
"画面の中で動くもの"全般に異様な興味があった。
MBTIはENFP-T。不思議なまでに、何度やっても結果は同じである。
ENFPらしい性格であると他者からもよく言われるが、文章を書こうとすると何故か、Tの部分が如何なく滲み出た、暗い調子になる。
(明るい文章もお任せあれ!)