オールスター感謝祭! 映画『スマホを落としただけなのに〜最終章〜 ファイナルハッキングゲーム』
なんじゃこりゃー!!
本作に於ける感想は、この一言に尽きる。
2018年に始まった本シリーズは、一作目から怖さと不気味さ、そして何より我々の身にも起こり得えそうなリアルさが話題を呼んだ。さすがホラー映画の中田秀夫監督作!だった。
2020年公開の『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』では、怖さがグレードアップしたうえ、凶悪犯・浦野善治(成田凌)が脱獄するという衝撃の展開で幕を閉じた。
「絶対に続きがある!」と期待を持たせてくれる、見応えのある二作目であった。
そして、ファン待望の三作目がついに公開された。
そもそも私は普段、ホラージャンルの映画は怖くて観ないのだが、成田凌見たさで一作目を鑑賞して以来、浦野の恐ろしさに病みつきになっていた。
待ちに待った三作目、ようやく時間が作れたので、公開翌週に劇場に足を運んだ。
今回もビビり散らかす予定で、ポップコーンは早めに食べ終え、すぐに目を覆えるように上着を膝の上に置いた。いざ、鑑賞!
・・・あれ?
なんじゃこりゃ!
え、待って待っておいおい!
”ある意味で”、釘付けになったと言おう。期待していたものとは全く違っていた。
本作が描きたかったのは何だろうか?
ホラー?サスペンス?人間ドラマ?ロマンス?まさかの友情ドラマ?
様々な要素が散り散りになっている所為で、本当に見せたいものがブレブレで、焦点の定まらない作品になっていた。
これじゃない感が、否めない。
本作は三作目だが、最終章でもある。
シリーズとしては今回で一応幕を下ろしたわけだが、視聴者(特にファン)は、これで幕が下りたとは思えていないだろう。
こんなハチャメチャにかき回して、あんな終わらせ方でいいはずがないと、納得しきれずにモヤモヤとした気持ちが生まれるのだ。
無論、私もそのうちの一人である。
最終章と銘打っているのも実は浦野によるトラップで、来年末あたりに、壮大な種明かしをするバージョンの、四作目が公開されるのではないだろうか。頼む…そうであってくれ!そう願わずにはいられないのだ。
一番気になるのはやはり、ロマンス要素の是非だ。
浦野は、自身を虐待してきた実母のような、黒髪ロングの女性に異常なまでに執着し、中でも富田(旧姓:稲葉)麻美(北川景子)に対しては、それが顕著だった。
それなのに、それなのになぜ出会ってちょっとの、肩くらいまでの髪の女性に惹かれるのか!?
彼が彼女のことを、一人の女性として見始めたその瞬間から、途端に浦野というキャラクターの説明が付かなくなる。
同じ傷をもっていれば誰でもいいんかい!と突っ込みたくなる。
いや、同じ境遇の人間は、彼にとっては貴重であり、特別なのかもしれない。
実際に、同じような境遇を持つ、浦野を追う刑事・加賀谷学(千葉雄大)のことを、浦野は勝手に友達と呼び、特別な拘りを見せている。
しかし、それはあくまで似たような過去を背負い、自分と同じ心の暗さを持っている、浦野にとっての”同志”的な存在に留めるべきであり、恋愛となるとちょっと違う。
こう言っては浦野に申し訳ないが、彼の恋愛は実らないから良いのであって、実りそうになると、観ているこちらは興醒めしてしまう。
視聴者は、麻美を”狂気じみた執着心でねちっこく追う浦野”に見応えを感じていたため、手近な女性と交流していく中で、”次第に恋愛感情を抱いていく浦野”はあまり見たくはなかったのではないか。少なくとも、私はそうだ。
恋愛シーンの成田凌を観ていると、映画『愛がなんだ』を見せられているのような気にすらなった。(特にキッチンに立つシーン)
とはいえ、浦野が恋をした相手もまた、気の狂った、いや、浦野に狂わされた女性であったことは、唯一、彼らしくてよかった。
本作に、一方的ではない”ちゃんとした恋愛要素”が加わったことで生まれたがっかり感は、トッド・フィリップス監督が生んだ”狂ったジョーカー”に魅せられた人たちが、ジョーカーがジョーカーでなくなる、公開中の映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』を観た時に感じる失望と、かなり近いかもしれない。
記事タイトル通り、本作は今までの二作で登場したキャラクターが次々と出てくる。まさにオールスター感謝祭だ。
本シリーズのファンにとってその展開は有難いのだが、その中で浦野が浦野とは思えないような行動をしたり、突然浦野と加賀谷の間に友情に似た何かが芽生える感動的なシーンがあったりと、内容の整合性が取れておらず、とにかくはちゃめちゃであった。
あのスマホを落としただけなのにシリーズだと思って観ると、拍子抜けしてしまうだろう。
1997年生まれ、丑年。
幼少期から、様々な本や映像作品に浸りながら生活する。
愛読歴は小学生の時に図書館で出会った『シートン動物記』から始まる。
映画・ドラマ愛は、いつ始まったかも定かでないほど、Babyの時から親しむ。
昔から、バラエティ番組からCMに至るまで、
"画面の中で動くもの"全般に異様な興味があった。
MBTIはENFP-T。不思議なまでに、何度やっても結果は同じである。
コミュニケーションが好きで、明朗快活な性格であるが、
文章を書こうとすると何故か、Tの部分が如何なく滲み出た、暗い調子になる。(明るい文章もお任せあれ!)