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2014年10月の記事一覧
世界樹の魔法使い 2章:争う尖塔の学生たち ⑦
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翌朝、始業早々にも関わらず特別教育部の中では小さな騒動が起きていた。
勢いよく複数の人間が駆け抜けていき、「うわっ」「きゃっ」「あぶねぇーな!」と、歩いている生徒や教員が例外無く驚いている。彼らの見開かれた目は、石畳を鳴らしながら通り過ぎていくものを追っていた。
駆け抜けていったのは、誰もが良く知る男。
天刺す尖塔の監視官、ワン・ギー。
彼が駆ける姿
世界樹の魔法使い 2章:争う尖塔の学生たち ⑥
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授業を終えて夕刻に至る頃になると、生徒たちは天刺す尖塔から寮に戻り、教職員たちも事務的な仕事や自身の研究のために室内に籠もるようになる。生徒の鍛錬に付き合う教員もいるが、彼らが居るのは地下やグラウンドといった離れたところであるため、尖塔は必然的に、ひっそりとした空気を漂わせていた。
空が夜の様相を呈していても、生徒が帰るときの賑やかさがあれば、夕刻のような
世界樹の魔法使い 2章:争う尖塔の学生たち ⑤
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親元を離れて暮らす尖塔の学生たちは、日々の始まりを寮で迎える。
十二歳までの幼い子どもたちは、正門から左に入った児童寮で、それ以上の十八歳までの学生たちは、正門から右に入った男子寮と女子寮で目を覚まし、その日のスタートを切る。
男子寮と女子寮の出で立ちは無骨で殺風景だ。
建物は岩盤をくり抜いた三階建ての石窟構造で、手前に迫り出した石造りの建物部分が、後