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就活の思い出


面接でこんな質問をされたことがある。

「自分とチームどちらが優先ですか?」

一見すると「チーム!」と答えても良さそうだがよくよく考えてみるとおかしな解答である。
実力ある自分がなければチームに属したところでなんら活躍はできない。むしろ足を引っ張るリスクの方が大きくなり、結局居心地が悪くなっていずれ逃げるように辞めてしまうだろう。

じゃあ逆に「自分!」と答えるのも違うよな。
確かに自己研鑽をしてスキルアップをする重要性はわかるが、そうだとしたらわざわざ会社というチームの面接に足を運ぶのは矛盾という他にない。ひとりで勝手にやればいいだけである。

というわけでむしろ逆に模範解答を質問者に訊き返したい気持ちを抑えて以下のように答えたと記憶してある。一言一句正確ではないが概ねは合っている。

「望まれた解答ではないのは分かっていますが、わたしは両方だと思います。これらは二項対立の関係ではなくむしろ相互補完的な関係だと考えます。自分がなければチームに利益はもたらせないから自分を磨く必要があります。そしてチームはメンバーを認め、褒め合うなどして居心地の良い環境を作り出す必要がある。そうでなければ自己研鑽のモチベーションが生まれないからです。ですのでやはり、自分とチームが互いに好影響を与えられる循環的状況が理想であり、どちらか一方を選ぶというのはわたしにはできません」

結局内定は頂けて、そのまま就活を終わらせたわけだが未だにこの解答が良かったかどうかはわからない。質問者が想定した模範解答が気になって仕方ない。だがそれを訊いてしまっては芸がない。きっと模範解答だって質問者の信念なのだろうから、訊いてはみたいが知ったところでそれ以上のことはない。なので行動には移さないことにした。星新一の話にこんなものがある。(うろ覚えなので違ったら指摘して)

ある売れない芸術家が見ず知らずの人から預かった箱を中身を見ないという約束をして預かった。その中身が死ぬほど気になったが約束のためにみることはなかった。だが、あれやこれやが入っているのかもという想像はやめられずそれを作品にぶつけたら売れるようになったという話だ。


その後、箱を返したのかやはり好奇心に負けたのかは覚えていない。まぁとりあえず伝えたいのはわからないままの方がいいこともあるよってことである。

わたしの解答は自分自身未だに不思議である。
想定していた質問でもなかったから突発的になんとかこうにか答えたものだった。
もしかしたらあの解答はわたしの主調低音のようなものなのかもしれない。だとしたら我ながら良いこと言ったなと褒めてやりたくてこうして書いてみたわけである。

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