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【#1】デザイン会社nanilaniが、なぜ菓子ブランドをはじめたのか

2018年8月4日、群馬県の県庁所在地・前橋市の“まちなか”と呼ばれる商店街の一角に、「なか又」というお菓子屋が開店しました。(当時はシャッター商店街と呼ばれるような人っこ一人いない通りでした。3年経った現在は活気もずいぶんと戻りつつあります。)

このお菓子屋は、東京に拠点を置く、2005年創業のデザイン会社nanilani(株式会社ナニラニ)が運営しています。
2018年、菓子ブランド「なか又」を立ち上げ、お陰様で2021年3月末現在、「ふわふわ わぬき」という人気商品も生まれ、群馬県前橋市の直営2店舗とオンラインストアの運営、また2年半で10を超えるポップアップストア開催(エストネーション六本木ヒルズ店や銀座店、また伊勢丹新宿店や日本橋三越本店など)が叶ってきました。

よく聞かれる、または驚かれるのが

「なぜ和菓子屋なんですか?」
「なぜ前橋(群馬)なんですか?」
「社長のご実家が和菓子屋さんなんですか?」
「え?デザインだけじゃなくて製造も !? 」
「リブランディングとかじゃなくてゼロからの立ち上げ !? 」

などなど。

人様のブランディングやマーケティングをお手伝いしている立場ながら、自社のブランディングや情報発信が苦手な我々ナニラニですが、この辺りの、人との会話でとっても食いつきの良いネタは、おもしろがってくださる方も多いので、この度noteを開設し、経緯や裏側をご紹介してみたいと思います。
いまも四苦八苦しながらの商品企画開発・調達・製造・在庫・店舗運営・人事・労務・接客サービス・広告宣伝・出店計画・日々の収支管理などなど…頭を悩ませることばかりですが、
これまでのメイン事業であるクライアントワークとは違う、ブランド開発やデザイン経営を、まさに自分たちで実験できる場でもあります。
なか又の成長と共に、クライアントワークに活かせること、新たなお仕事に繋がるケースも実際に出てきました。

まずはナニラニが「なか又」を始めた理由を数回に分けて書いてみます。


背景

2005年4月からデザイナーとエディターの2人で始めたナニラニ。
クライアントから対価をいただき、制作〜アウトプットするという受託事業のモデルです。
初年度からお仕事もたくさんやらせてもらっていましたが、代表・村瀬にはいつもこんな思いがつきまとっていました。

デザイン制作事業で突き抜けるのは難しいだろう
生き残るには変化が必要になる
日本マーケットは縮小する、世界で戦いたい

同時に、

何のためにデザインという仕事をしているのだろう
自分たちの強みはなんだろう

と、自問自答を繰り返してきました。

当初は、単純に好きという気持ちで始まったデザインとの付き合いが、社会に対して何ができるかを考えるようになりました。

そこで、言語化したのが、ナニラニのビジョン、

imagine. draw.
未来を想像し、描く。

です。

読んで字の通り、「想像する」と「創造する」です。まだ見ぬ未来を、想像して描くこと。世界がもっと「imagine. draw.」で満ちたら、もっと豊かな社会になるだろうし、争いごとさえもなくなるかもしれないし、もっともっと幸せな地球になるだろう、と思うのです。

皆さんもご存知の通り、社会においてデザインの領域はどんどん拡がり、役割はますます重要になってきています。ある意味このビジョンは、デザインという行為の我々なりの解釈であり、ナニラニの存在意義でもあります。

デザインを装飾的な機能や感覚的なものだけととらえず、広義にとらえ、デザインの力でビジネスの成功や社会への貢献に取り組むことが、自分たちの強みであると定義しました。

とはいえ、言うが易し、行うが難し。

「まずやってみる」

何ごとも実体験を大切にする我々は、実際に自分たちでビジネスをすることで商売の実体験や、ブランディングやコンサルティングの仕事を通して業界の勉強や疑似体験など、小さな実体験を繰り返しています。

音楽レーベルの運営、アーティストのマネジメント、イベントの企画運営、EC店舗の企画運営、WEBメディアの企画運営、デジタルサービス開発、ノートの企画販売、リサイクルプロダクト開発...。
ほとんどが失敗に終わっていますが、今も続いているものもあります。全ての実体験・経験の蓄積が今につながっていると考えています。
(もしご興味があると言ってくださる方がいれば、上記の自社開発プロダクトなどもいつか書いてみたいと思います。眠ってるけどおもしろいプロダクトもあるのですよ...!)

そして常に、強みはデザインを理解・実践できるメンバーによる、
デザイン × ビジネス

ということを意識してきました。

機会

2013年頃から、前橋市の活性化のプロジェクトに携わることになりました。クライアントであるメガネブランドのJINSの創業社長・田中仁さんが、出身地前橋で始めたプロジェクトです。はじめは各プロジェクトのアートディレクションやデザインや企画などクリエイティブ面でお手伝いしていました。
そんな中、

「村瀬さんも前橋で何かやらない?」

と田中さん。
クライアントワークのような関わり方ではなく、中に入り込んで、一緒に盛り上げて行きましょうよ、ということだったのでしょう。

前橋市を盛り上げようとすると、必然と人の行き来が増えます。また前橋に世界中から人が集まる機運もありました。
縁もゆかりもなかった前橋に行き来が増えた村瀬が感じていたのは、

前橋と言えばコレ、といった良いお土産品が少ないな

ということ。
それこそこれから盛り上げて行こうとしたら、そして盛り上がってどんどん人が集まるようになった時に、「前橋に行ってきたよー!」とお土産で渡せる良いお菓子があれば良いのにな...。
そこが機会となったのです。

なにをやるか?

マーケティング用語で4P、3Cというのがあります。
4P=
Product = 商品
Place = 場所
Price = 価格
Promotion = 販促

3C=
Customer = 顧客
Competitor = 競合
Corporate = 自社

「なか又」の誕生も、これに当てはめて「imagine. draw.」を繰り返してきました。
当初のメモをご紹介します。

Product = お土産品 →  前橋の象徴 →  和む菓子という体験
Place = 前橋発 →  東京など都心ではない面白さ・地方創生の機運
Price = 買い手にも売り手にも適正な価格 →  ちょっと良い価格
Promotion = ローカル+グローバル →  口コミ+インターネット

Customer = 前橋に愛着があり感度の高い人 → 前橋の関係人口
Competitor = 前橋・群馬の象徴となる体験(モノ、コト、場所)
Corporate = 広義のデザイン・テクノロジー・活性化活動のつながり

また、メンバーが共通認識を持つために、ペルソナを描きました。

前橋に愛着があり、
世界中の一流に触れているため感度が高く、
かつ、謙虚で情け深く、あたたかい女性。


実は、まさにこの方、という方がいらっしゃるのですが、この場で個人名は伏せておきます(笑)。

良いモノやコトを知っていて、知人からはセンスある人と認識されている、どんな人でも分け隔てなくお付き合いができる謙虚な方。自己の満足だけでなく、周りの人にもそれを提供したり伝えたいと思っている方。そんな前橋の奥様方に、自分で楽しむだけでなく、自慢の手土産としてお使いいただきたい。また、そこから拡がり、あらゆる方々が前橋に足を運ぶきっかけになってほしい。

このあたりがデザイン経営であるとも言える由縁かもしれませんが、
×やれることから考える
×プロダクトアウト

ではなく、
ユーザーから考える、という順番でブランド像を描いていきました。

#2へ続く ...

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