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『魍魎の匣』でかかる京極堂の呪いを解く
百鬼夜行シリーズの中でも『魍魎の匣』はお気に入りの話だったはず。なんで断定できないかというと、最初に読んでから15年以上経ってしまっていて、当時の感想をすっかり忘れているからだ。
初めて読んだ20代の頃と今ではきっと本を読んで受ける印象も変わっているるはずなので、その頃やっていた「mixi」というSNSに感想を残していないか探してみたが、お目当ての感想は見つからず、ただただ自分の青い文章に赤面しただけだった。
『魍魎の匣』には、臓器を機械に起き変えるという話が出てくる。腸は第二の脳と言われたり、他にも身体からのフィードバックに思考は影響されている。それはいいかえると、身体からのフィードバックは自身を構成する要素だということだ。つまり、脳以外の余分なものを取っ払ってしまったマモー(ルパン三世 ルパンVS複製人間より)は肉体を持っていた頃のマモーと別人なのではないだろうか。
と思ったが、それを言い出したら細胞が新陳代謝するだけでも自分は変容するし、肉体からのフィードバックという意味では、気圧や天候に依ってもやはり自分は変容するのではないだろうか。
人格というものは不変だと思い込むと、テセウスの船はどこかの段階で違う船だとみなさないといけないが、人格というものは常に変化するものであると認められれば、どれだけパーツを変えてもテセウスの船はテセウスの船だといえる。
そう考えることが、京極堂の呪いを解くちょっとしたヒントになるんじゃないかと思ったりした。