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流行り廃りはあれど地質モデルの基本は地質概念

石油関係では年に数回国際的なコンフェレンスが各地で開催されています。南国周辺諸国でも SPE (Society of Petroleum Engineers: 石油技術者協会) や AAPG (American Association of Petroleum:米国石油地質協会) などが主催するコンフェレンスが開催されています。

これらのコンフェレンスのプロシーディングを見ると、今、石油開発業界でどんな技術が注目されているか、どんなプロジェクトが動いているか、トレンド (流行) がよくわかります。

油層地質モデリング関連では、1990年代後半から2000年代前半にかけては地質推計学系の発表が数多く見られました。炭酸塩岩油層ではRock Typing 関連の発表も多かったように思います。2000年代半ばにはフラクチャーモデリング、2010年台に入ると非在来型石油・天然ガス関連のモデル、最近はAI技術などを融合したデジタル・トランスフォーメーションがらみの発表が多く見受けられました。

私は長い間油層の地質モデリングに携わってきて、地質推計学も利用してきましたし、Static Model (地質モデル) と Dynamic Model (シミュレーションモデル) の効果的な橋渡しとなる Rock Typing スキームの構築、フラクチャーの影響とそのモデル化、機械学習を利用した浸透率や Rock Type の推定など、いろいろと取り組んできました。

しかし、何よりも大切で、地質モデリングの質、ヒストリーマッチングや予測精度の向上に与える影響が大きいのは、フィールドから得られるコアやログデータの詳細な観察や分析、油層性状を規制している地質的な要因の解明、そのような地質的要因を形成する地質プロセスの解明、それらに基づく地質概念の構築と地質概念に基づく油層地質モデルの構築であると感じています。

既開発油層であれば、フィールドで得られるダイナミックデータ、生産・圧入履歴、モニタリングデータの詳細な分析と、地下での流体移動の理解が基本となります。

これらは、地道なデータのQCから始まり、データの性質や精度を考慮しながら、データを総合的に解釈していく必要があり、非常に骨の折れる仕事です。その際に、データの解析などでAI・機械学習に助けられている部分も多いですが、特に解釈の部分ではまだまだこれらの技術に頼り切ることは難しい現状です。

「油層性状を規制している地質的な要因の解明、そのような地質要因を形成する地質プロセスの解明、それらに基づく地質概念の構築」の部分に力を入れた発表が少なくなってきている、あるいはあまりフォーカスされていないことに、私は懸念を持っています。

油層シミュレーションにおいて、自動ヒストリーマッチングなどの手法も導入されてきていますが、私は地質概念の無い自動ヒストリーマッチングは非常に危険だと思っていて、地質学の基本に立ち返った地質モデリングの構築の必要性を若い地質屋にも理解してもらえるように努力していきたいと思っています。

コンフェレンスに見られるトレンドをフォローし、応用できるところは応用するとしても、地質モデルの原点を見失わないようにしたいと思っています。


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