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Cloud Number Nine

私が南国赴任中に子供が生まれました。

その頃、私は石油掘削現場での仕事がいつ入るかわからない状態でしたので、妻は出産を日本の妻の実家の近くの病院で行うことにしました。幸い出産時期は私も現場仕事でたまっていた代休をまとめて消化することができ、妻と一緒に休暇帰国して、出産から出産後にかけて約2か月間日本に滞在することができました。

その間、妻の実家にずっと滞在させていただきました。妻は検査の結果通常よりもちょっと早く入院することになり、トータルで2週間近く病院にいました。

妻が入院した病院では、私が海外赴任中であり長期休暇で帰国していることを考慮してくださり、一般の面会時間に関わらずいつでも妻との面会、個室病室への滞在を認めていただき大変助かりました。

知らない人が見たら、平日の朝から毎日長時間妻につきそって病院に入り浸っている不思議な人と見られていたかもしれません。

長い休暇ではありましたが、さすがに妻と子供が一緒に南国に戻ることができるようになるまでは日本に滞在することができず、妻と子供を日本に残して私だけ一度南国に戻ることになりました。

南国に戻ると長期に休んでいた分、また現場でのハードな仕事が待っていましたが、ときどき子供の様子を日本から知らせてもらい、どんどん成長していく様子に驚きながら、また会える日を楽しみに現場仕事を頑張ることができました。

2か月ほどみっちり現場の仕事をこなし、妻と子供を日本に迎えに行きました。たった2ヶ月でも子供は驚くほど成長していて、私は2か月間のギャップを埋めようと、また慣れぬ手つきでオムツの交換やら入浴やらにあらためて取り組みました。これからは南国で、3人で生活していかなければいけません。そんな覚悟も芽生えました。

いろいろな人に助けられながら、そして見送られながら日本を後にして、子供は初めて飛行機に乗り南国にやってきました。

私の現場仕事はその後もしばらく続き、何日も家を空けることが多く妻にも苦労をかけました。私も子供に会えない日々は寂しかったです。

現場仕事からもどり、なかなか寝付けない子供を抱っこして部屋の中をうろうろあやしながら歩き回るのが至福の時間でした。

そんな時によく聞いていた曲が、ブライアン・アダムスの「Cloud Number 9」です。そのまま訳すと「9番目の雲」のような感じですが、英語では「Cloud Number Nine」には別の意味があるそうです。

英辞郎 on the WEBによると、

〈話〉最高に[この上なく]幸せ[ハッピー]な状態、至福(の状態)◆【語源】《1》ダンテの『神聖喜劇』(The Divine Comedy)の中ではthe ninth heavenが神に一番近く、いちばん幸福であるとされた。《2》米国の気象庁で用いられた雲の種類の9区分から。《3》cloud nineとは積乱雲のことで、非常に高くまで上昇することから。◆この表現をさらに強調するために10以上の数字が用いられることがある。

上記のような意味があるそうです。

アメリカ気象局 (National Weather Service、NWS) のページで確認してみると、たしかに High_Clouds, Middle_Clouds, Low_Clouds の大きく三つのカテゴリーの中の Low_Clouds の中の Type 9 は積乱雲でも上部が平らになった雄大な、気持ちよさそうな雲でした。

「Cloud Number 9」を聞きながら子供を抱っこしていた時間は確かに至福の時間だったかもしれません。


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