コンピューターリテラシーの獲得
入社してしばらくは、社内では何となく地質屋はコンピューターとはそれほど縁のない職種と思われていた節がありました。普段は岩石をみたり、岩石の薄片を顕微鏡で観察したり、手書きと製図道具で図面を作ったり、確かに、地球物理や油層工学などの人たちに比べて、コンピューターを扱わずに生きてこられた職種だったかもしれません。
しかし、各人の机にPCが置かれるようになり、使いやすい表計算ソフトなどが普及し始めると、地質屋もデータ解析、図面作成、レポーティングなど、コンピューターなしでは生きていられなくなりました。
私は新しもの好きなところもあって、高校生のころ日立の「ベーシックマスターレベル2」という、やっと普通に手に入るようになってきた日本のパソコンを買って、BASIC言語で書かれたゲームなどで遊んでいました。
大学は当時、まだ相当アナログな世界だったので、私はフィールド調査に明け暮れていて、コンピューターとはあまり縁のない生活を送っていました。情報処理や構造地質解析などの授業で、情報処理センターの大型コンピューターを借りる程度でした。
社会人になって、PCはまだコンピュータールームと呼ばれる部屋に数台あっただけでしたが、自分でノート型でプリンター内蔵の「文豪mini5」というワープロを購入しました。この「文豪mini5」は、ある2つのキーを同時に押しながら電源を入れると、PC用のオペレーティングシステムであるCP/M を起動させることができるマニアックな隠し機能がありました。CP/Mは当時、マイクロソフト社のMS-DOSと結構張り合っていたオペレーティングシステムで、MS-DOSと同じようにコマンドで操作するオペレーティングシステムです。わたしはこの隠し機能を利用して、ワープロをちょっとPC的に使って遊んでいました。
その後、会社で各人の机にMS-DOS版のPCが配られると、私もそれに影響を受けて、自分でも当時はやっていたNECの98ノート、白黒画面最後の頃の機種である「PC-9801NS/T」を購入して、120MBのHDDを入れて、モデムを買って、電話回線で商用データーベースなどにアクセスしていました。また、アマチュア無線の免許を持っていたので、無線機とPCをターミナルノードコントローラーと呼ばれる機械で接続して、趣味でTELEX, 無線FAXなどの受信も行っていました。
その後も個人的にはWindows 搭載のPCを何台も買い繋ぎながら、ときどきLinuxなどにも手を出して、ちまちまと「PC盆栽」の世界を楽しんできました。
しかし、何よりも仕事の上で、コンピューターリテラシーが向上したなと思うのは、1990年代初頭に、会社でUnix を OS とするサン・マイクロシステムズ社のワークステーションを導入して、地質系の専用ソフトをアメリカのベンダーから購入し、本格的に地質モデルを社内で作成するようになったことです。また、これを機に、自社で油田情報データベースを構築することになり、それに関われたのも大きかったと思います。
当時はまだ、ITなどを管理する専門部署などはできていなかったため、各ディスプリン (地質、物理探査、油層工学等) の中からコンピューター好きが選ばれて、様々な研修を受けて、社内のシステム管理を行いました。私も地質屋の中から選ばれて、Unix システム管理を目的とした研修や、オラクルなどのデーターベース管理システムに関する研修、地質系専門ソフトの導入や管理のための研修など、いろいろ勉強させてもらいました。
その中で何よりも参考になったのは、私の先輩が、ファイルやフォルダー管理などを非常にしっかりとしていて、バックアップなどもしっかりとりながら、慎重に作業をしている姿を見たことです。ファイルやアカウントの管理をしっかりすることの大切さを学びました。
ただ、私たちは通常業務の間に、ワークステーションの管理も任されていたため、業務が忙しくなるとかなり時間的・精神的に追い込まれる場面もありました。
人間追い詰められるととんでもないミスを犯すものです。
ある深夜残業時、あのコンピューター管理でいつも冷静沈着だった先輩が、Unixシステムにスーパーユーザー権限でログインしていたにも関わらず、ルートディレクトリで全ファイル全ディレクトリ消去のコマンドを確認なしで実行してしまいました。
後で話を聞くと、一般ユーザー権限でログインしていて、自分のディレクトリにいて、確認付き消去コマンドのつもりで実行したそうです。なんだか色々間違ってしまったのですね。
コンピューターにとっては、自分の脳みそを自分で消去したようなものです。私もその時先輩の隣にいましたが、その瞬間、先輩の変な叫び声が聞こえてきました。。。
その後、復旧に数日かかりましたが、今となっては懐かしい思い出です。
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