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「栄光の岩壁」に憧れて

中学生の時、「おすすめの小説」あるいは「夏休みにぜひ読んでみよう」みたいな本の紹介で、初めて新田次郎さんを知り、「栄光の岩壁」という小説を読みました。

そのころ、「凛とした孤独感」みたいなものに憧れていた私は、この小説にものめり込んでしまいました。

まったく違うジャンルかもしれませんが、井上靖さんの自伝的三部作、「しろばんば」「夏草冬濤」「北の海」を読んだときの感覚に近いような、「ああ、これから一人で頑張らなければ」という決意みたいなものが湧いてくる感じです。

無骨で不器用な生き方にも見えますが、山登りに関しては圧倒的な能力と不屈の精神力を持っている主人公の竹井岳彦の生き方に憧れました。

岳彦は数々の困難を乗り越えて、ヨーロッパアルプスに挑戦します。小説の中に出てくる「アイガー北壁」や「マッターホルン北壁」。「北壁」という言葉が頭に残りました。

南国に赴任してから、いろいろと海外旅行へ出かけましたが、北部イタリアのコモ湖に行ったとき、イタリア・スイスの国境にあるスイスの最高峰モンテローザが遠くに見えたとき、スイスにもぜひ行きたいと強く思いました。「アイガー北壁」、「マッターホルン北壁」という言葉が頭をよぎりました。

南国赴任中に生まれた子供がそこそこ大きくなり、ついに家族でスイスに行くことにしました。当然、マッターホルンとアイガーは目的地に入れます。

小説を読み直して、さらに子供と一緒にアニメ「アルプスの少女ハイジ」を見て、予習十分、気持ちを盛り上げてスイスに行きました。

スイスは本当に息をのむ美しさでした。そして目の前でマッターホルンとアイガー北壁のを目にして、ただ観光で来ただけなのに、「ついにここまでたどり着いた」と岳彦なみに感動している自分がいました。

アイガー

妻と子供にその熱い思いがうまく伝えられなかったのが残念です。実を言うと実際は空気が薄くてしばらくゼイゼイしていました。

スイスの感動はいつかまたの機会にぜひお伝えしたいのですが、子供の頃に小説で読んだ憧れの場所に行けたことが、本当にうれしかったです。

「栄光の岩壁」を読んで、その後かなり新田次郎さんの作品にはまりました。

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