現状を維持するためには刺激が必要
油田開発では生産を開始 (ファースト・オイル) すると、だんだん井戸数を増やしていき、生産レートを上げていきます (ビルドアップ)。設計した施設のキャパシティー近くで、安定生産レートに入ります (プラトー・レート)。
プラトー・レートは、油田の規模や油層性状、井戸数、各井戸の生産性、施設の処理能力、パイプラインなどの輸送能力などによって規制されますが、まずは予想した井戸数で予想した生産レート (プラトー・レート) が達成できれば、ひとまず安心です。
プラトー・レートに達した後は、できるだけ長くプラトー・レートを維持する必要があります。通常最初は油層の圧力で自噴できたとしても、だんだん油層圧力が減退していき、自噴できない井戸が出てきます。地層水などが混ざり始め、自噴できなくなる井戸もあります。
このようなことは普通に起こり得ることなので、あらかじめ開発計画の中に水圧入などの圧力回復・維持計画を入れておき、急激な減退が始まる前に圧力回復をはかり、プラトーの維持を行います。
しかし、油田のプラトーを維持するためには、あらかじめ立てた開発計画のほかにも、日々、各坑井の生産レートのチェックや、圧力、油と水の生産比率などの監視を行い、異常を発見したり生産レートが下がり始めたりした場合には必要な処置を適宜講じる必要があります。
たとえば、井戸の管内や井戸周りの油層にスケールと呼ばれる沈殿物が付着・堆積し、生産レートが下がってしまう場合があります。そのような場合にはスケールの成分を分析し、スケールを溶かすような薬品で洗ったり、薬品を地層に圧入したりする場合があります。
石灰岩油層であれば、塩酸などで坑壁周辺の孔隙の目詰まりを除去したり、水圧で坑井周辺に高浸透性のチャンネルを形成させたり、薬品などで坑井周辺の油またはガスの有効浸透率の向上などにより坑井能力の改善を図る場合もあります。このような坑井の生産能力向上・回復法を一般に「坑井刺激法」などと呼んでいます。
坑井の生産能力は放っておくとだんだん劣化していくものなのです。
油田開発計画という大きな計画ももちろん大切ですが、日々の操業の中で、監視の目を光らせ、生産レートが落ちて来た井戸の原因を明らかにして、生産能力の回復を図りながら、プラトーをできるだけ伸ばしていく努力が大切なのです。
井戸の生産性は劣化していくもの。現状を維持するためには日々の監視と、劣化を抑える、あるいは回復させる技術が必要だということです。
「現状を維持できれば良い」ということは、「何もしなくて良い」ということではないのですね。
私たちのまわりでも似たようなことはあると思います。
私たちの体も、頭脳も、現状を維持するためには継続的なチェックとメインテナンスが必要ですよね。
政治の世界も同じだと思います。今までと同じように平和で穏やかに暮らしていきたいと思えば、政府を監視し、声を上げ、良くないところは良くしていかないと、私たちの暮らしはたちまち劣化していくのだと思います。
前衛的な革新勢力ではないとしても、革新的な見方や行動が無いと、生活の現状すら維持できないのではないかと思います。ましてや世襲政治家や既得権益が当たり前のように出てくる世の中です。放っておくと政治が劣化するのは目に見えているなと思います。
今の暮らしを維持したいと思っている人も、そのためにはある程度革新的でなければならないということでしょう。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?