ちょっとだけ水泳選手に。
小学1年生のときはまだ泳ぎが出来なくて、夏休みの学校のプールの日は憂鬱でした。いかに理由をつけてサボろうか、そんなことばかりかなり深刻に考えていました。
早く泳げるようになろう、うまくなってやろう、などという向上心は全くわかず、プールの日は天気が悪くなって中止になればいいななどと本気で思っていました。
しかし、2年生になって、何かのきっかけで少し泳げるようになると、プールに行くのが楽しみになって、今度はどうすれば速く泳げるようになるのか「泳ぎ方」の本を買ってきて知識を付け始めました。
練習を一生懸命しようとか、体力をつけようとか、そういう方向に意識は向かわず、とりあえず本を読んで速く泳ぐにはどうすればいいのか知識から入ろうとするところが、つくづくスポーツに向かない性格なのだと思います。
それでも小学校4年生までは、学校のプールの自由時間に本で読んだ泳ぎ方を真似してみたり、友達とわいわいプールで楽しく遊んだりしていました。
私は小学校5年生になる時に転校して、そこで、小さいときから水泳を習っているという友達と出会いました。その子のクロールは美しく、無駄がなく、ひとかきひとけりで進む速さも距離も同級生の中では群を抜いていました。
小学校5年生の夏、その子は学校の選抜水泳チームの選手に選ばれて、地域の学校が集まって行われる学校対抗の水泳大会に出場して、出場した全種目で優勝したとのことでした。水泳を本格的に学ぶとあんなにもきれいに速く泳げるのかと驚きました。ちなみにその子は中学から私立校に入学し、そこでは水球をやっていたそうです。筋金入りのスイマーだったわけです。
小学校6年生の夏休み、その水泳の得意な友人は事情があって、学校対抗の水泳大会に出られなくなりました。そこで、なぜか体育の先生から私に声がかかり、逃げるに逃げられず水泳チームの一員として夏休みの前半、ほとんど毎日練習に参加することになりました。
本で読むのと実際に競技のために練習するのとは大違いで、とにかく脈拍をはかりながら、何度も何度もプールを往復させられ、なかなかきつい練習でした。おかげで、夏休みが終わって久しぶりに担任の先生にお会いすると、「なんだかひょろっとしてたのに見違えたね」と言われることとなりました。これが後の「健康優良児」の表彰につながったのかもしれません。
そして競技会を前にしたある日、最終的な出場選手を決めるためのタイム測定会が行われ、自由形とメドレーリレーに出場することになりました。その時の先生の測定では郡の大会記録を越えていたそうで、本を読んで練習した甲斐があったようです。
結局本番では記録更新とはなりませんでしたが、出場した種目で優勝することが出来て、出られなかった友人のピンチヒッターとしての役割を果たせてよかったです。私としてはスポーツで賞をもらうことになるなんてびっくりするような経験でした。
その競技会では、中学校の先生も見に来ていて、翌年中学に入った夏休みに、「君、去年の水泳大会にでていたよね」と中学校でも選抜水泳チームに入らないか誘われましたが、なんだかんだ理由をつけてお断りしてしまいました。夏休み中練習をするのはちょっともういいかなと思ってしまったのです。
やはり本格的にスポーツに向き合うには根性なしでした。