桜の開花宣言 東京の基準が靖国神社になったのはなぜ?
今年は大変な春になってしまいましたが、読者の皆さまはお変わりありませんでしょうか。
さて、本日は4月1日です。新年度のスタートです。
今回は始まりにふさわしく、桜に関する雑学をご紹介します。
開花を決める標本木
先日より桜が咲きはじめまして、近頃は満開の様相を呈しています。
外出自粛になってしまって誠に残念ですが、例年であれば公園などはお花見の人達で大賑わいだったことでしょう。
ところで、毎年ニュースでは桜の開花予報が流れます。これは、気象庁が発表しているもので、1955(昭和30)年から始まった行事です。
気象庁は、それぞれの管区気象台ごとに「標本木」を定めています。季節の観測対象となる樹木のことで、気象庁はこの木をもとに桜の開花を予想しています。また開花宣言なども、標本木の花を目視で確認したうえでおこなっています。
原則としてソメイヨシノですが、寒さでソメイヨシノが育たない北海道ではエゾヤマザクラで、逆に暑すぎる沖縄県ではカンヒザクラを使っています。
以前まではこの標本木にある10粒のつぼみの重さだけをもとに予想していましたが、1996(平成8)年から、つぼみの重さに加えて2月の平均気温や降水量、3月の予想気温などのデータを数式にあてはめる方式になりました。そして桜前線の北上とともに開花日を全国分まとめてコンピュータで算出しています。
東京の標本木を靖国神社にした理由
この開花予想に使われる標本木ですが、全国に58本あります。
基本的には各都道府県にそれぞれありますが、北海道や沖縄など、広かったり離島があったりするところは複数の標本木を定めています。
それぞれの標本木は、気象庁の職員が観察しやすいように庁舎の近くに設定されていることが多いそうです。
が、例外もあります。
たとえば、東京。 ▲
東京の標本木は、靖国神社にあります。よくニュースで「靖国神社の桜が開花」とやたらに靖国神社が出てくるのはこれが東京の標本木だったからです。(▼靖国神社の標本木)
ただ、気象庁の庁舎があるのは大手町と虎ノ門。靖国神社からすれば、皇居を挟んで真反対の位置にあります。気象庁の職員は、開花予想のためにわざわざ靖国神社まで訪れるわけですが、なぜここを選んだのでしょうか。(▼気象庁本庁@大手町)
じつはもともと東京の標本木は、大手町の気象庁の敷地内の木でした。しかし1966(昭和41)年に、靖国神社の桜に替えたのです。
交替の理由は、じつは明確ではありません。気象庁の職員でさえも、なぜ靖国神社にしたのかわからないそうです。
巷では、神社の境内であるため長年にわたって観測環境が変化しない場所だから、東京の各公園や名所の桜の開花日を平均したら靖国神社の桜が最も平均日に近かった、など諸説があります。ただ、靖国神社の近くには、観測環境が変化しない(であろう)千鳥ヶ淵の桜などもあることを考えると、わざわざ靖国神社を選んだ理由としては、どの説も説得力に欠ける感は否めません。
「五分咲き」などはフィーリング
前述したように、いまの開花予想は以前と違い、つぼみだけでなくデータをもとに算出しています。そうなると、標本木は以前より重要なものではなくなったように感じるでしょう。開花宣言くらいしか役に立っていないのではないか、とも思えてきてしまいます。
しかし、標本木の役割がなくなったわけではありません。
ニュースなどで流れる「五分咲き」「八分咲き」など開花の割合は、標本木を見て決められるのです。これはデータの計算をもとにしているのではなく、人間の主観。つまり、標本木のつぼみを見た気象庁職員のフィーリングによるのです
職員が「五分咲きかなあ」とか「まだ八分くらいでしょ」と思えば、それが発表されるのです。もちろん適当に決めているわけではないと思いますが、開花予想が気候などのデータをもとに全国的に算出しているものであることを考えると、ちょっとアナログ感がありますね。
まだまだプロの人間の目も大切なんだなと感じさせてくれます。
Ⓒオモシロなんでも雑学編集部
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