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ナナタ-10秒で読める散文
2018年8月15日 16:40
恋愛とは常に1対1である。相手との真剣勝負、油断は許されない。気を抜けばそっぽを向かれる。外野、ギャラリーはもちろんいる。野次も飛び交うだろう。でもそれはあくまでリングの外での出来事。勝負はここで起きているのだ。渾身の「愛してる」が、空を切ること無く、相手の心を掴み続けるまで。
2018年7月10日 19:45
僕が言葉を喋れたら。何度そう思ったことだろう。生まれたばかりの頃、泣き止まないキミのために呼ばれたんだ。初めて1人で寝る夜も、友達と喧嘩した日も、お母さんに怒られた時も。キミは僕を隣において、話をしてくれたね。僕が言葉を喋れたら「愛してる」って言うのに。人形のくせして欲張りかな。===後記===「八百万の神」じゃないけど、生き物じゃないものにも感情があるので
2018年7月9日 19:33
こないだは本当に楽しかった。きれいな夜景を見ながら、振る舞ってくれたごちそうの数々。いつもこんな作ってるって、さては女ができたか?そんなこと気にしちゃう。わたし、意外と乙女だからさ。でも別れ際の「愛してる」は反則だと思うな、彦星。また一年我慢するの、大変じゃんか。待ち遠しいなあ。===後記===究極の遠距離恋愛実践者、織姫と彦星。彼女らのことを思えば、人類の
2018年7月5日 22:17
小太りの男性教師が、黒板に数式を書いている。男しかいないのこの教室で、何人が真面目に見ているんだろう。そんなことを思いながら、前方に座る彼氏に視線が行く。「愛してる」昨夜の、デートと言うにはお粗末な時に彼は言った。僕らは、紙切れ一枚で認められる関係よりも、強い何かで結ばれている。===後記===自分の学生時代を思い返すと、こういった感情を抱いている子はいなかったように思
2018年7月2日 19:31
夫は昔、声を失った。豪快という言葉が似合う人だったが、癌で声帯を摘出。以来笑うことの減った夫との夫婦生活は、決して簡単ではなかった。ある日、名前を呼ばれた気がして振り返ると、そこには夫の姿が。「愛してる」小さくて聞き取りづらい音。夫の照れた顔なんていつぶりだろう。ひさしぶり。===後記===つんくさんは、食道発声で、声を出せるようになったらしい。伝えられる時
2018年7月1日 22:02
久しぶりの晴れ間は、夏の始まりの合図だった。空は青く、浮かぶ雲は重厚感のあるフォルムをしている。木々の緑も活き活きした色で、さっき見かけたワイシャツは、真っ白に強く輝いていた。この炎天の空の下、僕は今年も君の墓前で手を合わせる。「愛してる」声が届いてるといいんだけれど。===後記===夏が近づいてくるのを、肌と汗で感じるここ数日。電車に乗っていたら、この暑さにそぐわ
2018年6月29日 21:32
私の言葉に対して、彼女が喜んだり、怒ったり、気味悪がることは一切ない。「愛してる」という告白にも、大きな瞳で見つめ返してくれる。それだけ。私はそれで満足なのだ。だがこの想いは周囲に理解されることはない。ディスプレイの向こうにいる彼女に愛を捧ぐ私は、人間としておかしいんだろうか。===後記===想いの対象は、一般的に人間と考えられている。中には、動物だったり、何か
2018年6月28日 22:55
動物はどこで求愛行動を覚えるんだろう。クジャクが羽を広げるアレは、男子高校生で言ったら、ワックスで髪をツンツンさせるとかだろうか。分かりづらい。そんな話を妻にしたら「最初っから心が知ってんのよ、心が」「そういうもんかなあ」「そう。で、私のことは?」「愛してる」ストレートで助かる。 ===後記===気になる子に気になってもらいたいとき、どうすれば良いんだろうか
2018年6月27日 22:34
幼いころ、誘拐にあった。塾の帰りに連れ去られたらしい。らしいというのは、その記憶が欠けてるからだ。今も覚えているのは、犯人の低い声と、母の抱擁の感触だけ。「愛してる」私を抱きしめながら、私以上に泣きながら、母は耳元で叫んでいた。子は親を選べないと言うが、母が母でよかった、と思う。===後記===親という存在は特別であり、不思議で不完全だ。完璧なものなど無いのだけど。
2018年6月26日 20:26
聞いてよこないだご飯食べ行ったのねそうあのファミマの向かいのとこしたら突然指輪出してきてさ「愛してる」だってそんなの急にされたらびっくりするじゃん私泣いちゃってさそしたらあいつも泣いてやんのウケるよねいやノロケとかじゃないよそんなわけでお母さん今度わたし結婚するよ天国から見ててね===後記===仏壇に向かって手を合わせて思いを伝える、とい
2018年6月25日 21:48
31歳という繊細な時期に催された高校の同窓会。みんな久しぶり過ぎて、初対面と知り合いの中間ぐらいだ。そんな中見つけた昔の彼氏。「久しぶり」と話しかけてくるその表情には、一流商社マンの矜持が滲み出ている。\上質なスーツと光る指輪。「愛してる」と言う彼をフッた当時の私、殴り飛ばしたい。===後記===あの時ああしておけば...といったタラレバな話は、何歳になってもつ
2018年6月23日 16:15
叔母は毎年、20人いる子供たちから誕生日を祝われる。が、その中に血がつながった子はいない。みな元は戦争孤児なのだ。似顔絵や手編みのセーターなど、子供たちの趣向を凝らしたプレゼントに、叔母は目を赤くする。「愛してる」この光景を見る度に、親子の愛に血縁関係は必要ないのだと、強く思う。===後記===親子の絆に、血縁関係は必要なのか?というテーマで膨らませてみました。日本
2018年6月20日 20:58
最初に思ったのは「こんな漫画みたいなのあるわけない」だ。朝学校へ向かう時、曲がり角で女子高生とぶつかった。「気をつけてよ!」その勝ち気な子は転校生で、隣の席で、いつしか「彼女になったげる」と言われ、いま目の前で白いドレスを纏っている。「愛してる」こんな漫画みたいなのあるわけない。===後記===こんな漫画みたいなの、経験してみたかった...経験したこ
2018年6月19日 20:17
幼い頃、いつも公園で遊んでいた僕には、隣町に住む友達がいた。ある日2人で遊んでいると、急な雨に襲われ、急いで土管で逃げ込む。しとしと雨を眺めながら、彼女は言う。「ねえ」「なに?」「愛してる。」「え」当時の僕は、この言葉の意味を知らなかった。毎年、この季節になるとほのめく後悔の念。===後記===鬱陶しいこんな雨も、どこかでは、誰かに近づくための口実になってい