👁️‍🗨️午前の真野｜中身３(全３話)【短編小説】サクッとショートショート！

2021年8月27日 11:29

「えっ!」

驚いた。

二人とも忘れていた今回の目的を思い出した。

「少年よ・・・君の勝ちだ」

星君は全身を使って喜びを表現した。

子供からしたら大人に勝ったのだそれは嬉しいだろう。

こちらとしても手間が省けて大いに嬉しい。

「中身、見てみるか。星君ちょっと良い？」

私は浜辺にあった木の棒を使って開けようとした。

カチャッ・・・。

「ぎゃあああああああああああ！！！」

ランドセルの中から出てきたのは大量のヒトデだった。

私は大いに叫んだ。

一般的な可愛いヒトデは平気だがテヅルモヅルのようなものは大の苦手なのだ。

何をされるわけでもないのに姿かたちが受け付けない。

さすがのモグも驚いたようだ。

「マノちゃんのビックリにビックリしたぁ」

私は木の物陰に隠れながらランドセルを凝視する。

「モグー！中身はどんな感じ―？」

私は声を大にして状況を聞く。

「んー、強いて言うなら大量のヒトデがまだランドセルに入ってるー！」

モグはランドセルを逆さに持ち替え

中身を全てだそうとした。

ドサドサドサッ

次々にヒトデがランドセルから湯水のごとく出てくる。

「ヒトデさんいっぱいでてくる」

「なんだかこんなにたくさんいると気持ち悪いね」

星君も流石に気味が悪くなってきたのか私の元へ走ってきた。

「ちょっとー、二人で隠れてないでこれ見てよ、まだまだ出てくるよー」

モグがブツブツ文句を言っているうちにヒトデがドンドン積もってくる。

次第に高くなってヒトデの山が人の形のようになってくる。

「ひっ・・・・」

モグは目のようなモノと目が合った。

その目は赤く、瞳は金色で横に瞼が閉じる。

「ま”・・・・ま”・・・・」

目の前の人型のモノは何か声のような音を発している。

｢ま"ま"・・・ま"・・・・｣

一生懸命に声を発する。人形のモノはママと言っているようだ。

｢モグ！こっちに逃げろ！｣　

｢…マノちゃん、足が動かない｣

涙目にモグが訴える。

｢クソ！｣

私は砂の地面を思いっきり蹴った。

モグの元へ走り出し、突き飛ばす。

｢逃げろ！｣

すると、私の腕に異様な感触が伝わってきた。人の手の感触とは違う。

血の通ったフワッとした感じではなく、タコの吸盤が吸い付くような、逃がさないというような感じ。

｢ま"ま"｣

｢－－ッ！｣

私は振り返って改めてそいつを見る。

鳥肌が立った。

腕の半分がそいつに取り込まれていた。

いろんな種類のヒトデがゆっくりと確実に這ってくる。

思いっきり腕を引っ張るが抜けない、脚にも侵蝕してきて身動きが取れなくなってしまった。

｢ま"ま・・・まま"・・・｣

｢私は君の母親でもなんでもない！｣

｢ま"ま…いっしょ…いく｣

こいつは私を取り込んで海に帰る気だ。

｢離せ！｣

私はなんとか離れようとするも

動けば動くほど浸蝕は進み気がつけば首元まで迫っていた。

｢ぐっ…くっ｣

首が絞まって呼吸が出来ない。

私のチカチカし始めた視界の中で誰かが耳元で囁く。

『お前、自分の力を使え』

(自分の力？)

訳がわからないまま意識が遠退いていく。

――ーが、少し動きが変わった。

(息が吸える)

首を絞めていたのが緩んだのだ。

意識がはっきりしたとこで私はそいつを睨みつける。

すると私の中でふつふつと猟奇的な感情がわいてきた。

低レベルの怪異のくせして私に喧嘩を売るとはいい度胸だと相手を今にも痛めつけるのを楽しもうとウキウキしているのだ。

「離せ・・・」

出したことのない低い声でモノノ怪を脅す。

「離せッ！！！」

強く言葉を発するとモノノ怪は私を解放してランドセルの中に帰っていった。

同時に私はふっと我に返った。

「なんだったんだ、今の感じは・・・」

なんだか自分が少し怖くなった。

「マノちゃんッ！」

「お姉ちゃん！」

後ろから声を掛けられた。

振り返ると、モグと星君二人が私のもとへ駆け寄ってくる。

「マノちゃん、今警察を呼んだよ。すぐに来てくれるって」

どういう理由をつけて呼んだのだろう。

数分もしないうちに警察が駆けつけてくれた。

私が何とかうまいこと事情を説明してランドセルを見てもらった。

すると中には幼い子供の白骨化した遺体が入っていた。

私たちは警察に連絡先を教え星君を家まで送っていった。

こうして私たちは夏の海の噂を実証できることができたのであった。

私たちが訪れた場所は何十年も前に大きな津波が押し寄せてきたという。

ほとんどの人が高台に逃げることができたのだが逃げ遅れた人も何人かいたそうだ。

そのうちの一人にちょうど小学生手前の男児が黒いランドセルを背負ったまま行方不明になってしまったのだそう。

あのランドセルは今頃家族の元へと帰れたのであろうか。

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最後までお読み頂き、ありがとうございました💖

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