「最善の選択 あのときのわたし」ショートショート
「あなたは変わってしまったわ」
そう言われて離婚された。
何を悪いことをしたのだろうか? 自分は世間で「よい」と呼ばれる選択をしたはずだった。
褒められこそされても、貶されることはないはずだった。
自分は夢追い人だった。
学生時代、映画に惹かれ、その道にどっぷりとハマり、将来は映画でくっていくと思っていた。しかし、そう簡単に稼げず、バイトでくらす日々だった。
そんな中、彼女に出会った。そして、子供が産まれた。
子供を見て、すっと映画から身を引くことにした。そして、夢とは関係ない、けれどもきちんとした会社に就職し、休みの日は家庭のために過ごした。
映画の趣味は諦め、コレクションも処分した。けれども、それが妻にとっては変わってしまった、ということらしい。
「私が好きになったあなたはもういない」
そんなーーと思わないではなかった。しかし、そう言われて自分を振り返ると、いつのまにか自分を象っていたものがなくなっていた。
いつのまにか、世間体と正しさにすり替わり、自分の形をなしていた。
これかーー彼女がいっていたのは。。
ああ、俺は間違ってしまったのかーーー俺が俺であることを諦めてしまったんだ。
もしもう一度やり直せるのならば、
ーーーーぴぴぴ!!
その瞬間、おれは目を覚ました。俺は、夢を見ていたようだった。
今日は出社する日だった。バイトで生きてきた俺が、家族のため、初めて勤務する日だった。
しかしーーー最終出社日にした。
俺は、俺を捨てないで生きる。彼女も悲しませない。
「あなたはずっとそうーーずっと、変わらない」
そう言われて離婚した。
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