見出し画像

エルニカル

プロローグ
異能力者の誕生
3000年前
 ある日の、ある街の、ある家に1人の子供が生まれた。その子供は、普通の子供ではなく常人には使えないような力を持っていた。その子供の両親は、その子供の事を異端児と呼び、自分の子供を捨てた。捨てられた子供は、行き場所もなく死んでしまった。その子供が死んでから世界中で、その子供のような能力者が次々と生まれていった。

現代
 ピピピッピピピッと、目覚まし時計の音が鳴っている。「う〜ん。後5分…」そう言うのは何度目だろうか。そう言っても目覚まし時計は、鳴り続ける。「うるさいなぁ」と言って、私は目覚まし時計を止め、時間を見る。現在時刻は8時。「…ハッ、やばっ!学校遅刻する!」私は、慌てながら着替えを済ませる。急いで階段を降り、台所でお弁当を作っている母に向かって「なんで起こしてくれなかったの?!」と大きな声で言う。すると、私より大きな声で「何回も起こしまた!!」と母は言う。テーブルには、いつものお弁当箱が置いてあった。「お弁当ありがとう!行ってきます!」と元気よく言い玄関へ足早に行く。母は「朝御飯は?!」と聞くが食べている時間はない。「いい!」と答え、外へ走り出す。
 学校に着くと友達の京子が、「また遅刻ギリギリじゃん」と笑っていた。「チャイム鳴ってないからセーフだし!」と、反論しながら私は京子の隣の席に座った。「てか今日、異能の授業多くね?だる過ぎ」と京子がぼやく。そう今の世界は、能力者とそうでない者、つまり一般人の2種類の人間がいる。異能は、生まれつき持っている人もいるし後から持つ者もいる。一般人でも修行をすれば能力が使えるのだが、する人はほとんどいない。
 そして、この学校には異能学科というものがあり、能力を使える多くの能力者がいる。私もその学科の1人だ。この異能学科では、近年増え続けている異能を使った犯罪を取り締まる、警察「異能警察」になれるような人間の育成をする学科である。
  「しかもほとんど実技だし、まじ無理なんだけど」と、京子が不貞腐顔で文句を飛ばす。
 「でもしょうがないでしょー」と、私は小さな子供を宥めるように京子に言う。
 「でもさぁー実技めっちゃ疲れるじゃん。しかも休憩は15分だけとか、本当無理なんだけど。もっとこっちの身にもなってほしいわ。まじで」と、異能の実技の愚痴を言ってる京子を尻目に、私は準備を進める。
  「以上で今日の実技の説明を終わる。何か質問がある人いるか?  いないようだな、じゃあこれにてホームルームを終わる。各自着替えて必要なものを持って、第二校庭に集合」先生は、そう言うとさっさと教室から出て行った。私は、自分の愛銃と槍を持って第二校庭に向かった。
  外に出ると後ろから、京子が走ってきた。
  「夏奈ぁ待ってよぉ〜」と、京子が走る。京子は、紫の花の紋様が書いてある刀を持って走っている。普通の人なら、二度見するような光景だが誰もそんなことはしない。ここでは、それが普通なのだ。
  「夏奈早いって」と、息を切らしながら京子が言うが私は浅く返事をする。
   「あ、もうそのスイッチ入ってる感じ?」と、京子が小さく言う。私は無言で頷く。すると、京子も黙る。
  「今回から実際のように戦ってもらって構わない。だが、相手が動けそうになかったらやめるように」と、先生が実技の注意と説明をする。
  私と京子はお互いに向き合い私は、浅く呼吸をして感覚を研ぎ澄ます。そして、開始の合図が出た瞬間。
  向き合った京子と私は、駆け出す。ー お互いの刃を向けたまま ー
  駆け出した直後、2人がいたところから爆音が校庭に鳴り響く。京子がいた場所からは激しい衝撃波が、私がいた場所からは高温の熱波が噴き出す。次の瞬間、私と京子の刃が激しく衝突する。私も京子も、能力を使っているがまだまだこんなものではない。
  私の能力は、「電気」熱と光が合わさった能力だ。そして、京子の能力は「衝撃」風と音が合わさった能力だ。
  普通、能力を持つ人は一つだけしか持たない人が多い中、私と京子のように能力を二つ持って生まれる時がある。能力を二つ持っているのはとても珍しいのだが、他にも能力を三つ持っている人もいる。らしい。
  私と京子の刃は火花を散らしながら激しく撃ち合う。
  〈神音刀 ー神音一閃ー〉(シンネトウ シンネイッセン)京子が、能力と自身の剣術を用いた技を繰り出す。
  私はそれを繊細で小さな動きで躱していく。京子が、もう一度技を繰り出した直後、京子が突っ込んでくる。京子の技は、一撃が重たい。そのくせ、京子自身の剣術は速さを基調としているのか、次の動きが速く先手を予想しずらい。
  私も、能力が電気だから速く動けるが、武器が槍ということもありなかなか動きずらい。
  「そっちが技を使うならこっちも」と、言ったと同時に私は槍の先端を京子に向けたまま高く飛び上がる。
  〈雷砲〉(ライホウ)槍の先端から電気のビームを出す。京子は、それを読んだのか〈雷砲〉を刀で防いでいる。
  それを見た私は、槍を構えて京子に突っ込む。着地と同時に銃を引き抜く。その銃口を京子に向けながら突っ込む。「やめ!もうおしまいだ」そこで先生から止めが入った。
  砂埃が晴れると、私の首には京子の刀が、京子の頭にはわたしの銃が突き付けられていた。
  一瞬の沈黙の後、2人は笑う。
 「夏奈本気すぎまじで」と京子が笑う。「京子だって本気だったじゃん」と私も笑う。
  周りからヒソヒソと話しているのが聞こえる。「もう昼休憩なのにそれまでぶっ通しでやるなんてどんだけ体力あんだよ」「化け物だろ」なんて言葉が聞こえてくる。
  「気にしなくていいよ。どうせみんな弱いから」と、京子が挑発をすると、さっきまでヒソヒソと話していた人達がジッとこっちを睨みつけてきた。
  そんな視線を振り払うように、私は歩みを進める。
 「京子あんなこと言って大丈夫なの?」と、私は京子に聞く。
 「大丈夫大丈夫、問題ないよしかも事実じゃん」と、余裕満点の笑顔で京子は笑う。
  「てか来週、学校内での大会あるよね?」と、京子が聞いてきたので私は「うんあるよ・来週の月曜から金曜まで」と以上に長い予定を伝える。
  「まじかぁ長いなぁーでもあんたとやれるんだから悪くないな」なんて京子は不敵な笑みを浮かべる。
  「でも先輩とか絶対強いじゃん勝てるかな」 なんて、思ってもいない弱音を吐く。
   「大丈夫でしょ」と、京子が励ましてくれる。
   「じゃあ大丈夫か」と、自分自身の弱ってる部分に喝を入れる。
  「おい、そこの2人」男が私たちを呼ぶ。だが、呼ばれる事に気づかず私たちは歩みを進める。
  「おい!お前らだよ!シカトしてんじゃねぇよ!」と、男が大声を上げる。私たちが振り向くと、体格の良い男が仲間を連れて私と京子を睨んでいた。制服を見るに私と同じ異能学科だろう。
  「なに?うるさいんだけど」と京子が少しキレ気味に応える。すると、おい声を掛けてきた男の眉がピクリと動く。
  「なんだその態度まぁいいお前ら2人放課後校舎裏こいや」と、言って男は仲間を連れて行ってしまった。
  「告白かな?」なんて、私がボケると京子は「いや絶対違うでしょ」とすかさずツッコミを入れる。
  放課後、私たちが校舎裏へ行くと先ほど声をかけてきた男とその仲間たちが武装して待っていた。
 「よぉ待ってたぜ」と、怒気を込めた声を発する。
  「おーおーなんだね、急に呼び出して告白かい?」と、京子は挑発する。
  「馬鹿か!違うに決まってんだろ」と男は、吐く。
  「あんま調子乗ってっと殺すぞ」と、さっきとは打って変わって男は、ドスの効いた低い声で脅すように私たちに言う。
  「で、なんで呼んだの?まぁ理由は見たらわかるけどさ」と、京子は言葉を止めて男たちを見る。
  私は、小さくしかし通る声でこう言った。「つまり決闘を申し込むって事?」そう言うと、男はニヤリと笑い頷いた。
  「そうだ!よくわかってんじゃねぇか」そう言い男は腰に下げた剣を抜き、私たちを指して「行け!」と仲間に指示を出した。
  だが、私が動く前に京子が向かってきた男の仲間達を倒してしまった。そして私は、呆気に取られている男へ蹴りを一発喰らわせる。
  男は喚きながら何処かへ行ってしまった。
  「おーい仲間さんは?」と、京子は言うがその声は男には届かなかった。

翌日
  先生から異能学科での校内大会があるという発表を受けた。この大会は学校の能力者の多さを生かした割と大規模な大会となっている。
  大会では、チームを組んで良し単独でも良しと言った比較的自由なルールである。
  私はもちろんのこと京子と組むつもりだが、京子は他の人の誘いを断るので手一杯らしい。
  「夏奈ぁ〜助けてぇ」と、こっちを向いて私に助けを求めて来た。私は京子の肩を抱き寄せ、京子にたかっている人たちに向かってこう言い放った。
  「この子私の彼女なんだよねぇだから私の前で取りあわないでくれる?」と低い声で言った。
  そう言うと京子は、「ちょ、ばかぁ夏奈がそんなことばっか言うから、学校で広まっちゃってるんだけど!?」と講義の声を上げた。
  「えぇ、違うの?」と、私は首を傾げる。「いや違うでしょ」と冷静に答えられてしまった。
  「でも、うちは夏奈と組むからみんなごめんねー」と、京子が言うとみんな離れて行った。
  「で、、、大会のことでしょ?うちらのクラスは元素組だから、シンプル能力の使い方に重点置いて練習しないとね」と京子は、先生のように言った。
この異能学科には、さまざまな「組」がある。
私たちは、主に元素系の能力を使うから元素組、他には、物質を操る物質組、元素の力を機械のエネルギー源として使う機械組、の3つに分かれる。
私と京子は、同じ元素組だ。

それから数日後

「明日から校内大会が始まる。大会前にルールを説明しておくぞ」と、先生からルール説明が行われる。
「校内大会は、バトルロワイヤル形式でやる。1人で参加してもいいし、チームを組んで参加してくれてもいい。この大会は参加は原則全員参加だ。ただし、怪我や体調不良の場合は参加しなくてもいい。だが、途中参加はできないぞ。」と、説明を先生がしている。が、京子は爆睡している。大丈夫なのだろうか?
「あ、あと明日渡すが、大会参加前にはこのリングを首にはめてくれ。」と、先生が銀色の首輪を見せる。
「この首輪は、皆んながこの大会に参加したのを確認できる。それと、皆んなが脱落、つまり誰かに負けてしまった時、もう戦えない動けないって時に、首輪に手を当てて〈オープン ログアウト〉といえばログアウトできる。ただし、ログアウトしたらもう参加できないからな」と先生が得意げに言う。いやあんたが作ったわけじゃないだろ。
「参加する際には、ログアウトする時と同じように、首輪に手を当てて〈オープン ログイン〉と言えばログインできるからな」なんて、説明を聞いてるが、すごいなこの国。
「そうだ、ログインしたらわかると思うが。この大会には、二つのエリアがある。一つは戦闘エリア、もう一つは非戦闘エリアだ。非戦闘エリアでは戦えないから注意だ。以上がこの大会のルールになる。何か質問はあるか?ない人から気をつけて帰るんだぞ」そう言って、先生は教室から出て行った。
「夏奈ぁちょっと練習してから帰ろ?」と、京子が言う。
私は、軽く返事をして京子の元へ行く。

明日から頑張らないとな。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集