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雪夏(檸檬、薫る夏を君と2人)

あらすじ
 吉川夏希は、中高一貫校に通う中学3年生。男子によるイジメがきっかけで、中2のときに転校してきて友達は大して多くないが、親友の冬崎雪菜と楽しくこの学校生活を過ごしていた。
 そんな時、小学校から夏希のことが気になっていた薫は、自分から夏希と連絡先を交換する。
 夏希は交換した初日に薫から、夏祭りのお誘いをされる。薫は小学校から好きだった夏希に夏祭りの日に告白することを決意し、2人で夏祭りに行く。薫と夏希の夏のレモンのような物語

ここから雪夏本編です

 夏。暑い暑すぎる。ここ最近なんでこんな暑いんだよ。夏なんてなくなっちまえ!!そう思っても、この暑さからは逃げられないんだよなぁ。そんな事を考えていると、後ろから「夏希ー!待ってよぉ〜」と元気な声が聞こえてくる。私は後ろを向いて、「雪菜ぁ〜!はやくしろー!遅れるぞぉー!」と声を掛ける。「わかったぁ〜ちょっとまってて!」と雪菜は言い、とてつもない速さでこっちに走って来て私にダイブする。これが毎朝となると割りとキツイ、避けようと思えば避けられるのだが雪菜が顔面から地面にダイブしてしまうので無しとする。
 「おはよ、雪菜」と私が、挨拶すると「おはよ!夏希!」と元気よく返してくれる。雪菜は、私が転校して初めて出来た友達だ。前の学校では、男子共のいじめで転校したのだが、イジメが原因で人が信じれなくなり転校当初も誰とも話さなかった、そんな私を見て雪菜は優しく声を掛けてくれた。そんな雪菜と一緒にいるにつれて、周りの人達とも仲良くなれたので雪菜をには感謝しかない。
 「あっそういえば、昨日の課題やってきた?」と雪菜が聞いてくる。「やってきたけど見せないよ?」と雪菜の解答を見透かして私が言うと、「くっ…バレたか…お願いぃ〜写させてぇ〜帰りになんか奢るからぁ〜」とお願いしてくるが何回も聞いたので、スルーし学校へ向かう。
 教室に入ると、心地よい涼しい空気が私を包む。「はぁ~やっぱエアコン最強だろ」と独り言を言いながら雪菜の方を見る。雪菜は、机が冷たいのかベッタリと机にくっついている。「雪菜ぁ〜課題やるんでしょぉ〜はやくやりなぁ〜」と言うと「無理だね。私は机になったのだ」と、訳のわからんことを言ってくるのでノートの角で雪菜の頭を叩いておく「いっだぁ、わかったわかったよぉやればいいんでしょやりますよーだ」と、不貞腐れるれながらもやり始める。
 しばらくすると、少数だが他の生徒が入ってきた。その中に一人、しょっちゅう私に話しかけてくる人がいるそう今入ってきた人、黒上薫だ。なぜ私に話しかけてくるのかわからないので、雪菜に聞くと雪菜は「薫のやつ夏希のこと好きなんじゃない?」と笑いながら言ってくるがそんなことはないだろう。薫は、この学校でも人気のイケメンで性格も優しいのだとか(イケメンではある)そんな人が私のことを好きだなんて、そしたら学校中の薫狙いの女子に狙撃されちまうじゃないか。私と薫は、小学校から一緒でよく遊んでいたりしていてとても仲がよかった。なので、小学校では良く私と薫は付き合ってるとかなんだか噂されるようになってしまった。それが影響したからなのか、私も薫も二人きりだと少しドギマギした感じでなんか恥ずかしかったなと言うのは覚えている。そんなこんなで、エアコンの効いた教室で雪菜の世話(課題の手伝い)をしていたのだが、少しずつ生徒が集まってきた。
 「雪菜終わったぁ?」と雪菜に聞くが、返事がない。こいつ…まさか寝てやがるのか。雪菜は、幸せそうな顔で寝ている。起こしてやろうと思ったが、あまりにも幸せそうな顔で寝ているので起こさず写真だけ撮っておく。私のスマホは雪菜の写真でいっぱいだ。雪菜は見てて飽きないので、面白いと思って動画や写真を撮っているとすぐにフォルダが雪菜で埋め尽くされてしまうのだ。でも課題が終わらないとやばいので、とりあえず起こすことにする。
 ぞくぞくと、生徒たちが教室に入ってきて少し暑苦しくはあったが予鈴が鳴って朝のホームルームが始まった。「今日はーえーと、あっそうそう5、6限目にプール清掃があります。服装はジャージでプール前に集まってください」と先生が言う。「では、朝のホームルーム終わり!」と、先生が言うと同時に雪菜の3個離れた席に座っているギャル。雪宮結と川崎春花の2人が私達のところにやってきた。
 「プール清掃とかダルくね?マジ化粧落ちるんですけど」と結が言う。それに応じるように春花も「それな〜ガチしんどいんだけど」と、雪菜に向かって言う。雪菜は「でもさぁプール清掃ってめっちゃ涼しくなるよ?やってみ?馬鹿みたいに楽しいから」と、2人の話し方に合わせてギャルっぽい口調で話す。雪菜は相手をよく見ているので、その人にあった話し方などを色々と使い分けているので凄いなぁと、私はちょくちょく思っている。
 そんな雪菜達を見ていると、「あの…すみません少しお時間良いですか?」と薫が話しかけてきた。「なに?時間ならあるけど…」と答えると、「じゃあついてきてもらってもいいですか?」と言ってきたので「別に良いけど…」と戸惑いながらも薫についていった。薫についていくと、あまり人気のない場所で薫は立ち止まった。「あ、…あの!僕と…れ…連絡先交換してくれませんか?!」と、青春恋愛漫画かよと突っ込みたくなるほどの連絡先の聞き方だったが、別に断る理由もなかったので「てか交換してなかったっけ?良いよ良いよ交換してあげる」と言って交換したら凄い嬉しそうな顔で「ありがとうございます!」と言い教室に戻っていった。
 
午後 
 昼休みが終わったので5、6限目のプール清掃の時間となり着替えてプールに向かった。そしてプールを見て一言、「きっっっったね」ほとんどの生徒がシンクロして言った。「この中を掃除するってマジで?」といった声が聞こえるが、私と雪菜は堂々とホースを取り出して水を抜いたプールの中に放った。緑色だったところが元の色に戻っていく、やはり水を抜いたばかりだったか。ある程度取ったら中に入ってブラシで擦る、そんなことをしていると数人が入ってきて同じように掃除をし始めた。きれいになってきたので水で流そうと、手が空いている人に「水で流してもらえる?」と言うと、「きゃあっ」と声を上げた女子がいたので振り返ると水を掛けられている。まさか…こっちに来るのか!?やっぱりくるんかい!「キャッ」冷たい。ほぼ毎年プール清掃ではこの水の掛け合いが必ずと行ってもいいほど起こる。そんなこんなでビッショビショになってしまった。
 家に帰る途中、地域の掲示板に夏祭りのチラシが貼られていた。そっかもうそんな時期かと思っていると、突然電話が。びっくりして急いで取り出すと薫からだった。「もしもし?どしたのきゅうに?」と聞くと、「もしもし?急にごめん。さっきチラシにさ夏祭りのことがのってたから一緒に行けたら行きたいなって……どう?一緒に行かない?」と夏祭りのお誘いの電話だった。「んー………良いよ行ってあげる」と言い電話を切った。私はその場にしゃがみこンだ。小学生の頃から自分のことを気になっている人から夏祭りのお誘いが来たことが嬉しくて仕方がなかったのだ。夏祭りは明後日だが私は、着物は着ない派なので白いワンピースで行こうと思う。 

夏祭り当日
 私は学校の校門前にやってきた。薫はそこで待っているという。校門前につくとばったり薫に会った。「や、…今日もカッコいいね!」と言うと、返しと言わんばかりに「夏希さんも、可愛いですね」と言ってくれた。夏祭りはいろんな屋台が並んでいて全部やろう!と冗談半分で言ったら、薫もそれに乗っかってきて全部やる羽目になってしまった。一通りやり終えた後、流石に疲れたので近くのベンチに座っていた。「あっつぅ〜後疲れた」と言うと、薫は「それなぁ暑すぎんだろ」と口調が砕けていた。「あ、砕けてる、」と私は、言うが本人は気付いていないようで、首を傾げていた。私は笑って「だから口調、口調が砕けてるって言ってるの気づかなかった?」と言うと、薫は、はっとしたように口を押さえそして笑った。
 「少しトイレ行ってくるね」と私は言い、トイレに向かった。トイレから出ると、聞いたことがある声が聞こえた。そしてそれは、私に気づいたように近づいてきた。「あれ、夏希じゃね?ほら、夏希じゃん」私が聞きたくもない声、そう中2の頃私のことをイジメていた男子共の声だ。私はあの時の恐怖で体が動かなかった。「よう夏希ちゃん、元気だったかなぁ?まさかあんな根暗陰キャがこんなとこにいるなんて、びっくりだわ」と、嘲笑うような声。だいっきらいな声が、ワタシの耳元で囁いている。「てかお前良く見たら結構可愛いじゃん、俺の彼女になれよ」と、死んでも嫌な要求をされる。私は精一杯の声を出して「い…嫌、……嫌です」とか細く言った。「は?せっかく俺の彼女にしてやろうってのにそれ断るんだ」と、脅すように言ってくる。すると、「おい、やめなよ」と安心する声が聞こえた。私は、声のした方を向く。そこには薫がいた。「薫!」と薫を呼ぶ。薫は、私の手をつかんで「こいつ僕の彼女なんで手ぇ出さないでもらえますか?」と言うと、手を掴んだままさっきのベンチに戻ってきた。
 「さっきはありがとね。あ…あの…彼女って…どういう…」そう言うと、「ごめん!嫌だったろうけどあれが最適解だと思ったんだ。ごめんね?」と薫は赤面して言う。「別に大丈夫何だけど…ちょっとびっくりしちゃった」と私も赤面して言う。そして2人の間数分間に沈黙が走る。そんな沈黙を割くように夜空に、1つの火の大輪の花が咲く。それが着火剤となったか、薫が立ち上がり手を出しこういった。「僕は小学生の頃から夏希のことが好きでした!僕と付き合ってくれませんか!?」と…。私も立ち上がり「さっき守ってくれたのかっこよかった!こんな私で良ければ」といい手を取った。
 すると誰もいないと思っていた所から歓声の声が上がる。「わぁぁ凄いねぇぇぇ!夏祭りにカップルができちゃった!いやぁ〜めでたいことだよぉ〜!」その声の主は、雪菜だ。「雪菜!?いつからいたの!?」と聞くが答えてくれない。そんな雪菜と私を見て、薫は笑う。 
 そんな3人の上にはたくさんの火の大輪の花が咲き誇る
 その3人がいる場所からは、檸檬のような香りがした。
 


#恋愛小説部門

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