連載小説「オボステルラ」 【第二章】55話「その旅路の向こうには」(2)
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ローズとロベリアを寮に戻し、ナイフはリカルドに尋ねた。
「…で、このストネの街を出て、どこに向かうの?」
「ああ。うん、ミリアの記憶で起こしてもらったこの地図を見て、気付いたことがあるんだけど…」
そう言って、ミリアが改めて書き込みを行った地図を開くリカルド。
「巨大鳥が、水場を周回しながら移動しているらしいということまでは分かっていたんだけど、そのルートを見ると、特定の水脈の水場だけを回っているように見えるんだよね」
「水脈…」
ゴナンがその言葉に反応する。北の村でリカルドが水脈を予測して泉を掘り当てたことを、思い出した。
「そう。北の村で当たった水脈が、他の井戸や古い泉とかとは違う地域から来ている水脈のような気がするって話をしてたの、覚えてる?」
ゴナンは頷く。だからこそ、周りの水は涸れていてもあの泉からは水が出た。
「なぜあの泉にわざわざ巨大鳥が来たんだろうって、不思議に思ったんだよね。それで、ルートをよくよく見てみたら、この水脈の水だけを選んで回っている、ように見える。ただ、地下の奥深くにある水脈は目に見えるものではないし、地形や地質や、川や水源の配置や、あとは水の味の微妙な違いから推測するしかないものだから、確実ではないんだけどね。そもそも地形から行くと…」
「へえ、不思議ね。それで?」
リカルドはたくさん語りたいことがありそうだが、ナイフは「不思議」の一言でまとめてしまった。リカルドは少し不満そうにしながら、話を進める。
「……もしこの巨大鳥が、この水脈の水を何かの順番で飲むために飛び回っているのだとしたら、次は南のツマルタあたりに行くと推測する。もともと旅の道具の準備のために寄ろうと思っていた街だしね」
そう言ってゴナンに微笑む。あのお気に入りの寝袋を作っている街だ。
「ああ、ツマルタ。リカルドの大好物の街ね」
「ツマルタといえば、工業と職人の街ね。少し近くに大きな鉱山もあるわ。どうしてリカルドの大好物なの?」
ミリアが街の概要を思い出しながら、ナイフに尋ねる。流石、自国の街のことはよく把握している。
「あの街ではこの人、とーっても無駄遣いするのよ。便利な道具や真新しい機械がたくさん売ってあるから。職人の一点物にも目がないわよね。工場見学も好きだし。そのために、なぜかツマルタにも研究拠点も作ったくらいなの。ストネに拠点があればこの地域は十分なはずなのに」
「ああ…」
道具がたくさん並んだお店で目を輝かせてはうんちくを語るリカルドの姿が、何となく目に浮かぶようである。リカルドは渋い顔をしてナイフを見る。
「……ともかく、そういうわけで、ツマルタの街に向かおうと思う。徒歩なら野営しながら3日くらいの距離だね。できれば明後日には出発したいかな? 道具のチェックなんかも今日明日でやってしまおう」
そう仕切るリカルドの言葉に、目の前に広げられた地図を見て、ゴナンの瞳は輝いた。
北の村を出たときとは全く違う、心躍るような旅立ち。
しかも、一人ではない、こんなに仲間がいる。
「意外に大所帯になったけど、まあ、これはこれで楽しいかな」
ゴナンのワクワクした表情に気付いて、リカルドはそうゴナンに語りかけた。ゴナンは深く頷く。
「さて…。それで、目下の一番の課題なんだけど…」
そう言って、リカルドはミリアをじっと見た。
「?」
「…服を買いに、行こっか?」
↓次の話
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