ときめきメモリアルGirl's Sideは片想いの結晶

【まえがき】自分が書くときの力になるものってなんだろう? と思うときがあります。

「おとなの寺子屋」2020年12月のテーマは「コラムを書こう」でした。セミナーに足を運んで1年、noteに投稿を始めて半年、書くことについてはまだまだ苦手意識があります。課題は毎月締め切りに追われ、妥協して提出した回もあったりしました。

 自分でも「なんだかな」と思った作品の添削で、五百田さんから「一生懸命さが伝わってきます。なのですが、やはり構成としては稚拙です。ななこさんの魅力はこれで、今回も書き換えるならこうするといいかなと思いました。大手術になりますので(書き換えは)お任せしますが、僕は読んでみたいです」とありました。

 もしかしたら、クリエイターにとっては「あの作品面白かったよ」よりも嬉しい言葉かもしれません。「読んでみたいです」のひと言。誰かが私の作品を楽しみにしてくれていると思ったら「大手術でも、大事故になってしまっても、とにかく書いてみよう」と思いました。

 もし私が今、誰かに「読んでみたいです」と言えるなら……。もちろん、私は編集者なので、読んでみたい作家さんの作品は色々あるのですが、あえて自分の仕事から離れるならば……。そして、妄想編集部として言えるなら……。

 そんな想いで書きました。「待ってます」の、ひと言が届きますように。

【2019年夏 その情報はやってきた】
「2020年は絶対に楽しい年になる。だって、ときメモGSの新作が出るから!」

 と、2019年の私は小躍りをしていた。

 1年に1回くらい、公式HPを眺めては「そろそろ出ないかな~」と期待しているうちに、私は大学を卒業して、社会人になり、ついには三十路を迎えてしまった。氷室先生(1stの担任)、若王子先生(2ndの担任)も公式な年齢設定はなかったはずだけど、もしかして年下? 大迫先生(3rdの担任)は雰囲気が完全に年下っぽい。

「女性の胸キュンが創りたいんです!」と新卒の就活でコナミさんにエントリーして、筆記試験であっさり落ちたのが、もう……7年前。あのとき入社していたら、中堅社員として制作に追われていたのだろうか。

 高校3年間を1週間ずつ刻むという、ゲームシステム的には長くて、集中してやれば1日で終わってしまう片想いが、また始まる。

【男子のいる高校生活は憧れ】

 女子高育ちの私は、クラスの男子と学校行事を過ごしたり、下校したことがない。桃森ミヨシの『ハツカレ』(女子高の女の子が男子校の男の子と付き合う少女漫画)を読んでは「こんなことあったらどーする?!」とキャーキャー言っていた。そして何事もなく家に帰っては「まぁ、そんなことないよな」と眠りにつく日々だった。

 ある日、「ななこは絶対にハマるからやってみて」と、高2のときに友達からプレステ2のソフトを手渡された。パッケージの裏には5人の男の子が描かれている。共学で3年間を過ごし、良い感じになった男の子から卒業式に告白されればゲームクリアな恋愛シュミレーション。男性が女性キャラを狙うのを「ギャルゲー」、女性が男性キャラを狙うのを「乙女ゲー」という。

 父親がゲーム好きだったこともあって、スーパーファミコン、プレイステーションから、任天堂さんとソニーさんにはお世話になっていた。けれども、恋愛シュミレーションのジャンルに手を出したことはない。「え~だって、コンピューターを恋愛対象として見られるわけないじゃん」と思うくらい冷めていた。

 特に誰を狙うわけでもなく始めてみたら、勉強と部活に明け暮れて3年間が終わってしまった。あれ、おかしい、彼とは文化祭とか一緒に回らなかったっけ? クリスマスだって過ごしたよね? というか、絶対に私のこと好きだったじゃん?

 傍らでエンディングを眺めていた父は「いい娘に育ったなぁ」「っていうか、現実でもそうだったりしてな」と大爆笑された。

【ゲームの仕様が高校生のリアルすぎる】

 このゲーム、女の子の片想いの全てが詰まっているのだ。楽しいのに、もどかしくて、付き合えることもあれば、フラれたりもする。

 好感度だけでなく、学力・運動・芸術などパラメーターのボーダーもあって、一定以上にならないと卒業式の告白に至らない。
 しかも、女友達からライバル宣言をされると、狙っている彼の好感度は上がりにくくなるし、狙っている彼以外の男の子を放置すると、爆弾が爆発して、男の子全員の好感度が大幅に下がる。

 つまり、学力が高い彼とお付き合いをするには、自分の学力を上げて、敵対しそうな女友達とは適度に距離をおいて、クラスメイトとは全員仲良くしなくちゃいけない。狙っているキャラとクラスメイトの人間関係に頭を抱えることも度々ある……。

 休みの日だって、デートに行く前には、季節に合わせてコートからキャミソールまで服を揃える。服の組み合わせで「キュート」やら「セクシー」やらも決まるので「どっちが好きなの?」と、攻略キャラの好みを探りながら、上下&アクセサリーを決める。水着、浴衣、クリスマスパーティー用のドレスと初詣用の振袖まであるものだから、お小遣いでは到底かなわずバイトをする。「常に金欠なところまで高校生を再現しなくていいよ」と思ったこともしばしば……。しかも、デートに2回続けて同じ服を着ていこうものなら、男の子からドン引きされる。

 平日も、休日も「普通にしていれば、そのうち彼氏なんてできる」わけじゃない。高校生活の描き方がリアルすぎるのだ。

 男の子たちはみんな、何かしらのコンプレックスがあったり、上手くいかない学園生活に葛藤し、私と一緒に克服をしていく。自分のステータスを上げながら、彼に寄り添っていると、最初は「見た目がタイプじゃない」「性格が合わない」と思っていても、いつの間にか好きになっているのだから、ストーリーも良く練られているのだと思う。

 彼の掛け声に合わせてボタンを押した、二人三脚。海に遊びに行った、夏休み。王子様とお姫様を演じた、文化祭。ふたりでそっと抜け出した、クリスマスパーティー。バレンタインのチョコレートを作るのにもミニゲームがある。実際の高校生活と同じくらい、忘れられない高校生活を私は過ごした。

 そしてどれだけ頑張って、卒業式で両想いになっても、そこでゲームは終わってしまう。なんて切ない片想いだ。

 でも好き。だって、好きになっちゃったんだから。

【前作からもう10年】

 ちょうど2作目が出た頃に1作目をプレイしたので、かれこれ14年間、どハマりしてしまった。3作目が出たのが2010年なので、今や10年も経過し、まるで油断していたころに新作の知らせがあった。

 この10年で、私は社会人になり、彼氏ができたり、別れたりしながら、最近はめっきり社会人が主人公の乙女ゲームしかやらなくなっていたのに。ときメモGSの新作ニュースは初恋の人が夢に出てきたくらい、懐かしくて、甘くて、少し切ない気持ちがした。

 まだかな。いつかな。もうそろそろかな。本当に出るのかな。え、出るよね?

 あっという間に2021年がやってきてしまった。公式HPでは年末に「鋭意制作中」の文字が加わっている。

 2020年、色々あったもんね。もう三十路だけど、楽しみにしてていいかな。何度だって高校生やってもいいかな。

 コナミさん、お待ちしています。

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