中学生の私にズボンを。男性にもスカートを。
前々回に靴のことを書いた。ナチュラルにハイヒール強制すなということだった。私は好きだから履くけど、履きたくない人に強制するなと。
中高生時代の話をしたい。
当時私は中高一貫教育校に通っていて、中学3年生だった。良い学校だったと思う。何が良いって、そりゃ個々の相性は色々あるものの、基本的にすべての先生が生徒のことを思ってくれていたし、生徒がそれを実感できる学校だった。
部活もそうで、当時まだ20代後半から30代に入ろうかという若手の顧問の男性教師は熱血で、時々私たちとぶつかることはあったけれど、常に真剣に生徒と向き合ってくれていた。
そんな部活では特別な時に着るユニフォームがあり、女子はタイトスカートと決まっていた。毎年春に保護者会の役員が採寸してくれてそれを1年間借りるのだ。詳しい説明は省略するが、このタイトスカートが私たち女子にとって大変不便なものだった。
最初の2年間、どう座ったり立ったりすれば下着が見えずかつパフォーマンスを上げられるかを工夫してみた。身近に相談できる女子の先輩がいなかったので(男子ばかりだった)ひとりで2年試した。中学生にとって、部活のユニフォームなんて伝統ある(と思っていた)ものにケチつけるなんて恐ろしかった。高校生の先輩に女子はいたが、高校生なんてもっと恐ろしいし(中1からみると高校生は大人!)、皆普通に不満もなくタイトスカート履いてるように見えたので聞けなかった。
結果、ずっと足を閉じているのはどうやってもパフォーマンスが下がるのでズボンを履けばすべて解決するという結論に至り、顧問の先生に「女子もズボン履いても良いことにしてください」と直談判した。先生はあっさり「そうかーじゃあそうすれば」と言ってくれた。最初は私と仲の良いYちゃんだけだったけど、高校生になって気付いた時にはほぼ女子全員がズボンを履いていた。
卒業して約20年経つ今、部活を見に行くと(時々手伝いをしている)生徒全員がズボンを履いている。あの時「へー、そう。いいんじゃない」と言ってくれる顧問でよかった。
今思えば中高時代はとても尖っていたので、この他にも「部活の伝統」と思われてきたことをことごとく変えてしまい、OB/OGの皆さんから不評を買ったとか買わなかったとか…まあ今となっては先輩方の寂しい気持ちは理解できる。
そして不安なことは、私(たち)が変えてから20年間、変わらずそのままになっているところがとても多いこと。当時自分たちが「敢えて」変えたこと、新しいことをしようとしたことがこの20年で既に「伝統化」してしまい、後輩たちが何も考えず踏襲している…ことに驚くばかりである。
まあそれは置いておいて、とにかく名簿は男女混合あいうえお順だし生徒会だって部長だって女子がやりたきゃやれば、の世界だし、力仕事も男子に任せず自分たちでやる(やらせてもらえる)、とても良い学校だった。
結局、こんな学校ですくすく育った挙句、大学でいきなりものすごく不便と差別を実感してカルチャーショック…ということになったんだけど。
今、ひとつだけ後悔していることがあるとすれば、「女子も男子もズボンとスカート、好きなの選べるようにしてください」というべきだったなと思う。もしかしたらいたかもしれないし、タイトスカート履きたい男子。まあパフォーマンスが落ちるというのが決定的な欠陥だからあの場ではいないだろうけど。
そもそも、中高生女子にタイトスカートって誰が考えたんだろう?ただのスカートですら、寒いわこけたら下着見えるわで学校生活に必要だとは到底思えないのに、あえてのタイトスカート。履いたことない人はわからないかもしれないが、常に小股でしか歩けないというのはとてもストレスがかかるもんである。ちょっと大きめの段差はもう跨げないのだ。
まあ、男性だってハイヒールとスカート、履きたきゃ履けば良いと思う。えーっていう反応する男性結構いるけど、そもそも日本人男性の服装や持ち物はかなりフェミニンとみなされるものが多い。
例えば、紫やピンク、赤といった色であったり、深めのVネック、スキニーパンツ、ピッチリしたスーツを見て「彼はゲイなの?」とこっそり外国人男性から聞かれたことは何度もあったし、最近ではトートバッグ。うちのパートナーもあれはまだ抵抗があって持てないと言っていたが、男性が持っていることにかなりびっくりしている外国人は多いと思う。そのたびに「日本では普通なんだよ」と言い感心されるのだが、内心「オープンなのはファッションだけで、実際はとても男尊女卑のマッチョ思想がまかり通っている変な国です」とため息をついている。